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色素沈着

執筆者:

Shinjita Das

, MD, Harvard Medical School

レビュー/改訂 2020年 12月
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色素沈着の原因は数多くあり,病変は限局性の場合と,びまん性の場合がある。大半の症例は,メラニンの産生および沈着の増加による。

限局性の色素沈着は,本質的に炎症後に生じるものが最も多く,損傷(例, 切創 裂創 裂創は軟部組織に生じた裂け目のことである。 裂創の治療 迅速な治癒を可能にする 感染リスクを最小にする 美容面で最適な結果を得る さらに読む および 熱傷 熱傷 熱傷とは,熱,放射線,化学物質,または電気の接触によって生じる,皮膚またはその他の組織の損傷である。熱傷は,深度(浅達性[superficial]および深達性[deep]部分層熱傷[partial-thickness]と全層熱傷[full-thickness])および総体表面積に占める割合に基づいて分類される。合併症および関連する問題には... さらに読む 熱傷 )やその他の原因による炎症(例, ざ瘡 尋常性ざ瘡 尋常性ざ瘡は,毛包脂腺系(毛包とそれに付属する皮脂腺)の閉塞および炎症の結果として,面皰,丘疹,膿疱,結節,嚢腫などが形成される病態である。ざ瘡は顔面および体幹上部に生じる。青年期に最も多くみられる。診断は診察による。治療には重症度に応じて,皮脂産生,面皰形成,炎症,および細菌増殖を抑制すると同時に角化を正常化させることを目的とした,多岐... さらに読む 尋常性ざ瘡 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,レイノー症候群,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を必要とする。 全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。... さらに読む 全身性エリテマトーデス(SLE) )に続いて発生する。限局的な線状の色素沈着は,植物性光皮膚炎が原因であることが多く,これは紫外線と植物(例,ライム,パセリ,セロリ― Professional.see page 化学物質による光線過敏症 化学物質による光線過敏症 化学物質による光線過敏症 )のソラレン類(特にフロクマリン類)の組合せにより生じる光毒性反応である。限局性の色素沈着は,腫瘍形成の過程(例, 黒子 黒子 色素沈着の原因は数多くあり,病変は限局性の場合と,びまん性の場合がある。大半の症例は,メラニンの産生および沈着の増加による。 ( 色素異常症の概要も参照のこと。) 限局性の色素沈着は,本質的に炎症後に生じるものが最も多く,損傷(例, 切創および 熱傷)やその他の原因による炎症(例, ざ瘡, 全身性エリテマトーデス)に続いて発生する。限局的な線状の色素沈着は,植物性光皮膚炎が原因であることが多く,これは紫外線と植物(例,ライム,パセリ,セ... さらに読む 黒子 黒色腫 黒色腫 悪性黒色腫は,色素のある部位(例,皮膚,粘膜,眼,中枢神経系)のメラノサイトから発生する。転移は真皮浸潤の深さと相関する。進展した場合の予後は不良である。診断は生検による。手術可能な腫瘍には広範な外科的切除を行うのが原則である。転移例には全身療法が必要であるが,治癒は困難である。 ( 皮膚悪性腫瘍の概要も参照のこと。) 2020年には,米国で約100,350例の黒色腫症例が新たに発生し,約6850人が死亡していると推定される... さらに読む 黒色腫 ), 肝斑 肝斑 色素沈着の原因は数多くあり,病変は限局性の場合と,びまん性の場合がある。大半の症例は,メラニンの産生および沈着の増加による。 ( 色素異常症の概要も参照のこと。) 限局性の色素沈着は,本質的に炎症後に生じるものが最も多く,損傷(例, 切創および 熱傷)やその他の原因による炎症(例, ざ瘡, 全身性エリテマトーデス)に続いて発生する。限局的な線状の色素沈着は,植物性光皮膚炎が原因であることが多く,これは紫外線と植物(例,ライム,パセリ,セ... さらに読む 肝斑 ,そばかす,またはカフェオレ 病変の種類(一次的形態) 病変の種類(一次的形態) から生じることがある。黒色表皮腫では,限局性の色素沈着とビロード状の局面が腋窩および後頸部に好発する。

びまん性の色素沈着 薬剤性色素沈着 色素沈着の原因は数多くあり,病変は限局性の場合と,びまん性の場合がある。大半の症例は,メラニンの産生および沈着の増加による。 ( 色素異常症の概要も参照のこと。) 限局性の色素沈着は,本質的に炎症後に生じるものが最も多く,損傷(例, 切創および 熱傷)やその他の原因による炎症(例, ざ瘡, 全身性エリテマトーデス)に続いて発生する。限局的な線状の色素沈着は,植物性光皮膚炎が原因であることが多く,これは紫外線と植物(例,ライム,パセリ,セ... さらに読む 薬剤性色素沈着 は,薬物によって生じることがあるほか,全身性の原因や腫瘍性の原因(特に全身転移を来した黒色腫および肺癌)もある。びまん性の色素沈着の原因として薬剤を除外した後,最も頻度の高い全身的原因に対する検査を行うべきである。具体的には, アジソン病 アジソン病 アジソン病は潜行性で通常は進行性の副腎皮質の機能低下である。低血圧,色素沈着など種々の症状を引き起こし,心血管虚脱を伴う副腎クリーゼにつながる恐れがある。診断は臨床的に行われ,血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)高値および血漿コルチゾール低値の所見によってなされる。治療は原因に応じて異なるが,一般にはヒドロコルチゾンや,ときに他のホルモンを用いる。 ( 副腎機能の概要も参照のこと。)... さらに読む アジソン病 ヘモクロマトーシス 遺伝性ヘモクロマトーシス 遺伝性ヘモクロマトーシスは,過剰な鉄(Fe)蓄積を特徴とする遺伝性疾患で,組織障害を引き起こす。所見としては,全身症状,肝疾患,心筋症,糖尿病,勃起障害,および関節障害がみられることがある。診断は,血清フェリチン,鉄,およびトランスフェリン飽和度の高値により行い,遺伝子検査により確定する。連続的な瀉血による治療が一般的である。 ( 鉄過剰症の概要も参照のこと。) 遺伝性ヘモクロマトーシスには,変異した遺伝子に応じて,以下に示す1~4型の... さらに読む 遺伝性ヘモクロマトーシス 原発性胆汁性胆管炎 原発性胆汁性胆管炎( PBC ) 原発性胆汁性胆管炎(PBC;以前は原発性胆汁性肝硬変として知られていた)は,肝内胆管の進行性の破壊を特徴とし,胆汁うっ滞, 肝硬変,肝不全に至る自己免疫性肝疾患である。初診時には通常は無症状であるが,疲労感がある場合や胆汁うっ滞(例,そう痒,脂肪便)または肝硬変(例, 門脈圧亢進症,腹水)の症状がみられる場合もある。臨床検査では,胆汁うっ滞,IgMの上昇,および特徴的所見として血清中に抗ミトコンドリア抗体が認められる。診断および進行度判... さらに読む などがある。皮膚所見では診断に至らないため,皮膚生検は不要であるか,役に立たない。基礎にあるがんの検索は,システムレビュー(review of systems)に基づくべきである。

肝斑

肝斑は,顔面(通常は前額部,こめかみ,頬,上白唇部,鼻)にほぼ対称性に生じる境界明瞭な暗褐色の色素沈着斑で構成される。主として妊娠した女性(妊娠性肝斑,mask of pregnancyとも呼ばれる)と 経口避妊薬 経口避妊薬 経口避妊薬(OC)は卵巣ホルモンに類似する。摂取すると,視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌が抑制され,これにより排卵を促進する下垂体ホルモンの分泌が抑制される。OCはまた子宮内膜に作用し,頸管粘液が粘稠になるため,精子が通過しにくくなる。継続的に正しく使用すれば,OCは効果的な避妊の方法である。 OCは女性の生涯を通じて閉経までの間いつでも始めることができる。... さらに読む を服用している女性にみられる。10%の症例は,妊婦以外の女性と皮膚の色が濃い男性に生じる。肝斑は皮膚の色の濃い人々の方が有病率が高く,経過が長期化する。

肝斑のリスクは日光曝露の増加により高まるため,その機序には機能が亢進したメラノサイトによるメラニンの過剰産生が関与していると考えられる。日光曝露以外の増悪因子として,以下のものがある:

  • 自己免疫性甲状腺疾患

  • 光感作性薬剤

女性では,肝斑は分娩後またはホルモン製剤の使用を中止した後に,完全ではないがゆっくりと色調が薄くなる。男性では,肝斑が薄くなることはまれである。

肝斑の管理は厳格な 紫外線防御 予防 日光に対する皮膚の反応としては,慢性の変化(例, 光老化, 日光角化症)と急性の変化(例, 光線過敏症, サンバーン)がある。 太陽は幅広い波長の電磁放射線を放出している。日光が皮膚に及ぼす影響の大半は紫外線によるものであるが,紫外線はUVA(320~400nm),UVB(280~320nm),UVC(100~280nm)の3つの波長帯に... さらに読む が中心となる。患者は紫外線防御指数(SPF)30以上のサンスクリーン剤を使用し,防護用の衣服および帽子を着用し,日光の直射曝露を避けるべきである。治療中および治療後は,厳格な紫外線防御を継続する必要がある。

その他の治療法は,色素沈着が表皮と真皮のどちらで生じているかによって異なり,表皮の色素沈着は ウッド灯 ウッド灯 診断検査は,病歴や身体診察のみで皮膚病変または皮膚疾患の原因が明らかでない場合に適応となる。具体的には以下のものがある: パッチテスト 生検 擦過 ウッド灯による診察 さらに読む ウッド灯 (365nm)で一段と明瞭になるが,生検で診断することもできる。表皮性の色素沈着のみが治療に反応する。肝斑に対する大半の外用療法は,単独で行うのではなく,複数を併用する。

3剤併用外用療法は,しばしば効果を示す第1選択の治療法であり,以下の組合せで構成される:

ハイドロキノンは,酵素によるチロシンから3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(ドパ)への酸化を遮断し,メラノサイトの代謝プロセスを阻害することにより,皮膚の色素脱失を引き起こす。ハイドロキノンは刺激感やアレルギー反応を生じることがあるため,顔面に使用する際は,事前に一側の耳の裏側または前腕の小さな領域で1週間試用すべきである。トレチノインは角化細胞の代謝回転を促進し,表皮色素を含有する皮膚を剥脱させることができる。コルチコステロイドはメラニンの合成および分泌を遮断するのに役立つ。3剤併用外用療法との併用で検討されている有望な技術として,QスイッチNd:YAG(1064nm)レーザーと非剥離フラクショナルリサーフェイシング(nonablative fractional resurfacing)の2つがある。

3剤併用外用療法が利用できない場合は,一度に8週間を限度として3~4%ハイドロキノンを1日2回塗布する治療を考慮してもよい(長期継続使用は,理論的に外因性組織黒変症のリスクを増加させる可能性があり,これは永続的な色素沈着の状態である);2%ハイドロキノンが維持療法として有用である。

アゼライン酸15~20%クリームは,ハイドロキノンおよび/またはトレチノインの代わりに,またはこれらと併用で使用することができる。アゼライン酸は,メラニン産生を減少させるチロシナーゼ阻害薬である(妊娠中に使用しても安全であると考えられている)。さらに,チロシンからメラニンへの変換を遮断するキレート剤であるコウジ酸の外用剤が使用されることが増えてきている。

漂白剤の外用に反応しない重度の肝斑患者に対する第2選択の治療選択肢として,グリコール酸または30~50%トリクロロ酢酸を用いたケミカルピーリングがある。レーザー治療も用いられているが,標準治療ではない。

肝斑に関する参考文献

黒子

黒子(lentigo,複数形はlentigines)は,平坦で黄褐色から褐色の卵円形の斑である。一般的には慢性的な日光曝露によって生じ(日光黒子;ときに「liver spot」と呼ばれるが肝機能障害とは無関係),顔面および手背に好発する。典型的には中年期に初めて出現し,加齢とともに数が増えていく。黒子から黒色腫への進行については確立されていないが,黒子は 黒色腫 黒色腫 悪性黒色腫は,色素のある部位(例,皮膚,粘膜,眼,中枢神経系)のメラノサイトから発生する。転移は真皮浸潤の深さと相関する。進展した場合の予後は不良である。診断は生検による。手術可能な腫瘍には広範な外科的切除を行うのが原則である。転移例には全身療法が必要であるが,治癒は困難である。 ( 皮膚悪性腫瘍の概要も参照のこと。) 2020年には,米国で約100,350例の黒色腫症例が新たに発生し,約6850人が死亡していると推定される... さらに読む 黒色腫 の独立した危険因子である。

黒子が整容的に問題となる場合は,凍結療法またはレーザーにより治療する;ハイドロキノンは効果的ではない。

日光黒子以外の黒子は,ときに ポイツ-イェガース症候群 ポイツ-イェガース症候群 ポイツ-イェガース症候群は,過誤腫性ポリープが胃,小腸,および結腸に多発する常染色体優性遺伝疾患であり,特徴的な色素性皮膚病変を伴う。 大半(66~94%)の症例はがん抑制遺伝子STK11/LKB1(セリン/トレオニンキナーゼ11)の生殖細胞系列変異が原因のようである。患者は消化管および消化管以外での発がんリスクが有意に高い。消化器癌としては,... さらに読む ポイツ-イェガース症候群 (口唇に多数の黒子が生じる),汎発性黒子症候群(またはLEOPARD症候群,これは多発性黒子[multiple Lentigines],心電図伝導異常[Electrocardiogram conduction abnormalities],眼間開離[Ocular hypertelorism],肺動脈弁狭窄[Pulmonic stenosis],性器異常[Abnormal genitals],発育遅滞[Retardation of growth],感音難聴[sensorineural Deafness]の頭文字から命名された疾患名である),色素性乾皮症などの全身性疾患に合併する。

薬剤性色素沈着

変化は通常びまん性に生じるが,ときに薬剤に特有の分布または色調を示すことがある( Professional.see table 薬剤および化学物質の色素沈着作用 薬剤および化学物質の色素沈着作用 薬剤および化学物質の色素沈着作用 )。その機序としては以下のものがある:

  • 表皮内でのメラニンの増加(褐色が強くなる傾向がある)

  • 表皮内および真皮上層でのメラニンの増加(大半が褐色で,灰色または青色を帯びる)

  • 真皮内でのメラニンの増加(灰色または青色が強くなる傾向がある)

  • 薬物,代謝物,または薬物メラニン複合体の真皮内沈着(通常はスレート色または青灰色)

固定薬疹では,原因薬剤を服用するたびに,同一部位に赤い局面または水疱が形成されるが,それらが消退した後に残る炎症後色素沈着は通常持続する(特に,濃い色のスキンタイプの場合)。典型的な病変は,顔面(特に口唇),手,足,および性器に生じる。固定薬疹を誘発する典型的な薬剤としては,抗菌薬(スルホンアミド系薬剤,テトラサイクリン系薬剤,トリメトプリム,フルオロキノロン系薬剤),非ステロイド系抗炎症薬,バルビツール酸系薬剤などがある。

薬剤性色素沈着の治療としては,原因薬剤を中止するが,これにより全例ではなくとも,一部の症例では非常に緩徐ながら色素沈着が消失していく。皮膚色素沈着を引き起こす多くの薬剤は 光線過敏反応 光線過敏症 光線過敏症は,皮膚が日光に対して過剰に反応する病態である。特発性に生じることもあれば,毒性またはアレルゲン性を有する特定の薬物または化学物質に曝露した後に生じることもあり,ときに全身性疾患(例,全身性エリテマトーデス,ポルフィリン症,ペラグラ,色素性乾皮症)の特徴の1つである場合もある。診断は臨床的に行う。治療は病型によって異なる。 日光による急性の影響と 日光による慢性的影響に加えて,日光への曝露後には,頻度は低いが様々な反応が生じる... さらに読む 光線過敏症 も引き起こすため,患者は 日光曝露を避ける 予防 日光に対する皮膚の反応としては,慢性の変化(例, 光老化, 日光角化症)と急性の変化(例, 光線過敏症, サンバーン)がある。 太陽は幅広い波長の電磁放射線を放出している。日光が皮膚に及ぼす影響の大半は紫外線によるものであるが,紫外線はUVA(320~400nm),UVB(280~320nm),UVC(100~280nm)の3つの波長帯に... さらに読む べきである。

色素沈着の要点

  • 限局性の色素沈着の一般的な原因としては,損傷,炎症,植物性光皮膚炎,黒子,肝斑,そばかす,カフェオレ斑,黒色表皮腫などがある。

  • 広範な色素沈着の一般的な原因としては,肝斑,薬剤,がん,その他の全身性疾患などがある。

  • 薬剤性以外で広範な色素沈着を来した患者には,原発性胆汁性胆管炎,ヘモクロマトーシス,アジソン病などの疾患に対する検査を行う。

  • 肝斑はまず,2~4%ハイドロキノン,0.05~1%トレチノイン,およびクラスV~VIIの外用コルチコステロイドの併用により治療する。

  • 黒子が整容的に問題となる場合は,凍結療法またはレーザーにより治療する。

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