キーンベック病

(Kienböck病)

執筆者:David R. Steinberg, MD, Perelman School of Medicine at the University of Pennsylvania
レビュー/改訂 2020年 5月
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キーンベック病は月状骨の阻血性骨壊死である。症状は,手関節の疼痛および圧痛などである。診断は画像検査による。治療は様々な外科的手技による。

手疾患の概要および評価も参照のこと。)

キーンベック病は20~45歳の男性(通常は激しい肉体労働者)の利き手に最もよく起こる。全体として,キーンベック病は比較的まれである。その原因は不明である。最終的には月状骨が圧潰することがあり,舟状骨の固定化した回旋およびそれに続く手関節の変性を引き起こすことがある。

キーンベック病の症状と徴候

キーンベック病の症状は,一般に手関節痛(手根骨の月状骨部に限局する)の潜行性の発症で始まり,患者には外傷を負った覚えがない。キーンベック病は10%の症例で両側性である。月状骨に限局性の圧痛があり,手関節背側の正中に沿って最もよくみられる。軽度の腫脹が起きている可能性がある。

キーンベック病の診断

  • 画像検査

キーンベック病の診断ではMRIおよびCTが最も感度が高く,単純X線では異常を認めるようになるまでにより時間がかかり,通常は月状骨の硬化で始まり,それから嚢胞性変化,断片化,および圧潰がみられる。

手関節背側中央部の痛みの鑑別診断としては,手関節背側のガングリオン,滑膜炎または関節炎,伸筋腱の腱炎などがある。

キーンベック病の治療

  • 早期では手関節の副子固定および鎮痛薬

  • 外科的手技

キーンベック病の早期では,手関節の副子固定により月状骨にかかる圧力が低下することがあり,これにより疼痛が緩和され,血流の回復に役立つ可能性がある。疼痛に対して鎮痛薬を投与する。

キーンベック病の外科的治療は,橈骨を短縮する(1)か尺骨を延長することにより月状骨にかかる圧力を軽減することを目的とする。代替治療は,月状骨の血行再建の試みとして行われる(例,血管移植または血管柄付き骨移植;2)。月状骨の病変が進行している例に対し,膝関節から採取した遊離血管柄付き骨を用いて月状骨を温存する試みが一部の外科医によって行われている(3)。

手関節が変性している場合,サルベージ手術(例,近位列の手根骨切除術または手根骨間固定)が一部の手関節の機能を温存するのに役立つことがある。

痛みを緩和するための最後の手段として手関節の全固定を行うことがある。非外科的治療が効果的であることはまれである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Shin YH, Kim JK, Han M, et al: Comparison of long-term outcomes of radial osteotomy and nonoperative treatment for Kienböck disease: a systematic review.J Bone Joint Surg 100(14):1231-1240, 2018.doi: 10.2106/JBJS.17.00764.

  2. 2.Afshar A, Eivaziatashbeik K: Long-term clinical and radiological outcomes of radial shortening osteotomy and vascularized bone graft in Kienböck disease.J Hand Surg Am 38(2):289-296, 2013. doi: 10.1016/j.jhsa.2012.11.016.

  3. 3.Bürger HK, Windhofer C, Gaggl AJ, et al: Vascularized medial femoral trochlea osteochondral flap reconstruction of advanced Kienböck disease.J Hand Surg Am 39(7):1313-1322, 2014.doi: 10.1016/j.jhsa.2014.03.040.

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