耳帯状疱疹は,第8脳神経の神経節および第7脳神経(顔面神経)の膝神経節を侵す帯状疱疹のまれな臨床像である。
帯状疱疹は,水痘帯状疱疹ウイルス感染症が再活性化したものである。再活性化の危険因子としては,がん,化学療法,放射線療法,およびHIV感染に起因する二次的な免疫不全などがある。典型的には,ウイルスが後根神経節に潜伏し,再活性化すると,皮膚分節に沿った痛みを伴う皮膚病変として現れる。しかし,まれにウイルスが膝神経節に潜伏し,再活性化して第7および第8脳神経の症状を引き起こすことがある。
耳帯状疱疹の症状と徴候
耳帯状疱疹の診断
臨床的評価
通常,耳帯状疱疹の診断は臨床的に行う。ウイルス性の病因について疑問がある場合は,小水疱から擦過検体を採取して,直接蛍光抗体法またはウイルス培養を行い,また他の診断を除外するためにMRIを施行することがある。
耳帯状疱疹の治療
抗ウイルス薬およびコルチコステロイド
完全顔面神経麻痺に対する顔面神経管の外科的減圧
コルチコステロイド,抗ウイルス薬,顔面神経減荷術が耳帯状疱疹に有効であるとする信頼できるエビデンスはないが,有用性が期待できるのはこれらの治療のみである。コルチコステロイドを使用する場合,プレドニゾン60mg,経口にて1日1回,4日間投与で開始した後,翌2週間は投与量を漸減する。アシクロビル800mg,経口にて1日5回投与,またはバラシクロビル1g,経口にて1日2回,10日間投与が,臨床経過を短縮することがあり,易感染性患者に対してルーチンに処方される。
回転性めまいは,ジアゼパム2~5mg,経口にて4~6時間毎投与により,効果的に抑制される。痛みには経口オピオイドが必要なことがある。帯状疱疹後神経痛はアミトリプチリンで治療できる。
顔面神経麻痺が完全な(目に見える顔面の運動が全くない)場合には,顔面神経管の外科的減圧が適応となることがあるが,効果を得るためには顔面神経麻痺の発症から2週間以内に行う必要がある。しかしながら,術前に誘発筋電図検査を行い,90%を超える低下が示されるべきである。