外耳の閉塞

(耳内異物)

執筆者:Bradley W. Kesser, MD, University of Virginia School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 9月
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    耳垢(耳あか),異物,虫などによって外耳道が塞がれることがある。その結果,そう痒,疼痛,および一時的な伝音難聴が起こりうる。閉塞の原因の大半は,耳鏡検査ですぐに明らかになる。治療は慎重な用手除去による。

    外耳道からの耳垢または異物の除去を試みる前後に,必要な設備が容易に利用できる場合は,聴覚評価の実施を考慮すべきである。閉塞物の除去後に難聴が(健側耳と比較して)改善しない場合は,異物(または以前にそれを除去しようとした試み)が中耳または内耳を損傷したことを示唆している可能性がある。閉塞物の除去後に聴力が悪化した場合は,除去のプロセスにより損傷が生じたことを示している可能性がある。しかし,聴覚を正式に評価できない場合でも,一般的かつ容易に除去できる閉塞物の除去を遅らせる必要はない。院内での音叉検査でも聴覚の状態を記録できる。

    耳垢

    患者が外耳道を綿棒で掃除する際に,耳垢を外耳道のさらに奥に押し込み,それが蓄積して閉塞または栓塞が生じることがある。直接除去の前に,耳垢水(過酸化水素,過酸化尿素,グリセリン,トリエタノールアミン,ジオクチルソジウムスルホサクシネート液,または鉱油)を用いて非常に硬い耳垢を柔らかくする場合がある。しかしながら,これらの溶解剤を長期にわたって使用すると,外耳道の皮膚の刺激またはアレルギー反応を招くことがある。

    耳垢は,尖っていないキューレットもしくはループまたは小型の直角の異物鉤を用いて外耳道の外へ出すか,吸引管(例,Baron,5Fr)を用いて除去できる。適切な照明が必須である。これらの方法は,特に経験を積んだ医師が行えば,洗浄よりも速やか,かつ安全である。洗浄は救急外来またはプライマリケアでしばしば行われるが,合併症を避けるために注意深く行うべきである。洗浄は,ジオクチルソジウムスルホサクシネート液などの耳垢水と併用することもある。既知の鼓膜穿孔がある患者または感染症が疑われる患者では洗浄は禁忌である。水が鼓膜穿孔部から中耳に入ることにより,慢性中耳炎が増悪し,急性中耳炎が引き起こされる可能性がある。

    (耳垢の管理に関するAmerican Academy of Head and Neck Surgery Practice Guidelinesも参照のこと。)

    耳内の異物

    異物は一般的であり,特に小児ではよくみられる。小児は外耳道に物,特にビーズ,消しゴム,および豆粒などを入れる。炎症反応が起こり,疼痛,そう痒,感染症,悪臭を伴う膿性耳漏が生じるまで,異物に気づかないことがある。

    一般的に,容易につまんで除去できるように見える異物(例,紙,昆虫の羽)は,ほとんどの医師がワニ口鉗子で除去できる。しかし,鉗子では丸く滑らかな異物(例,ビーズ,豆)をより外耳道の奥に押し込む傾向がある。そうした異物がある患者は耳鼻咽喉科医に紹介すべきである。丸く滑らかな異物を除去する場合,尖っていない小型の異物鉤を異物より奥に入れてかき出すのが最もよく,これは手術用顕微鏡によるガイド下で専門医が行うべきである。顕微鏡なしでは,異物が峡部(外耳道の骨部と軟骨部の結合部)またはそれより内側にある場合,外耳道の傷つきやすい皮膚,鼓膜,または耳小骨連鎖を損傷することなく除去することは困難である。鎮静が必要になる場合もある非協力的な患児や,除去の試みが不成功に終わった場合には,耳鼻咽喉科への紹介が適応となる。

    パール&ピットフォール

    • 耳洗浄は異物の除去には推奨されない;吸湿性の異物(例,豆またはその他の植物性の物体)は水を加えると膨張し,除去が困難になる。

    小児がじっとしていられない場合,または除去が困難で,鼓膜や耳小骨を損傷する恐れがある場合には,全身麻酔または深鎮静が必要になることがある。さらに,異物と思われる物の処理により出血した場合には,それ以上の除去の試みを中止し,直ちに耳鼻咽喉科医へのコンサルテーションを行うべきである。出血は,外耳道の皮膚に裂傷があることや,異物が実際には中耳のポリープであることを示唆している可能性がある。

    が外耳道に入ると,その虫が生きている間は非常に厄介である。リドカインビスカス(または,鼓膜が無傷であればアルコール)を外耳道に満たして虫を殺し,これにより患者がすぐに楽になるとともに,動かなくなった虫を鉗子で翅または脚をつかんで除去できる。

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