眼球突出(proptosis)とは眼球が前方へ突き出ることである。exophthalmosも同じ意味であり,この用語は通常, バセドウ病 病因 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる( 様々な病態における甲状腺機能検査の結果の表を参照)。... さらに読む による眼球突出を指すのに用いられる。眼球突出に似て非なる容貌および眼の変化をもたらす疾患には,甲状腺眼症を伴わない 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる( 様々な病態における甲状腺機能検査の結果の表を参照)。... さらに読む , クッシング病 クッシング症候群 クッシング症候群は,血中のコルチゾールまたは関連するコルチコステロイドの慢性高値によって引き起こされる一群の臨床的な異常である。クッシング病は下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰産生に起因するクッシング症候群であり,通常は下垂体腺腫に続発する。典型的な症状および徴候には,満月様顔貌および中心性肥満,紫斑ができやすい,ならびにやせた四肢などがある。診断はコルチコステロイド使用歴または血清コルチゾールの上昇および/または比較的自律的... さらに読む ,および重度の肥満などがある。
眼球突出の病因
成人における最も一般的な原因は バセドウ病 病因 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる( 様々な病態における甲状腺機能検査の結果の表を参照)。... さらに読む (眼球突出の主な原因 眼球突出の主な原因 の表を参照)であり,この疾患は眼窩組織の浮腫およびリンパ球浸潤を引き起こす。
小児で最も一般的な原因は 眼窩蜂窩織炎 眼窩隔膜前蜂窩織炎および眼窩蜂窩織炎 眼窩隔膜前蜂窩織炎(眼窩周囲蜂窩織炎)とは,眼瞼,および眼瞼を取り囲み眼窩隔膜より前方にある皮膚の感染症である。眼窩蜂窩織炎とは,眼窩隔膜より後方の組織の感染症である。いずれも外部の感染巣(例,創傷),鼻腔または歯から波及した感染症,または他の部位の感染症の転移によって起こりうる。症状としては眼瞼痛,変色,腫脹などがあり,眼窩蜂窩織炎では発熱,倦怠感,眼球突出,眼球運動制限,および視覚障害も起こる。診断は病歴聴取,診察,およびCTまたは... さらに読む である。
眼球突出の評価
発症の速さが診断の鍵となることがある。突然発症の片側性眼球突出は,眼窩内出血(手術,球後注射,外傷後に起こりうる),または眼窩もしくは副鼻腔の炎症を示唆する。2~3週間かけての発症は,慢性炎症または眼窩炎性偽腫瘍(非腫瘍性の細胞浸潤および増殖)を示唆する;さらに緩徐な発症は眼窩腫瘍を示唆する。
甲状腺機能亢進症に典型的ではあるが,甲状腺眼症と関係のない眼科検査所見には,眼瞼後退,眼瞼遅滞(eyelid lag),上眼瞼耳側のフレア,凝視などがある。その他の徴候には,眼瞼紅斑および結膜充血などがある。眼球の通常より広い範囲が空気に長時間曝露することにより,角膜乾燥が生じ,感染および潰瘍に至る可能性がある。
警戒すべき事項(Red Flag)
以下の所見は特に注意が必要である:
眼痛または充血
頭痛
視力障害
複視
発熱
拍動性眼球突出
新生児の眼球突出
検査
眼球突出は,眼球突出度測定を用い,眼窩外縁と角膜との距離を測定することにより確定できる;正常値は白人で < 20mm,黒人で < 22mmである。診断を確定し,片側性眼球突出の構造的原因を同定するのに,しばしばCTまたはMRIが有用となる。 バセドウ病 病因 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる( 様々な病態における甲状腺機能検査の結果の表を参照)。... さらに読む が疑われる場合,甲状腺機能検査が適応となる。
眼球突出の治療
重症例では角膜を保護するために潤滑剤が必要となる。潤滑剤では十分でない場合は,眼表面をより良好に覆うことができるようにする手術,または眼球突出を軽減させる手術が必要となりうる。コルチコステロイドの全身投与(例,プレドニゾン1mg/kg経口にて1日1回を1週間,1カ月以上かけて漸減)が甲状腺眼症または眼窩炎性偽腫瘍による浮腫および眼窩うっ血をコントロールする上でしばしば役立つ。病因に応じて他に様々な介入が行われる。バセドウ病による眼球突出は甲状腺疾患の治療による影響を受けないが,時間とともに軽減しうる。腫瘍は外科的に切除しなければならない。海綿静脈洞部の動静脈瘻の症例では,選択的塞栓術,またはまれに結紮が効果的となりうる。
眼球突出の要点
急性の片側性眼球突出は,感染症または血管疾患(例,出血,瘻孔,海綿静脈洞血栓症)を示唆する。
慢性の片側性眼球突出は腫瘍を示唆する。
バセドウ病が疑われる場合,CTまたはMRIおよび甲状腺機能検査を行う。
空気に曝露する角膜に潤滑剤を塗布する。