アジア条虫(Taenia asiatica)感染症

執筆者:Richard D. Pearson, MD, University of Virginia School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 3月
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アジア条虫Taenia asiatica)による感染症は,アジアに限局してみられる。無鉤条虫(T. saginata)による感染症と非常によく似ているが,主な病原体保有生物はウシではなくブタである。

アジア条虫(T. asiatica)の成虫の形態と引き起こす腸管感染症の臨床像,診断,および管理は,無鉤条虫(T. saginata )(ウシ条虫[beef tapeworm])のそれと似ているが,牛肉ではなく豚肉を摂取することで感染する。アジア条虫(T. asiatica)の成虫の大きさは4~8mである。

アジア条虫(T. asiatica)による感染症は,アジアに限局してみられ,大半が中国,インドネシア,タイ,韓国,インド,および周辺国で発生している。

アジア条虫(T. asiatica)の中間宿主はブタである。ヒトへの感染は,生または加熱調理不十分な豚肉中の嚢虫(幼虫)を摂取することにより生じる。摂取された嚢虫は,ヒトの小腸内で成虫まで成熟する。

アジア条虫(T. asiatica)がヒトに嚢虫症を引き起こすかどうかは不明である。嚢虫症は幼虫による感染症であり,ヒトの便中に排泄された虫卵の摂取後に発生する。

アジア条虫感染症の症状

アジア条虫(T. asiatica)は腸管感染症を引き起こす。アジア条虫(T. asiatica)の成虫に感染したヒトは,無症状のこともあれば,軽度の消化管症状がみられることもある。便中に片節(条虫の体節)を認めることがある。

アジア条虫感染症の診断

  • 便の鏡検による虫卵および片節の確認

便中に片節および虫卵がないか確認すべきであり,虫卵はセロファンテープ肛囲検査法でも検出されることがある。アジア条虫(T. asiatica)の虫卵は,形態的に無鉤条虫(T. saginata)や有鈎条虫(T. solium)の虫卵と区別できない。寄生虫DNAの分子生物学的検査を行えば,アジア条虫(T. asiatica)を無鉤条虫(T. saginata)と鑑別することができる。

アジア条虫感染症の治療

  • プラジカンテル

  • あるいは,ニクロサミド(米国外)

アジア条虫(T. asiatica)感染症の治療は,プラジカンテル5mg/kgまたは10mg/kgの単回経口投与による。

代替薬のニクロサミド(米国では入手不能)は,2gを錠剤4錠(各500mg)として単回投与し,1錠ずつ噛み砕き少量の水で飲み込ませる。小児でのニクロサミドの用量は50mg/kg(最大2g),単回投与である。

治癒を確認するため,治療後1および3カ月時に便を再検査して条虫の卵の有無を確認すべきである。

塊肉は最も厚い部分に調理用温度計を置いて測定し≥ 63℃(≥ 145°F)まで加熱調理し,切り分けるか食べる前に3分間放置することで感染が予防できる。ひき肉は ≥ 71℃(≥ 160°F)まで加熱調理すべきである。ひき肉には放置時間は必要ない。

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