肩甲難産

執筆者:Julie S. Moldenhauer, MD, Children's Hospital of Philadelphia
Reviewed ByOluwatosin Goje, MD, MSCR, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2024年 1月 | 修正済み 2025年 1月
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肩甲難産は,経腟分娩の分娩第2期(娩出期)において,児頭は娩出しているが,前在肩甲が恥骨結合の後方に嵌入しているか,または後在肩甲の娩出が仙骨岬角によって妨げられているために分娩が進行しない場合に起こる。これは産科的緊急事態であり,胎児の損傷や死亡または母体の損傷につながる可能性がある。

肩甲難産は産科的緊急事態であり,経腟分娩(先進部が頭位の場合)の約0.2~3.0%に起こる(1)。出生前ケアの際に肩甲難産の危険因子に注意すべきであり,リスクが高い患者では,肩甲難産の可能性に備えて準備をしておくべきである。リスクが非常に高い場合は,計画的な帝王切開が適切となりうる。

総論の参考文献

  1. 1.Practice Bulletin No 178: Shoulder Dystocia.Obstetrics & Gynecology 129(5):p e123-e133, 2017.doi: 10.1097/AOG.0000000000002043 

肩甲難産の危険因子

危険因子としては以下のものがある:

新生児の罹病(例,腕神経叢損傷,骨折)および死亡のリスクが上昇する。起こりうる母体合併症としては,分娩後異常出血,会陰裂傷,括約筋損傷,恥骨結合離開,下肢の過屈曲に関連した大腿外側の皮膚神経障害などがある。

胎児骨盤不均衡は,妊婦健診における骨盤の大きさの臨床的推定,超音波検査および遷延分娩から示唆される。

肩甲難産の症状と徴候

肩甲難産の可能性を示す初期徴候は分娩第2期の遷延であり,特に危険因子をもつ胎児においてみられる。

巨大児(4000g超)が疑われ,分娩の進行が遷延している場合は,産科チームは肩甲難産の可能性に備えるべきである。

肩甲難産の診断

肩甲難産は,児頭は娩出するものの,その後母体の会陰部に向かって後退し(turtle sign),児頭を愛護的に下方に牽引しても前在肩甲が娩出しない場合に診断される。

肩甲難産の管理

  • 肩甲難産であることを臨床チームに周知し,必要に応じて産科,小児科,および麻酔科のスタッフを追加で呼ぶ。

  • 妊婦には砕石位の体位をとらせる。

  • 手技(McRoberts法,恥骨上部の圧迫,Wood screw法,Rubin法,後方の肩または腕の娩出)を行う。

  • ときに,胎児の鎖骨を意図的に骨折させる。

  • 他の全ての方法が不成功に終わった場合は,Zavanelli法(児頭を屈曲させて母体の骨盤内に戻し,その後帝王切開)を行う。

分娩第2期が遷延している場合,適切であればオキシトシンにより陣痛を促進することがある。オキシトシンにより分娩が正常の進行に戻り,胎児体重が糖尿病のない女性で5000g未満,または糖尿病の女性で4500g未満であれば,分娩は安全に持続しうる。鉗子・吸引分娩(鉗子または吸引器による)が安全で適切であるかどうか確認するために,患者を評価することもある。しかしながら,大きすぎる胎児を鉗子または吸引器を用いて娩出しようとすると,合併症が生じる可能性がある。

肩甲難産と認識されたら,追加のスタッフを分娩室に呼び,前在肩甲を娩出させるための様々な手技を順に試みる:

  • 骨盤下口を広げるために,妊婦の大腿を過度に屈曲させ(McRoberts法),前在肩甲を回転させて外すために恥骨上に圧を加える。状態を悪化させたり,子宮破裂を引き起こす場合があるため,子宮底の圧迫は避ける

  • 産科医が手を腟後部に挿入し,後在または前在肩甲を押して胎児をいずれか容易な方向に回転させる(Wood screw法またはRubin法)。

  • 産科医が手を挿入し後方の肘を屈曲させ腕と手を胎児の胸に沿って動かし,胎児の後方の腕全体を娩出する。

  • 産科医が後方の腕に手が届かない場合は,後在肩甲の娩出を試みるために腋窩を牽引してもよい(後方の腋窩に指を差し入れる)。

会陰切開は手技を行いやすくするためにいつでも行うことができる。ときに,他の方法が効果的でない場合に,患者が寝返りを打って四つん這いの姿勢(手と膝をついた状態;Gaskin法)になるよう医師が助けることがあるが,これは最後の手段の選択肢と考えられている(1)。

これらの手技により上腕骨または鎖骨骨折のリスクが高まる。ときに肩甲を娩出させるために胎児の鎖骨を肺側と反対の方向へ意図的に骨折させることがある。

いずれの手技も無効な場合,産科医は胎児の頭部を屈曲させ,児頭を腟または子宮へ戻して分娩の主な動きを逆行させる(Zavanelli法);児はその後帝王切開で分娩する。安全かつ迅速な帝王切開が不可能な状況では,symphysiotomy(外科的に恥骨結合の軟骨を切開して骨盤下口を広げる)を考慮してもよい。この手技は,産科瘻孔や尿失禁などの母体の長期的な合併症のリスクが高いため,まれにしか用いられない(2)。

管理に関する参考文献

  1. 1.Lau SL, Sin WTA, Wong L, et al: A critical evaluation of the external and internal maneuvers for resolution of shoulder dystocia. Am J Obstet Gynecol Published online August 17, 2023.doi:10.1016/j.ajog.2023.01.016

  2. 2.Wilson A, Truchanowicz EG, Elmoghazy D, et al: Symphysiotomy for obstructed labour: a systematic review and meta-analysis. BJOG 123(9):1453-1461, 2016.doi:10.1111/1471-0528.14040

要点

  • 巨大児(4000g超)が疑われ,分娩の進行が遷延している場合は,肩甲難産に備える。

  • 肩甲難産が認められた場合は,追加のスタッフを分娩室に呼ぶ。

  • 前在肩甲を娩出させるための様々な手技を順に試みる。

  • それらの手技が無効な場合は,児頭を腟または子宮内に戻し,帝王切開で児を分娩する。

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