乳頭浮腫は頭蓋内圧亢進による視神経乳頭の腫脹である。頭蓋内圧亢進を起こさない原因(例,悪性高血圧,網膜中心静脈閉塞症)による視神経乳頭の腫脹は,乳頭浮腫とはみなされない。初期では視覚症状がないことが多く,あっても数秒間視力が障害される程度である。初期には視覚症状がないことが多いが,間欠的に数秒間視野が暗くなることがある(一過性視力障害)。乳頭浮腫は原因を究明する必要がある。診断は眼底検査に加え,通常脳画像検査およびそれに続いてときに腰椎穿刺などのさらに詳しい検査を行うことにより,原因を特定する。治療は基礎疾患に対して行う。
乳頭浮腫は頭蓋内圧亢進の徴候であり,ほぼ常に両眼性である。原因としては以下のものがある:
特発性頭蓋内圧亢進症(偽脳腫瘍,最も一般的な原因[1]),すなわち腫瘤病変はないにもかかわらず髄液圧が上昇している状態
くも膜癒着
海綿静脈洞または硬膜洞静脈血栓症
総論の参考文献
1.Crum OM, Kilgore KP, Sharma R, et al: Etiology of papilledema in patients in the eye clinic setting.JAMA Netw Open 3(6):e206625, 2020. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.6625
乳頭浮腫の症状と徴候
乳頭浮腫の患者では通常,初期に視力は侵されないが,数秒間の視野の灰色化,ちらつき,または霧視もしくは複視が起こりうる。頭痛または悪心および嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状がみられることがある。
眼底検査により,網膜静脈の怒張および蛇行,視神経乳頭(視神経頭部)の充血および腫脹,ならびに網膜周辺部へは広がらない乳頭周囲の網膜出血が明らかになる。頭蓋内圧亢進を伴わない視神経乳頭浮腫(例,視神経炎または虚血性視神経症によるもの)は乳頭浮腫とはみなされない。
Image provided by James Garrity, MD.
乳頭浮腫の初期には,視力および瞳孔の対光反射は通常正常であり,病状がかなり進んで初めて異常が現れる。視野検査で大きな盲点が見つかることがある。晩期には,視野検査で神経線維束欠損に続いて弓状の視野欠損を伴う周辺視力障害を認めることがある。
乳頭浮腫の診断
臨床的評価
直ちに神経画像検査
視神経乳頭腫脹の程度は,検眼鏡の焦点を乳頭の最隆起部に合わせるために必要な凸レンズ度数と,病変の及んでいない網膜に合わせるために必要な凸レンズ度数とを比較することで定量化できる。腫脹の程度はまた,光干渉断層撮影(OCT)を用いて視神経線維層の厚みを測定することでも定量化できる;OCTを行い乳頭浮腫の程度を定量化することで,変化をモニタリングできる。
視神経炎,虚血性視神経症,低眼圧(眼圧 ≤ 5 mmHg),網膜中心静脈閉塞症,ぶどう膜炎,または偽乳頭浮腫(例,視神経ドルーゼン)など,視神経乳頭腫脹のその他の原因から頭蓋内圧亢進による乳頭浮腫を鑑別するには,徹底した眼科的評価を必要とする。
Bモード超音波検査,OCT,および眼底自発蛍光検査は,視神経ドルーゼンによる偽乳頭浮腫に最適な診断ツールである。臨床的に乳頭浮腫が疑われる場合は,頭蓋内腫瘤などの原因を除外するため,直ちに脳のガドリニウム造影MRIまたは造影CTを行う。硬膜静脈洞血栓症を除外するために,MR静脈造影またはCT静脈造影がしばしば施行される。
腫瘤性病変が除外されれば,腰椎穿刺を実施し,髄液圧の測定と髄液検査を行うべきである。頭蓋内腫瘤病変がある患者に腰椎穿刺を行うと,脳幹ヘルニアを引き起こす可能性がある。MRIで腫瘤が認められず,初圧が上昇しており,頭蓋内圧亢進の他の原因が除外されている場合,診断は特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)であり,これは頭蓋内圧亢進の最も一般的な原因である。
乳頭浮腫の治療
基礎疾患の治療
頭蓋内圧を下降させるため,基礎疾患の緊急治療が適応となる。特発性頭蓋内圧亢進症では,減量およびアセタゾラミドまたはトピラマートなどの薬物療法が第1選択の治療法である。手術は通常,視力を脅かす重度の乳頭浮腫で薬物療法に反応しない場合にのみ施行され,具体的には脳室腹腔シャント術,視神経鞘開窓術,脳静脈洞ステント留置などがある。頭蓋内圧が下降しなければ,続発性視神経萎縮および視力障害が起こる可能性がある。
要点
乳頭浮腫は頭蓋内圧亢進による視神経乳頭の浮腫である。
両側性の視神経乳頭(視神経頭部)の充血および腫脹に加え,典型的には網膜静脈の怒張および蛇行,ならびに網膜周辺部へは広がらない乳頭周囲の網膜出血を認める。
眼底検査での異常は通常,視覚障害に先立って現れる。
直ちに神経画像検査を行い,腫瘤性病変を認めなければ,腰椎穿刺によって髄液圧を測定し,採取した髄液を分析する。
基礎疾患を治療する。



