経口補液

執筆者:Michael F. Cellucci, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2020年 7月
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経口補液療法は,静注療法に比べて効果的で安全,便利,かつ安価である。経口補液療法は米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)およびWHOにより推奨されており,軽度から中等度の脱水のある経口摂取が可能な小児では,頻回の嘔吐または基礎疾患(例,急性腹症,腸閉塞)によって不可能でなければ,経口補液療法を用いるべきである。

小児における脱水も参照のこと。)

溶液

経口補水液(ORS)は,以下を含有するものを使用すべきである:

  • 複合炭水化物または2%ブドウ糖

  • 50~90mEq/L(50~90mmol/L)のナトリウム

スポーツドリンク,炭酸飲料,ジュース,および類似の飲み物はこれらの基準を満たさないので用いるべきではない。一般的にこうした飲料はナトリウム含有量が少なすぎ糖質が多すぎるため,ナトリウム-ブドウ糖共輸送を効果的に利用できず,過量の糖質が浸透圧に与える影響により,さらなる水分喪失を引き起こす可能性がある。腸管のナトリウム-ブドウ糖共輸送は,ナトリウム:ブドウ糖比が1:1の場合最適となる。

経口補水液は世界保健機関(WHO)によって推奨されており,米国内では処方箋なしで広く入手可能である。ほとんどの溶液は粉末として販売され,水道水に溶かして用いる。1包のORSを1Lの水に溶解すると,以下を含む溶液(mmol/L)ができる:

  • 標準のWHO-ORS:ナトリウム 90,カリウム 20,塩素 80,クエン酸 10,ブドウ糖 111

  • 容量オスモル濃度を低下させたWHO-ORS:ナトリウム 75,カリウム 20,塩素65,クエン酸 10,ブドウ糖 75

この溶液は,水1Lを食塩 3.5g,クエン酸三ナトリウム 2.9g(または炭酸水素ナトリウム 2.5g),塩化カリウム 1.5g,ブドウ糖 20gに加えることによって,手作りすることもできる。

ORSは,年齢,原因,電解質平衡異常の種類(低ナトリウム血症高ナトリウム血症,isonatremia)を問わず,腎臓が十分に機能している限り,脱水の患児に効果的である。

米国では,混合済みの市販補水液が大半の薬局やスーパーマーケットで容易に購入できる。このような補水液はナトリウム:ブドウ糖比が約1:3(45mEq/L[45mmol/L]のナトリウム対140mmol/Lのブドウ糖)であるものの効果的である。

投与

一般に,軽度の脱水には4時間かけて50mL/kgを,中等度の脱水には100mL/kgを投与する。1回の下痢に対して10mL/kg(最大240mL)を追加する。4時間後に患児を再評価する。脱水の徴候が持続する場合は同量の投与を繰り返す。コレラの患児は,1日に大量の水分を必要とする。

嘔吐は典型的には時間がたてば止まるため,通常,嘔吐があっても経口補水を諦めてはならない(腸閉塞や経口補水のその他の禁忌がある場合を除く)。少量を頻回に投与し,5mLの5分毎の投与から始めて,耐えられれば漸増する。4時間で必要と算出された量を4回に分ける。この4回分をさらに12回の少量に分け,1時間の間に5分毎に与え,必要であれば注射器を用いる。

下痢の患児では,経口摂取がしばしば下痢便を引き起こすため,同量をさらに少量に分けて与えるべきである。

一旦欠乏量が補充されれば,ナトリウム含有量のより少ない経口維持溶液を使用すべきである。脱水が回復し嘔吐がなければすぐに,小児は年齢に応じた食事を摂取すべきである。乳児ならば母乳または人工乳を再開してもよい。

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