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ビタミンC欠乏症

(壊血病;アスコルビン酸欠乏症)

執筆者:

Larry E. Johnson

, MD, PhD, University of Arkansas for Medical Sciences

レビュー/改訂 2020年 11月
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先進国では,ビタミンC欠乏症は全身的な低栄養の一部として起こることがあるが,重度の欠乏症(壊血病を引き起こす)はまれである。症状としては,疲労,抑うつ,結合組織の異常(例,歯肉炎,点状出血,発疹,内出血,創傷治癒障害)などがある。乳児および小児では,骨成長が障害される可能性がある。診断は通常,臨床的に行う。治療はビタミンCの経口投与による。

ビタミンCは,コラーゲン,カルニチン,ホルモン,およびアミノ酸の合成で役割を果たしている。骨および血管の健康ならびに創傷治癒に必須であり,熱傷からの回復を促進する。ビタミンCはまた抗酸化物質でもあり,免疫機能を支え,鉄の吸収を促進する(ビタミンの供給源,機能,および作用 ビタミンの供給源,機能,および作用 ビタミンの供給源,機能,および作用 の表を参照)。

重度のビタミンC欠乏症の結果,出血症状および類骨や歯の象牙質の形成異常を特徴とする疾患である壊血病が生じる。

ビタミンC欠乏症の病因

成人では,原発性ビタミンC欠乏症は通常,以下のものが原因である:

  • 不十分な食事

食事からのビタミンCの必要量は,熱性疾患,炎症性疾患(特に下痢性疾患),無酸症, 喫煙 タバコ タバコ使用は,個人的にも公衆的にも重大な健康問題である。依存は急速に発生する。主な影響としては,心血管疾患,肺癌やその他多くの種類のがん,COPD(慢性閉塞性肺疾患),その他の疾患による若年死および罹病がある。喫煙する全ての患者には 禁煙介入を勧めるべきである。 米国におけるタバコの使用率は過去50年間で減少しているが,人口増加により,喫... さらに読む 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる( 様々な病態における甲状腺機能検査の結果の表を参照)。... さらに読む 甲状腺機能亢進症 鉄欠乏症 鉄欠乏症 鉄(Fe)はヘモグロビン,ミオグロビン,および体内の多数の酵素の成分である。主に動物性食品に含まれるヘム鉄は,平均的な食事中の鉄分の85%超を占める非ヘム鉄(例,植物および穀物に含まれる)よりもはるかに吸収がよい。しかし,非ヘム鉄は,動物性タンパク質およびビタミンCと一緒に摂取すると吸収が増大する。 ( ミネラル欠乏症および中毒の概要も参照のこと。) 鉄欠乏症は,世界的に最も一般的なミネラル欠乏症の一種である。以下の結果として起こること... さらに読む ,寒冷または熱ストレス,手術, 熱傷 熱傷 熱傷とは,熱,放射線,化学物質,または電気の接触によって生じる,皮膚またはその他の組織の損傷である。熱傷は,深度(浅達性[superficial]および深達性[deep]部分層熱傷[partial-thickness]と全層熱傷[full-thickness])および総体表面積に占める割合に基づいて分類される。合併症および関連する問題には... さらに読む 熱傷 ,およびタンパク質欠乏症により増大する。熱(例,人工乳の殺菌,調理)により,食物中のビタミンCの一部が破壊されることがある。

ビタミンC欠乏症の病態生理

ビタミンCが欠乏していると,結合組織,骨,および象牙質における細胞間のセメント質の形成に障害が起こり,その結果毛細血管が脆弱化し,続いて出血と骨および関連する構造の障害を伴う。

骨組織形成が障害され,それにより小児で骨病変および骨成長不良が引き起こされる。骨幹と骨端の間に線維組織が形成され,肋骨肋軟骨移行部が拡大する。密に石灰化した軟骨の断片が,線維組織内に埋め込まれる。骨膜下出血(ときに小さな骨折による)が,小児または成人に起こることがある。

ビタミンC欠乏症の症状と徴候

成人では,ビタミンC欠乏状態が数週間から数カ月続いた後にビタミンC欠乏症の症状が出現する。倦怠感,筋力低下,易刺激性,体重減少,および漠然とした筋肉痛や関節痛が,初期に出現することがある。

壊血病の症状(結合組織異常に関連する)は,欠乏が数カ月続いた後に出現する。毛包性の過角化,らせん状毛髪,毛包周囲の出血が出現することがある。歯肉が腫れ,紫色になり,海綿状になって,脆弱になる;重度の欠乏症では簡単に出血する。最終的には,歯が動揺し脱臼する。二次感染が生じることがある。創傷が治癒しにくく簡単に裂け,自然出血が起こることがある(特に下肢の皮膚の斑状出血または眼球結膜出血として)。

その他の症候としては,大腿の神経鞘内への出血による大腿神経障害(深部静脈血栓症に類似することがある),下肢の浮腫,疼痛を伴う関節内の出血または液貯留などがある。

乳児では,症状は易刺激性,動作中の疼痛,食欲不振,成長の遅れなどである。乳児および小児では,骨成長が障害され,出血および貧血が生じることがある。

ビタミンC欠乏症の診断

  • 通常臨床的に行う(皮膚または歯肉の所見および危険因子に基づく)

ビタミンC欠乏症の診断は通常,皮膚または歯肉の徴候があり,ビタミンC欠乏症のリスクがある患者で臨床的に行う。臨床検査による確定が可能な場合がある。血算を行う(しばしば貧血を認める)。出血時間,凝固時間,およびプロトロンビン時間は正常である。

骨格のX線が小児の壊血病の診断に役立つことがある(しかし成人では役に立たない)。変化は長管骨骨端(特に膝関節)で最も明白である。初期の変化は萎縮に類似する。骨梁の減少により,すりガラス陰影が生じる。皮質は菲薄化する。石灰化した不規則な軟骨の線(Fraenkelの白線[white line of Fraenkel])が,骨幹端に認められる。白線に近傍かつ平行の希薄化帯または線状骨折が,わずかに三角形状の欠損として外側縁に認められることがあるが,これが特異的である。骨端が圧迫されていることがある。骨膜下出血が治癒することで,骨膜がもち上がり,石灰化することがある。

臨床検査診断(血中アスコルビン酸濃度の測定が必要)がときに学術研究センターで行われる。0.6mg/dL(34μmol/L)未満は境界域とみなされ,0.2mg/dL(11μmol/L)未満はビタミンC欠乏症を示す。遠心分離した血液の白血球血小板層におけるアスコルビン酸濃度の測定は,広く利用することはできず,標準化もされていない。

成人では,壊血病を関節炎,出血性疾患,歯肉炎,タンパク質-エネルギー低栄養と鑑別する必要がある。周辺の充血または出血を伴う毛包角化症は,本疾患にほぼ特有の所見である。歯肉の出血,結膜出血,ほとんどの点状出血,および斑状出血は,非特異的である。

ビタミンC欠乏症の治療

  • アスコルビン酸の補給を伴う栄養価の高い食事

成人の壊血病に対しては,徴候が消失するまでアスコルビン酸100~500mgを1日3回1~2週間経口投与し,その後は1日当たりの推奨摂取量の1~2倍を供給する栄養価の高い食事を続ける。

壊血病では,治療量のアスコルビン酸投与により,数日でビタミンCの機能が回復する。症状と徴候は通常1~2週間で消失する。広範囲の皮下出血を伴う慢性的な歯肉炎は,より長期間持続する。

ビタミンC欠乏症の予防

女性には75mg,男性には90mgのビタミンCを1日1回経口投与すると,欠乏症が予防される。喫煙者の場合は,さらに35mg/日を摂取すべきである。ほとんどの果物および野菜5サービング(毎日の摂取が推奨される)により,200mgを超えるビタミンCが供給される。

ビタミンC欠乏症の要点

  • ビタミンCの必要量は,発熱,炎症,下痢,喫煙,甲状腺機能亢進症,鉄欠乏症,寒冷または熱ストレス,手術,熱傷,およびタンパク質欠乏症により増大する。

  • 数週間から数カ月後に,欠乏症は非特異的症状(例,筋力低下,倦怠感,易刺激性,関節痛,筋肉痛)を引き起こす;後に,結合組織が侵され,毛包性の過角化,らせん状毛髪,歯肉の腫脹および出血,動揺歯,創傷治癒の障害,および自然出血が生じる。

  • 皮膚もしくは歯肉の症状または欠乏症の危険因子のある患者では,アスコルビン酸濃度を測定する。

  • アスコルビン酸の補給および栄養価の高い食事により治療する。

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