発疹は一般的な愁訴の1つで,特に乳児期によくみられる。ほとんどの発疹は重篤ではない。
病因
発疹は感染症(ウイルス性,真菌性,または細菌性),刺激物との接触,アトピー,薬物過敏症,他のアレルギー反応,炎症性疾患,または血管炎によって起こりうる( see table 乳児および小児における発疹の主な原因)。
© Springer Science+Business Media
© Springer Science+Business Media
© Springer Science+Business Media
Image provided by Thomas Habif, MD.
© Springer Science+Business Media
DR P. MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY
SCIENCE PHOTO LIBRARY
© Springer Science+Business Media
Image provided by Thomas Habif, MD.
© Springer Science+Business Media
Image provided by Thomas Habif, MD.
全体として,乳児および幼児の発疹で最も頻度の高いものには以下がある:
おむつ皮膚炎(カンジダ感染症を伴うまたは伴わない)
ウイルス性発疹
ウイルス感染症の多くで発疹が生じる。かなり典型的な外観かつ臨床像(例,水痘,伝染性紅斑,麻疹)のものもあれば非特異的なものもある。皮膚にみられる薬物反応は通常自然に治癒する斑状丘疹状発疹であるが,ときにより重篤な反応も起こる。
発疹のまれであるが重篤な原因には以下のものがある:
評価
病歴
現病歴の聴取では,疾患の経過,特に発疹と他の症状との関係に焦点を置く。
システムレビュー(review of systems)では,消化管症状(IgA血管炎[以前のヘノッホ-シェーンライン紫斑病]または溶血性尿毒症症候群を示唆),関節症状(IgA血管炎またはライム病を示唆),頭痛または神経症状(髄膜炎またはライム病を示唆)などの原因疾患の症状に焦点を置くべきである。
既往歴の聴取では,最近使用したあらゆる薬剤,特に抗菌薬および抗てんかん薬に注意すべきである。アトピーの家族歴に注意する。
身体診察
診察はバイタルサインの評価から始め,特に発熱の有無を調べる。最初の観察では,患児に嗜眠,易刺激性または苦痛の徴候があるか評価する。水疱,小水疱,点状出血,紫斑または蕁麻疹,および粘膜症状の有無などの皮膚病変の特徴に特に注意し,完全な身体診察を行う。髄膜刺激徴候(項部硬直,Kernig徴候およびブルジンスキー徴候)の有無を調べるが,このような徴候は2歳未満ではみられないことが多い。
警戒すべき事項(Red Flag)
以下の所見は特に注意が必要である:
水疱形成または皮膚の剥離
下痢および/または腹痛
発熱およびなだめられない状態または極度の易刺激性
粘膜炎症
点状出血および/または紫斑
呼吸窮迫を伴う蕁麻疹
所見の解釈
全身症状または徴候のない健康そうに見える小児の場合,危険な疾患がある可能性は低い。発疹の外観により,一般に鑑別診断の範囲が狭まる。合併する症状および徴候は,重篤な疾患の患者の同定に有用であり,しばしば診断を示唆する( see table 乳児および小児における発疹の主な原因)。
水疱形成および/または皮膚の剥離はブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群またはスティーブンス-ジョンソン症候群を示唆し,皮膚科的な緊急状態と考えられる。結膜の炎症は,川崎病,麻疹,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群,およびスティーブンス-ジョンソン症候群で生じる場合がある。発熱および点状出血または紫斑を呈する小児は全て,髄膜炎菌血症を慎重に評価しなければならない。蒼白および点状出血を伴う血性下痢では,溶血性尿毒症症候群の可能性を考慮すべきである。粘膜の炎症および発疹の所見があり発熱が5日以上続く場合は川崎病を考慮すべきであり,川崎病のさらなる評価を進めるべきである。
検査
ほとんどの場合,病歴聴取と身体診察で診断に十分な情報が得られる。行う検査は,髄膜炎菌血症に対する血液および髄液のグラム染色および培養や,溶血性尿毒症症候群に対する血算,腎機能検査,および便検査など,生命を脅かす可能性がある病態に焦点を当てて選択する。
治療
発疹の治療は原因に照準を当てて行う(例,カンジダ感染症に対する抗真菌クリーム)。
おむつ皮膚炎では,主におむつの交換回数を増やし,低刺激性の石鹸と水で愛護的に洗うことにより,おむつ部位の清潔と乾燥を保つことが治療の目標である。酸化亜鉛またはビタミンAおよびDを含有する保護用の軟膏がときに有用である。
乳児および小児のそう痒は経口抗ヒスタミン薬によって軽減しうる:
ジフェンヒドラミン:生後6カ月以降は,1.25mg/kgを6時間毎(最高50mgを6時間毎)
ヒドロキシジン:生後6カ月以降は,0.5mg/kgを6時間毎(6歳未満では最高12.5mgを6時間毎;6歳以上では25mgを6時間毎)
セチリジン:生後6~23カ月では,2.5mgを1日1回;2~5歳では,2.5~5mgを1日1回;6歳以上では,5~10mgを1日1回
ロラタジン:2~5歳では,5mgを1日1回;6歳以上では,10mgを1日1回
抗ヒスタミン薬の頻度の高い有害作用としては,口腔乾燥,眠気,めまい,悪心および嘔吐,不穏または気分変動(一部の小児),排尿遅延,霧視,錯乱などがある。
要点
小児でのほとんどの発疹は良性である。
乳児および小児のほとんどの発疹は,病歴および身体診察で診断には十分である。
重篤な疾患による発疹を有する小児には,典型的には,疾患の全身症状がみられる。