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中咽頭扁平上皮癌

執筆者:

Bradley A. Schiff

, MD, Montefiore Medical Center, The University Hospital of Albert Einstein College of Medicine

レビュー/改訂 2021年 1月
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中咽頭扁平上皮癌とは,扁桃,舌根および舌後方3分の1,軟口蓋,ならびに咽頭後壁および側壁のがんを指す。中咽頭癌の95%以上を扁平上皮癌が占める。タバコおよびアルコールが主要な危険因子であるが,現在ではヒトパピローマウイルス(HPV)がこれらの腫瘍の大半を引き起こしている。症状としては,咽頭痛,嚥下痛,嚥下困難などがある。治療には放射線,化学療法,またはその両方を用いるが,一次手術が使用される頻度が増え始めている。HPV陽性患者で生存率がはるかに高い。

2020年の米国では,中咽頭癌の新規症例数は17,500例以上であったと推測される。中咽頭癌の発生率は増加しているが,治癒率も改善している。男女比は> 2.7:1である。

HPV感染が病因として増加しており,現在ではHPV16型が中咽頭癌の60%を引き起こしており,患者の若年化が進んでいる(年齢の中央値は57歳で,30歳と55歳で二峰性のピークを示す)。セックスパートナーの数およびオーラルセックスの頻度が重要な危険因子である。HPV陽性患者で中咽頭癌の発生リスクが16倍高い。欧州および北米では,HPV感染が中咽頭癌の原因の70~80%を占める。

大半の頭頸部がんと同様に,HPV非関連中咽頭癌は高齢男性(年齢の中央値は61歳)でより頻度が高い。タバコおよびアルコールは依然として中咽頭癌の重要な危険因子である。1日1.5箱を超えて喫煙する患者はがんリスクが約3倍高く,1日4単位以上飲酒する患者はリスクが約7倍高い【訳注:1単位はエタノール量14g】。飲酒および喫煙をともに多量に行う患者は,中咽頭癌が発生するリスクが30倍高い。

症状と徴候

中咽頭癌の症状は亜部位によってわずかに異なるが,典型的には患者は咽頭痛,嚥下困難,嚥下痛,構音障害,および耳痛を呈する。頸部腫瘤(しばしば嚢胞性)が中咽頭癌患者によくみられる主症状である。中咽頭癌の症状は一般的な上気道感染症のものに類似しているため,患者が専門医に紹介されるまで何カ月もかかる場合が多い。

診断

  • 喉頭鏡検査

  • 手術目的の内視鏡検査および生検

  • 病期分類のための画像検査

原発病変の評価および重複病変の検索のために,全ての患者に対して治療開始前に喉頭直達鏡検査および生検を行うべきである。癌腫と確定診断された患者には一般的には頸部造影CTを行い,大半の医師は頸部および胸部のPETも行う。

HPV DNA陽性(ポリメラーゼ連鎖反応法で判定)であればHPVが診断される。HPVとの関連を判定するための代替法として,p16(ほとんどのHPV陽性のがんに存在する細胞内タンパク質であるが,HPV陰性のがんでも存在することがわずかにある)の免疫組織化学染色が一般的に用いられる。

HPV関連中咽頭癌の病期分類基準は,リンパ節転移の頻度が高いことと,HPV陰性腫瘍と比較して予後が良好であることに対応している。(HPV関連中咽頭癌の病理学的病期分類 HPV関連中咽頭癌*の病理学的病期分類 HPV関連中咽頭癌*の病理学的病期分類 および HPV非関連中咽頭癌の病理学的病期分類 HPV非関連中咽頭癌*の病理学的病期分類 HPV非関連中咽頭癌*の病理学的病期分類 の表を参照のこと。)

予後

中咽頭癌患者全体での5年生存率は約60%である。しかし,予後は原因により異なる。HPV陽性患者の5年生存率は75%を超えるが(3年生存率はほぼ90%),HPV陰性患者の5年生存率は50%未満である。HPV陽性のがんの方が生存率が高い理由は,腫瘍の生物学的特徴が良好であり,患者集団がより若年で健康であることにある。p16の高発現は,HPV陽性およびHPV陰性の中咽頭癌の予後を改善するようである。

治療

  • 手術,経口レーザー手術(transoral laser microsurgery)が増加している

  • 放射線療法,単独または化学療法を併用

中咽頭癌の一次治療として,手術が用いられることが増加しつつある。扁桃および舌根の腫瘍を内視鏡的に切除し,開放手術の合併症を回避するために,経口レーザー手術(TLM)が用いられることが増加しつつある。経口的ロボット支援手術(transoral robotic surgery:TORS)が,選択された中咽頭病変に対してますます一般的になっている治療法である。TORSにおいては,複数の調節可能なアームを備えた手術用ロボットを,外科医がコンソールで操作する。関節がついたロボットのアームおよび内視鏡カメラを患者の口を介して挿入する(口はリトラクターで開口状態にする)。ロボットによる手技は,開放手術に比べ構造がよく見え,手術合併症を起こすことが少ない。しかし,TORS使用の適応はまだ十分に定義されていない。TORSをより進行した腫瘍を有する患者に用いる場合,術後の放射線療法または化学放射線療法がしばしば施行される。

放射線療法は,ときに化学療法を併用し(化学放射線療法),一次治療として,または術後に用いることができる。従来,放射線が早期がんに用いられ,化学放射線療法が進行がんに用いられてきた。周辺組織を温存し長期の有害作用を軽減する方法として,強度変調放射線療法(IMRT)がますます使用されている。

中咽頭はリンパ管が豊富であるため,頸部リンパ節転移の頻度が高く,全ての中咽頭癌患者で考慮する必要がある。頸部リンパ節転移が,頸部への放射線照射または化学放射線療法後に消失しない場合,治療後の頸部郭清術が必要となる。

中咽頭癌の治療法は,HPV感染の有無にかかわらず同じである。より害の少ない治療によって疾患の管理に成功するかどうかを確認するべく,HPV関連腫瘍の低侵襲治療が現在研究されている。

要点

  • 大半の中咽頭癌症例はヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因である。

  • 中咽頭癌の症状は腫瘍の位置によって異なり,頸部腫瘤がよくみられる所見である。

  • 中咽頭癌の診断は,喉頭鏡検査,手術目的の内視鏡検査,および病期診断のための画像検査により行う。

  • 中咽頭癌の治療は,可能であれば開放手術の代替として,経口的レーザー手術(transoral laser microsurgery)または経口的ロボット支援手術(transoral robotic surgery)による。

  • 一次治療として,または術後に放射線療法を施行し,ときに進行例に対して化学療法を併用する。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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