眼振

執筆者:Lawrence R. Lustig, MD, Columbia University Medical Center and New York Presbyterian Hospital
レビュー/改訂 2020年 4月
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    眼振は眼球の律動的な動きであり,様々な原因で起こりうる。

    前庭疾患では,前庭系と動眼神経核が相互に連絡しているため,眼振を来すことがある。前庭性眼振の存在は前庭疾患の同定に有用であり,ときに中枢性めまいと末梢性めまいを鑑別できる。前庭性眼振には,前庭入力によって引き起こされる緩徐相と,元に戻る急速相(逆方向への動きを引き起こす)がある。眼振の方向は急速相の方向で定義されるが,これは急速相の方が視認しやすいためである。眼振には回旋性,垂直性,水平性があり,また,自発的に起こるもの,注視により起こるもの,頭部の動きにより起こるものがある。

    眼振に対する最初の視診は,患者を仰臥位にし,注視の焦点を合わせずに行う(注視の固定を防止するために,+30ジオプトリーのレンズまたはフレンツェル眼鏡を使用できる)。次に,患者の体をゆっくりと回転させて左側臥位とし,さらに回転させて右側臥位とする。眼振の方向および持続時間を観察する。眼振が検出されなければ,Dix-Hallpike法(またはBarany法)を行う。この手技では,患者をストレッチャー上に座らせ,体幹を倒して仰臥位になったときにストレッチャーの端から頭が出る位置で体幹を直立させる。患者の体幹を支えながら速やかに水平まで倒し,頭を後ろに伸ばして水平線より45度下を向くようにして,その後左側に45度回転させる。°°眼振の方向および持続時間と回転性めまいの発生を観察する。患者を座位に戻し,同じ操作を右方向への回転で繰り返す。眼振を引き起こす姿勢または操作があれば,それを繰り返して疲労現象が起こるかどうか確認すべきである。

    末梢神経系疾患に続発する眼振には3~10秒の潜時があり,急速に疲労するが,これに対して中枢神経系に続発する眼振は潜時がなく,疲労しない。誘発眼振中は,ある物体に焦点を合わせるよう患者に指示する。末梢前庭障害による眼振は固視により抑制される。フレンツェル眼鏡は固視を妨げるため,固視を評価する際には外さなければならない。

    前庭系に障害がなければ,外耳道の温度刺激検査により眼振が誘発される。眼振が誘発されない場合や,両側で持続時間に20~25%を超える差がある場合には,反応が弱い側の病変が示唆される。温度反応の定量は,正式な(コンピュータ式)電気眼振検査により行うのが最善である。

    末梢刺激に対する前庭系の反応能力はベッドサイドで評価できる。鼓膜穿孔または慢性感染症が判明している耳には注水しないように注意すべきである。患者を仰臥位にし,頭部を30°挙上して,それぞれの耳に氷水を順次注入する。交互に温水(40~44℃)を使用し,温度が高すぎて熱傷を引き起こさないように注意する。冷水は対側への眼振を引き起こし,温水は同側への眼振を引き起こす。覚え方はCOWS(Cold to the Opposite and Warm to the Same)である。鼓膜穿孔の患者では,水の代わりに温風および冷風を用いてもよい。

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