Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

honeypot link

白斑

執筆者:

Shinjita Das

, MD, Harvard Medical School

レビュー/改訂 2020年 12月
ここをクリックすると、 家庭版の同じトピックのページに移動します
本ページのリソース

白斑とは,皮膚メラノサイトの欠損によって皮膚に様々な大きさの脱色素斑が生じる病態である。原因は不明であるが,遺伝因子と自己免疫因子が関与している可能性が高い。診断は通常,皮膚の診察所見から明らかとなる。一般的な治療法としては,コルチコステロイドの外用(しばしばカルシポトリオールとの併用),カルシニューリン阻害薬(タクロリムスおよびピメクロリムス),ナローバンドUVB(紫外線B波)療法またはソラレンとUVAの併用療法などがある。多くの疾患がナローバンドUVB療法に反応する可能性がある。色素脱失が重度で広範囲にわたる場合は,残存する正常皮膚の色素をモノベンジルエーテルまたはハイドロキノンで永続的に脱失(脱色)させる方法もある。外科的な皮膚移植術を考慮してもよい:

白斑は一般集団の最大2%に生じる。

白斑の病因

白斑の病因は不明であるが,患部ではメラノサイトの欠損がみられる。提唱されている機序としては,自己免疫によるメラノサイトの破壊,メラノサイトの生存性の低下,原発性のメラノサイトの異常などがある。

白斑は家族性の場合(常染色体優性 常染色体優性 単一の遺伝子によって規定される遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は,最も解析が容易で,最も詳細に解明されている。形質の発現に1コピーの遺伝子(1つのアレル)のみを必要とする場合,その形質は優性とみなされる。形質の発現に2コピーの遺伝子(2つのアレル)を必要とする場合,その形質は劣性とみなされる。例外の1つはX連鎖疾患である。男性では通常,X染色体のほとんどのアレルに対して影響を相殺する対のアレルが存在しないため,X染色体のアレルは形質が劣性で... さらに読む 遺伝,不完全浸透,発現形態が多様)と,後天性の場合がある。一部の患者ではメラニンに対する抗体が認められる。最大30%の患者で,他の自己免疫抗体(サイログロブリン,副腎細胞,および壁細胞に対する抗体)または臨床的な自己免疫性内分泌疾患(アジソン病 アジソン病 アジソン病は潜行性で通常は進行性の副腎皮質の機能低下である。低血圧,色素沈着など種々の症状を引き起こし,心血管虚脱を伴う副腎クリーゼにつながる恐れがある。診断は臨床的に行われ,血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)高値および血漿コルチゾール低値の所見によってなされる。治療は原因に応じて異なるが,一般にはヒドロコルチゾンや,ときに他のホルモンを用いる。 ( 副腎機能の概要も参照のこと。)... さらに読む アジソン病 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む 悪性貧血 自己免疫性萎縮性胃炎 自己免疫性萎縮性胃炎(autoimmune metaplastic atrophic gastritis)は,壁細胞が障害される遺伝性の自己免疫疾患であり,低酸症と内因子の産生低下が生じる。その結果,萎縮性胃炎,ビタミンB12吸収不良,しばしば悪性貧血などが発生する。胃腺癌のリスクが3倍増加する。診断は内視鏡検査による。治療はビタミンB12の注射を行う。 ( 胃酸分泌の概要および... さらに読む 自己免疫性萎縮性胃炎 ,甲状腺機能障害)が認められる。しかしながら,自己免疫疾患との関連は明らかでなく,偶然の結果である可能性もある。最も強い関連は 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる( 様々な病態における甲状腺機能検査の結果の表を参照)。... さらに読む 甲状腺機能亢進症 (バセドウ病)および甲状腺機能低下症(橋本甲状腺炎 橋本甲状腺炎 橋本甲状腺炎は甲状腺の慢性自己免疫性炎症で,リンパ球の浸潤を伴う。所見には,無痛性の甲状腺腫大および甲状腺機能低下症状がある。診断には抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の抗体価高値を証明することが含まれる。生涯にわたるL-チロキシン補充が一般的には必要となる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 橋本甲状腺炎は北米の原発性甲状腺機能低下症の最も一般的な原因であると考えられている。女性に数倍多く発生する。発生率は年齢とともに上昇し,... さらに読む )との間で認められている。

ときに,皮膚の直接的な物理的損傷後に白斑が生じることがある(例,サンバーンに対する反応)。患者は白斑の発症を精神的ストレスと結びつけることがある。

白斑の症状と徴候

白斑は色素減少または色素脱失を来した領域を特徴とし,それらの領域は通常境界明瞭で,しばしば対称性である。色素脱失は限局性で,1~2カ所に生じる場合もあれば,皮膚分節全体に生じる場合もある(分節型白斑);まれではあるが,色素脱失が汎発化して,皮膚表面の大部分が侵される場合もある(汎発型白斑)。ただし,白斑の好発部位は顔面(特に開口部周辺),指趾,手背,手関節屈側,肘,膝,脛部,足背,腋窩,鼠径部,肛門性器部,臍部,および乳頭である。整容的に美観を損なう状態は,皮膚の色が濃い患者では特に重度となり,精神的に深刻となることがある。白斑部の毛髪は通常白くなる。

白斑の臨床像

白斑の診断

  • 臨床的評価

皮膚の色素脱失は典型的には診察で明らかであり,皮膚の色が濃い人では特に明白である。微妙な色素減少または色素脱失病変は, ウッド灯 ウッド灯 診断検査は,病歴や身体診察のみで皮膚病変または皮膚疾患の原因が明らかでない場合に適応となる。具体的には以下のものがある: パッチテスト 生検 擦過 ウッド灯による診察 さらに読む ウッド灯 (365nm)検査で一段と明瞭になり,色素脱失部の皮膚はチョーク様の白い外観を呈する。

鑑別診断としては,炎症後色素減少,まだら症(まれな常染色体優性遺伝疾患であり,前額部,頸部,体幹前面,四肢の中間部を好発部位として脱色素斑が生じ,その周囲を色素減少の領域が取り囲む),斑状強皮症(限局性の強皮症で,通常は皮膚が硬化する), ハンセン病 ハンセン病 ハンセン病は,末梢神経,皮膚,上気道粘膜に対して特有な指向性を示す抗酸性の桿菌であるらい菌(Mycobacterium leprae)によって通常引き起こされる慢性感染症である。症状は多彩で,感覚消失を伴う多形性の皮膚病変や末梢神経障害などがみられる。診断は臨床的に行い,生検により確定する。治療は典型的にはジアフェニルスルホンと他の抗抗酸菌薬の併用による。治療を開始すれば,他者への感染性は急速に消失する。... さらに読む ハンセン病 (通常は病変部に知覚鈍麻がみられる), 硬化性苔癬 硬化性苔癬 硬化性苔癬は,原因不明であるが,おそらく自己免疫によるものと考えられている炎症性皮膚疾患で,通常は肛門性器部を侵す。 最も早期に認められる徴候は,皮膚の脆弱化と皮下出血であり,ときに水疱形成もみられる。典型的には,病変により軽度から重度のそう痒が引き起こされる。硬化性苔癬が小児に発生すると,その外観から,性的虐待と混同されることがある。時間とともに患部の組織は萎縮して菲薄化し,色素減少がみられ(炎症後色素沈着による色素斑がみられることも... さらに読む 硬化性苔癬 ,白色粃糠疹,化学物質による白斑,黒色腫による白斑などがある。

エビデンスに基づくガイドラインは存在しないが,システムレビュー(review of systems)の所見に基づく臨床的な適応に応じて,血算,空腹時血糖測定,および甲状腺機能検査を行うのが妥当である。

白斑の治療

  • 患部の光防御

  • コルチコステロイドおよびカルシポトリオールの外用

  • 顔面または鼠径部の病変にはカルシニューリン阻害薬の外用

  • ナローバンドUVB療法またはソラレンと紫外線A波照射の併用療法(PUVA療法)

白斑は管理が難しいことがあり,初期の色素再生や色素の維持は予測できない場合がある。医師は皮膚色が均一であることに関する個人的および民族的な感受性を認識しておかなければならない;この疾患は心理的に大きな影響を及ぼす可能性がある。色素脱失を来した領域は 重度のサンバーン サンバーン サンバーンは,太陽の紫外線に過度に曝露することで生じる紅斑を特徴とし,ときに疼痛や水疱もみられる。治療は温熱による熱傷に対するものと同様であり,具体的には冷罨法や非ステロイド系抗炎症薬などがあるが,重症例には滅菌ドレッシングや抗菌薬の外用も行われる。日光の回避とサンスクリーン剤の使用による予防が極めて重要である。 サンバーンは皮膚が紫外線に過度に曝露することで発生し,UVBの波長帯(280~320nm)の光線が最も著明な影響を引き起こす... さらに読む サンバーン が生じやすくなるため,全ての患部を 衣服またはサンスクリーン剤で防御する 予防 日光に対する皮膚の反応としては,慢性の変化(例, 光老化, 日光角化症)と急性の変化(例, 光線過敏症, サンバーン)がある。 太陽は幅広い波長の電磁放射線を放出している。日光が皮膚に及ぼす影響の大半は紫外線によるものであるが,紫外線はUVA(320~400nm),UVB(280~320nm),UVC(100~280nm)の3つの波長帯に... さらに読む 必要がある。

散在性の小さな病変は化粧でカモフラージュすることができる。患部がより広範に及ぶ場合は通常,色素再生を目的とした治療が行われる。しかしながら,このような治療法の有効性を比較により検討した研究はほとんどない。従来からの第1選択の治療法は,強力なコルチコステロイドの外用であるが,周囲の正常皮膚に色素減少や萎縮が生じることがある。カルシニューリン阻害薬(タクロリムスおよびピメクロリムス)は,外用ステロイド療法による有害作用の好発部位(顔面および鼠径部など)に対する治療で特に有用な代替薬となりうる。カルシポトリオールとジプロピオン酸ベタメタゾンの混合剤も役立つ可能性があり,いずれの単剤療法よりも効果が高い。

内服および外用のPUVA療法はしばしば有効であるが,100回以上の治療が必要になることもあり, 皮膚悪性腫瘍 皮膚悪性腫瘍の概要 皮膚悪性腫瘍は最も頻度の高い悪性腫瘍であり,一般的には露光部の皮膚に生じる。その発生率は戸外労働者,スポーツ愛好者,および日光浴愛好者で高く,皮膚のメラニン色素量と反比例し,皮膚の色の薄い人々が最も罹患しやすい。皮膚悪性腫瘍はまた,治療目的のX線照射または発がん物質への曝露(例,ヒ素の摂取)から何年も経過して発生することもある。... さらに読む のリスクを高める可能性がある。ナローバンドUVB療法は外用のPUVA療法と同等の効果を示す一方,有害作用がほとんどないため,PUVA療法よりもナローバンドUVB療法の方が望ましい。広範な白斑には,しばしばナローバンドUVB療法が望ましい初期治療となる。エキシマレーザー(308nm)が有用となる場合があり,初期の外用療法に反応しない限局例で特に有用である。

皮膚の色調を均一にするために正常皮膚の色素を脱失させる処置は,20%モノベンジルエーテルまたはハイドロキノンを1日2回外用することで可能である。この処置は,皮膚の大部分が侵され,患者に永続的な色素脱失とその後の光線性皮膚傷害(例, 皮膚悪性腫瘍 皮膚悪性腫瘍の概要 皮膚悪性腫瘍は最も頻度の高い悪性腫瘍であり,一般的には露光部の皮膚に生じる。その発生率は戸外労働者,スポーツ愛好者,および日光浴愛好者で高く,皮膚のメラニン色素量と反比例し,皮膚の色の薄い人々が最も罹患しやすい。皮膚悪性腫瘍はまた,治療目的のX線照射または発がん物質への曝露(例,ヒ素の摂取)から何年も経過して発生することもある。... さらに読む 光老化 光老化 日光の慢性効果としては光老化,日光角化症,皮膚悪性腫瘍などがある。( 日光による影響の概要も参照のこと。) 慢性的な日光曝露は皮膚の老化(光老化,外因性老化)を引き起こすが,これは主に,様々な生化学的異常やDNA損傷により皮膚コラーゲンが破壊されることで起きる。皮膚の変化としては,細かいしわと粗いしわ,ゴワゴワした皮革様の質感,斑状の色素沈着,黒子(大きなそばかすに似た斑),黄ばみ,毛細血管拡張などがある。... さらに読む 光老化 )のリスク増加を受け入れる覚悟がある場合にのみ適応となる。この処置は極めて強い刺激感を生じる可能性があるため,広範囲に適用する場合は,まず小さな領域で試すべきである。1年以上の治療が必要になることもある。

治療に関する参考文献

  • 1.Gan EY, Kong YL, Tan WD, et al: Twelve-month and sixty-month outcomes of noncultured cellular grafting for vitiligo.J Am Acad Dermatol 75(3):564-571, 2016.doi: 10.1016/j.jaad.2016.04.007

  • 2.Rothstein B, Joshipura D, Saraiya A, et al: Treatment of vitiligo with the topical Janus kinase inhibitor ruxolitinib.J Am Acad Dermatol 76(6):1054-1060.e1.doi: 10.1016/j.jaad.2017.02.049

白斑の要点

  • 一部の症例の白斑には,遺伝子変異または自己免疫疾患が関与している可能性がある。

  • 白斑は限局型,分節型,全身型(まれ)の場合がある。

  • 診断は皮膚診察により,さらに血算,空腹時血糖測定,および甲状腺機能検査を考慮する。

  • カルシポトリオールとジプロピオン酸ベタメタゾンの外用,コルチコステロイド単剤の外用,ナローバンドUVB療法,カルシニューリン阻害薬(タクロリムスおよびピメクロリムス)などの治療を考慮する。

  • 白斑に対する新たな治療法としてヤヌスキナーゼ阻害薬が登場している。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

ここをクリックすると、 家庭版の同じトピックのページに移動します
家庭版を見る
quiz link

Test your knowledge

Take a Quiz! 
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS
TOP