COVID-19ワクチン

執筆者:Margot L. Savoy, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University
レビュー/改訂 2022年 10月
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COVID-19ワクチンは,SARS-CoV-2ウイルスの感染によって引き起こされる疾患であるCOVID-19に対する予防効果をもたらす。ワクチン接種は,現在蔓延している変異株(デルタ株およびオミクロン株)のSARS-CoV-2による重症化および死亡の予防において,最も効果的な戦略である。米国での2021年秋の入院率は,ワクチン未接種者の方がワクチン接種者の8~10倍高かった。また,同じ期間において,ワクチン未接種者がCOVID-19により死亡する可能性は,ワクチン接種者と比べて20倍高くなっていた。

現在,COVID-19に対する複数のワクチンが世界中で使用されているが(COVID-19 Vaccine Trackerを参照),このトピックでは,米国で現在使用されているワクチンのみを扱っている。

米国では,以下のCOVID-19ワクチンが使用されている:

  • Pfizer社とBioNTech社が製造するSARS-CoV-2ウイルス(COVID-19)mRNAワクチンが,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)により,16歳以上の人々への使用について承認されている。このワクチンについては,生後6カ月~15歳の小児を対象として,緊急使用許可(EUA)も受けている。

  • Moderna社が製造するSARS-CoV-2ウイルス(COVID-19)mRNAワクチンが,18歳以上の人々への使用が承認されている。このワクチンについては,生後6カ月~17歳の小児を対象として,EUAも受けている。

  • Janssen/Johnson&Johnson社が製造するSARS-CoV-2ウイルス(COVID-19)アデノウイルスベクターワクチンが,他のCOVID-19ワクチンを利用できないか臨床的に適切ではない,またはAd26.COV2.S以外のCOVID-19ワクチンの接種は受けたくないという理由でこのワクチンの接種を受けることを選択した18歳以上の人々を対象としてEUAを受けている。(FDA Limits Use of Janssen COVID-19 Vaccine to Certain Individualsを参照のこと。)

  • Novavax社が製造するSARS-CoV-2ウイルス(COVID-19)組換えスパイクタンパク質ナノ粒子ワクチンが,12歳以上の人々を対象としてEUAを受けている。

重篤な有害事象のリスクがあることから,ほとんどの状況で,初回接種にアデノウイルスベクターワクチンよりもmRNAワクチンおよびNovavax社製のスパイクタンパク質ワクチンが優先して選択される。アデノウイルスベクターワクチンと,まれにみられる重篤な有害事象であるワクチン起因性血栓性血小板減少症候群(vaccine-induced thrombosis with thrombocytopenia syndrome)との間には,妥当な因果関係が認められる。(Johnson & Johnson’s Janssen COVID-19 Vaccine Overview and Safetyを参照のこと。)

詳細については,COVID-19 Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsFDA prescribing information for the Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccineおよびFDA prescribing information for the Moderna COVID-19 vaccine,ならびにワクチン接種提供者のためのEUAに関するファクトシート(Pfizer-BioNTechModernaJanssen/Johnson & Johnson,およびNovavax)を参照のこと。2022年版の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更の要約が,ここから入手可能である。

予防接種の概要およびCOVID-19も参照のこと。)

製剤

COVID-19に対するmRNAワクチンには以下の2つがある:

  • BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)

  • mRNA-1273(Moderna製)

これらのmRNAワクチンは,ウイルス抗原を含有せず,標的抗原(スパイクタンパク質)をコードするmRNAの小さな合成断片を送達する。ワクチンに含まれるmRNAは,免疫系の細胞に取り込まれ,そこでウイルス抗原を産生するように細胞を刺激した後,分解される。すると,抗原が放出されて意図する免疫応答が惹起され,その後に実際のウイルスに曝露した際,感染の重症化が予防される。

COVID-19に対するアデノウイルスベクターワクチンには以下の1つがある:

  • Ad26.COV2.S(Janssen/Johnson & Johnson製)

アデノウイルスベクターワクチンには,SARS-CoV-2の特徴的なスパイクタンパク質を産生するために,そのDNAの一部が組み込まれており,それにより意図された免疫応答が誘導される。

COVID-19に対するスパイクタンパク質ワクチンには以下の1つがある:

  • NVX-CoV2373(Novavax製)

スパイクタンパク質ワクチンには,SARS-CoV-2の組換えスパイクタンパク質が含まれており,これが望ましい免疫応答を誘発する。

適応

BNT162b2は,16歳以上の人々におけるCOVID-19の予防を適応として,FDAの承認を取得している。

BNT162b2には,生後6カ月~15歳の人々におけるCOVID-19の予防について,EUAが出されている。

mRNA-1273は,18歳以上の人々におけるCOVID-19の予防を適応として,FDAの承認を取得している。

mRNA-1273には,生後6カ月~17歳の人々におけるCOVID-19の予防について,EUAが出されている。

Ad26.COV2.Sには,他のCOVID-19ワクチンを利用できないか臨床的に適切ではない,またはAd26.COV2.S以外のCOVID-19ワクチンの接種は受けたくないという理由でこのワクチンの接種を受けることを選択した18歳以上の人々におけるCOVID-19の予防について,EUAが出されている。(FDA Limits Use of Janssen COVID-19 Vaccine to Certain Individualsを参照のこと。)

NVX-CoV2373には,12歳以上の人々におけるCOVID-19の予防について,EUAが出されている。

禁忌および注意事項

4つのCOVID-19ワクチンの禁忌は以下の通りである:

  • いずれかのワクチンの接種後に重度のアレルギー反応を起こしたことがある

  • ワクチンの成分に対して重度のアレルギー反応を起こしたことがある

4つのCOVID-19ワクチン全てに共通する注意事項は以下の通りである:

即時型アレルギー反応を管理するための適切な内科的治療を,COVID-19ワクチンの接種後に急性アナフィラキシー反応が発生した場合に直ちに行えるようにしておく必要がある。COVID-19ワクチンの接種者には,即時型の有害反応が起きていないかモニタリングすべきである。

易感染性状態にある個人(免疫抑制薬の投与を受けている者を含む)では,これらのワクチンに対する免疫応答が減弱する可能性がある。

アデノウイルスベクターワクチンについては,ワクチン接種後にワクチン起因性血栓性血小板減少症候群(vaccine-induced thrombosis with thrombocytopenia syndrome)の症例が報告されていることから,FDAから警告が出されている(Janssen/Johnson & JohnsonのFDAファクトシートを参照)。それらの報告から,脳静脈洞やその他の部位(中心動脈および内臓動脈,静脈,ならびに下肢の動脈を含むが,これらに限定されない)に血栓症が生じるリスクが高く,また,血小板減少を伴うことが示唆されている。発症はワクチン接種から約1~2週間後である。症例は18歳以上の男女で発生しており,報告率が最も高いのは30~49歳の女性であり,死亡例もあった。ワクチン接種後に血小板減少を伴う血栓症が疑われる患者では,ヘパリンの使用が有害となる可能性があり,別の治療が必要になる場合がある。血液専門医へのコンサルテーションが強く推奨される。(Johnson & Johnson’s Janssen COVID-19 Vaccine Overview and Safetyも参照のこと。)

mRNAワクチンおよびアジュバント添加ワクチンについては,複数回の接種後,特に2回目の接種から7日以内に心筋炎および心膜炎が報告されており,ワクチン接種後にこれらの事象のリスクが高まる可能性が示唆されているという旨の警告がFDAから出されている(Pfizer社・BioNTech社製ワクチンModerna社製ワクチン,およびNovavax社製ワクチンに関するFDAの情報を参照)。観察されたリスクは若い男性で最も高い。ワクチン接種者は,接種後に胸痛や息切れが起きるか,心臓が速く鼓動したり,ふるえたり,強く脈打ったりするのを感じた場合,直ちに医療機関を受診する必要がある。一部の患者では集中治療が必要とされているが,短期間の追跡研究から得られたデータからは,症状は通常,保存的管理により消失したことが示唆される。

用量および用法

COVID-19ワクチンBNT162b2(mRNA)の小児および成人に対する初回接種用量に関する情報はここから入手できる。

COVID-19ワクチンmRNA-1273(mRNA)の小児および成人に対する初回接種用量に関する情報はここから入手できる。

COVID-19ワクチンAd26.COV2.S(アデノウイルスベクター)の初回接種用量に関する情報はここから入手できる。

COVID-19ワクチンNVX-CoV2373(スパイクタンパク質)の小児および成人に対する初回接種用量に関する情報はここから入手できる。

追加の初回接種および追加接種のガイダンスは,各自の年齢および易感染状態に応じて異なる。

中等度から重度の易感染性患者に対する初回接種のガイダンス

免疫系に中等度から重度の障害がある個人には,追加の初回接種が推奨される(Guidance for COVID-19 vaccination for people who are moderately or severely immunocompromisedおよびCOVID-19 Vaccines for People Who Are Moderately or Severely Immunocompromisedを参照)。

一連の初回接種が完了した後,感染予防効果は,時間の経過とともに低下することが示されている。感染,重症化,および死亡に対する予防効果を最大限に高めるために,追加接種を受けることが推奨される。その年齢群に対して承認されている2価ワクチンのみを使用すべきである。対象者が推奨される全ての初回接種および追加接種を受けた場合,一連のワクチン接種を完了したとみなされる。

2価の改良型ワクチンによる追加接種

2022年,FDAはmRNAワクチンに関するEUAを改正し,2価製剤のワクチンを1回の追加接種として使用することを許可した(FDA fact sheetを参照)。2価ワクチン(updated boosterと呼ばれる)には,SARS-CoV-2ウイルスのmRNA成分が2つ含まれている。1つはSARS-CoV-2の最初の株であり,もう1つはBA.4およびBA.5として知られる最近のオミクロン株亜種を標的とするものである。2価の改良型ワクチンの導入以降,CDCは2価ワクチンのみを追加接種として使用することを許可している。1価の追加接種用mRNAワクチンはもはや入手できない。

免疫機能が低下していない場合の追加接種のガイダンス

COVID-19に対するワクチン接種を完了した個人で免疫機能が低下していない場合には,年齢と完了した初回接種の内容に応じて,追加接種の対象になる(COVID-19 Vaccine Booster Shotsを参照):

中等度から重度の易感染性患者に対する 追加接種のガイダンス

COVID-19に対するワクチン接種を完了した個人で,免疫系に中等度から重度の障害がある場合には,年齢と完了した初回接種の内容に応じて,追加接種の対象になる(COVID-19 Vaccines for People Who Are Moderately or Severely Immunocompromisedを参照)。

有害作用

4つのCOVID-19ワクチンの有害作用は類似している。

アナフィラキシーを含めて,まれに生じる重度のアレルギー反応が報告されている。

よくみられるその他の有害作用は以下の通りである:

  • 注射部位の疼痛,腫脹,および発赤

  • 疲労

  • 頭痛

  • 筋肉痛および関節痛

  • 発熱および悪寒

  • 悪心

  • 倦怠感

  • リンパ節腫脹

有害作用は典型的には数日間持続する。

COVID-19のワクチン接種後に反応性リンパ節腫脹が発生することがあり,マンモグラフィーの結果が偽陽性となる可能性がある。米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)によると,一部の専門家が,ワクチン接種前にマンモグラフィーを受けておくか,ワクチン接種後4~6週間待ってから受けることを推奨している。

より詳細な情報

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