外陰がん

執筆者:Pedro T. Ramirez, MD, Houston Methodist Hospital;
Gloria Salvo, MD, MD Anderson Cancer Center
レビュー/改訂 2020年 9月
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外陰がんは通常,皮膚の扁平上皮癌(有棘細胞癌)であり,高齢女性に最も多く発症する。通常は触知可能な病変として現れる。診断は生検による。治療として一般に,切除およびリンパ節郭清またはセンチネルリンパ節マッピングを行う。

外陰がんは米国で4番目に多い婦人科がんであり,女性の生殖器癌の5%を占める。米国において2020年には推定6120例の外陰がんの新規症例が発生し,推定1350人が死亡した。

診断時の平均年齢は約70歳であり,年齢に伴い発生率は増加する。外陰がんの発生率は若年女性で増えてきているようである。

外陰がんの危険因子としては以下のものがある:

病理

外陰がんの約90%は扁平上皮癌である;約5%が黒色腫である。その他は,腺癌と移行上皮癌,腺様嚢胞癌,および腺扁平上皮癌である;全てがバルトリン腺に由来する可能性がある。肉腫,および腺癌を基礎にもつ基底細胞癌も生じる。

外陰がんは以下の形態で進展する:

  • 直接進展(例,尿道,膀胱,腟,会陰,肛門,または直腸へ)

  • 血行性転移

  • 鼠径リンパ節へ

  • 鼠径リンパ節から骨盤および傍大動脈リンパ節へ

症状と徴候

外陰がんの患者のほとんどで触知可能な外陰病変がみられ,本人自らが,または医師が内診時に気づくことが多い。患者には長期にわたるそう痒の病歴があることが多い。進行するまで受診しないことがある。病変に壊死または潰瘍化が起きた場合には,出血や水様性帯下が生じることがある。黒色腫は青みがかった黒い色素沈着または乳頭状にみえることがある。

診断

  • 生検

  • 外科的な進行期診断

外陰がんは,性感染症による陰部潰瘍(軟性下疳),基底細胞癌,外陰パジェット病(蒼白な湿疹様病変),バルトリン腺嚢胞,または尖圭コンジローマに類似した症状を呈することがある。性感染症(STD)のリスクが低い女性に外陰病変が発生したり,病変がSTDに対する治療に反応しない場合,医師は外陰がんを考慮すべきである。

局所麻酔を用いた皮膚パンチ生検が通常診断に有用である。ときに,VINをがんと鑑別するのに広範囲局所切除が必要となる。微妙な病変は,外陰をトルイジンブルーで染色するか,コルポスコピーを使用して明確に観察しうる。

パール&ピットフォール

  • STDのリスクが低い女性に外陰病変が発生したり,病変がSTDに対する治療に反応しない場合には,外陰がんを考慮する。

進行期診断

外陰がんの進行期診断は,腫瘍の大きさと部位,および最初の外科的治療の一部として行われるリンパ節郭清により確認される所属リンパ節への転移に基づく(外陰がんの進行期の表を参照)。

表&コラム

予後

5年生存率は進行期により異なる。リンパ節へ転移するリスクは腫瘍径と浸潤の深さに比例する。黒色腫は転移することが多く,転移は浸潤の深さに最も依存するが,腫瘍径にも関係する。

治療

  • 間質浸潤が1mm未満の場合を除き,広範囲切除およびリンパ節郭清術

  • III期またはIV期の患者には手術,放射線療法,および/または化学療法

National Comprehensive Cancer Network (NCCN): NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Vulvar Cancer[NCCN腫瘍学臨床診療ガイドライン:外陰がん]も参照のこと。)

腫瘍が外陰に限局していて,隣接する会陰組織に進展していない場合は,局所腫瘍に対する根治的な広範(マージン2cm以上)切除の適応となる。間質浸潤が1mmを超える場合はリンパ節郭清を行ってもよいが,間質浸潤が1mm未満の場合には必要ない。広汎外陰切除術は通常,バルトリン腺癌にのみ選択する。

尿道,腟,肛門など隣接する会陰組織に進展している腫瘍には,腫瘍の大きさに関係なく,modified radical vulvectomyが適応となる。

外陰扁平上皮癌の一部の患者では,リンパ節郭清の代替として,センチネルリンパ節生検が適切である。臨床所見から腫瘍が鼠径部に進展していることが示唆される場合,センチネルリンパ節マッピングを考慮すべきでない。センチネルリンパ節マッピングでは,トレーサー(青色色素,テクネチウム99[99Tc],インドシアニングリーン[ICG])を外陰がんの周囲および先進部の前方の皮内に注射する。

片側に偏在する2cm以下の病変には,片側の広範囲局所切除および片側のセンチネルリンパ節郭清が推奨される。正中線近くの病変と2cmを超える大半の病変には,両側のセンチネルリンパ節郭清が必要である。

III期例に対しては,リンパ節郭清に続いて術後外照射療法と化学療法(化学放射線療法)(シスプラチンが望ましいが,フルオロウラシルも可)を行う治療を,広範な根治的切除術の前に施行するのが通常である。代替療法は,さらに根治的な手術または骨盤内除臓術である。

IV期については,治療は骨盤除臓術,放射線療法,および全身化学療法をいくつか組み合わせて行う。

要点

  • 大半の外陰がんは皮膚悪性腫瘍(例,扁平上皮癌,黒色腫)である。

  • そう痒を伴う病変や潰瘍を含む外陰病変がSTDに対する治療に反応しないか,そうした病変がSTDのリスクが低い女性に生じた場合,外陰がんを考慮する。

  • 生検により外陰がんを診断し,手術により進行期診断を行う。

  • 遠隔転移を認めなければ,広範囲局所切除を行うとともに,間質浸潤が1mm未満の場合を除き,リンパ節郭清またはセンチネルリンパ節マッピングを行う。

  • リンパ節転移例または遠隔転移例では,手術,放射線療法,および/または化学療法の組合せにより治療する。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. National Cancer Institute: Vulvar Cancer: This web site provides links to information about causes, prevention, and treatment of vulvar cancer, as well as links to information about screening, statistics, and supportive and palliative care.

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