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腎アテローム塞栓症

執筆者:

Zhiwei Zhang

, MD, Loma Linda University School of Medicine

レビュー/改訂 2021年 3月
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腎アテローム塞栓症は,アテローム性塞栓による腎細動脈の閉塞であり,進行性慢性腎臓病を引き起こす。同疾患は,アテローム性プラークの破綻に起因する。症状は腎不全によるものであり,広範囲にわたる動脈塞栓症の症状と徴候が存在することがある。診断は腎生検による。長期予後は通常不良である。治療の目標はさらなる塞栓形成の予防である。

アテローム性プラークの破綻は,通常は血管手術,血管形成,動脈造影中の大動脈またはその他の大径動脈の処置に起因する。プラークの自然破綻はまれであるが,びまん性びらん性動脈硬化を有する患者または抗凝固薬もしくは血栓溶解薬を投与中の患者で最もしばしばみられる。

アテローム性塞栓は不完全な閉塞を起こす傾向があり,腎梗塞ではなく続発性の虚血性萎縮を伴う。塞栓にはしばしば異物に対する免疫反応が続発し,腎機能が3~8週間にわたって継続的に悪化する。塞栓の大量形成または再発エピソードによって,急性腎障害ももたらされる場合がある。

症状と徴候

症状は通常,尿毒症を伴う急性または慢性腎機能障害の症状である(急性腎障害の治療 症状と徴候 急性腎障害は,数日間から数週間で腎機能が急速に低下する病態であり,これにより,尿量減少の有無にかかわらず,血中に窒素化合物が蓄積する(高窒素血症)。原因は重度の外傷,疾患,または手術による腎臓の灌流低下である場合が多いが,ときに急速進行性の内因性の腎疾患に起因する場合もある。症状としては,食欲不振,悪心,嘔吐などがある。無治療の場合,痙攣... さらに読む を参照)。腎アテローム塞栓症が高血圧をもたらすことはまれである。腹部臓器(例,膵臓,消化管)に併発した動脈の微小循環悪化により,腹痛,悪心および嘔吐が生じる可能性がある。突然の失明と鮮黄色の網膜斑(Hollenhorst斑)が,網膜細動脈の塞栓により起こりうる。

広範囲にわたる末梢の塞栓症(例,網状皮斑,有痛性の筋肉小結節,顕性壊疽[しばしばtrash syndromeと呼ばれる])の徴候が,ときに存在する。

診断

  • 臨床的な疑い

  • 画像検査(通常は腎超音波検査)

  • ときに腎生検

  • 塞栓の発生源の場所

大動脈に対する処置を最近受けた患者で腎機能の悪化がみられた場合,特にアテローム性塞栓の徴候が認められる場合に,本症が示唆される。鑑別診断としては,造影剤腎症や薬剤性腎症などがある。画像検査(通常は超音波検査)を施行すべきである。

アテローム塞栓症の疑いが依然として高い場合は,経皮的腎生検(検査の感度は約75%)を施行する。血管閉塞がなく,塞栓の原因を治療できる場合があることから,診断は重要である。塞栓内のコレステロール結晶は組織固定の段階で溶解するため,閉塞した血管内に特徴的な両凹の針状の間隙を残す。ときには,皮膚,筋肉または消化管の生検で同じ情報が得られる可能性があり,診断の確立に間接的に役立つ。

血液検査と尿検査は, 急性腎障害 急性腎障害(AKI) 急性腎障害は,数日間から数週間で腎機能が急速に低下する病態であり,これにより,尿量減少の有無にかかわらず,血中に窒素化合物が蓄積する(高窒素血症)。原因は重度の外傷,疾患,または手術による腎臓の灌流低下である場合が多いが,ときに急速進行性の内因性の腎疾患に起因する場合もある。症状としては,食欲不振,悪心,嘔吐などがある。無治療の場合,痙攣... さらに読む または 慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 慢性腎臓病 の診断を確定しうるが,原因は確立されない。尿検査では,典型的には顕微鏡的血尿とごく軽微なタンパク尿を認めるが,ときにネフローゼレベルのタンパク尿が認められる(3g/日超)。好酸球増多,好酸球尿,および一過性の低補体血症が存在する場合がある。

腎または全身性塞栓が再発し,それらの発生源が不明の場合は,上行大動脈および胸部大動脈のアテローム性病変ならびに心臓での塞栓の発生源を検出するため,経食道心エコー検査を施行する;二重ヘリカルCTは,上行大動脈および大動脈弓を調べる上で役立つ場合がある。

予後

腎アテローム塞栓症患者は,全体として予後不良である。

治療

  • 可能な場合は塞栓の発生源を治療する

  • 支持療法

  • 危険因子の是正

ときに塞栓の発生源を治療することが可能である(例,心臓由来および心房細動の塞栓を呈する患者および血栓が新たな塞栓の発生源である患者に対する抗凝固療法)。しかしながら,既存の腎塞栓に対して効果的な直接的治療法はない。コルチコステロイド,抗血小板薬,血管拡張薬および血漿交換は,役に立たない。抗凝固療法の有益性は示されておらず,ほとんどの専門家によれば,実際にはアテローム塞栓症を増大させる可能性がある。

腎機能障害の治療としては,高血圧のコントロールや水・電解質バランスの管理などを行うほか,ときに 透析 血液透析 血液透析では,患者の血液をポンプで血液透析器に送り込むが,透析器は中空糸でできた細管の束またはサンドイッチ状に平行に挟んだ半透膜シートで構成される2つの液体コンパートメントを有する。いずれの構造においても,第1のコンパートメントの血液は半透膜の片側に沿ってポンプで送られ,膜を隔てた他方では電解質輸液(透析液)が別個のコンパートメントで血液とは反対方向にポンプで送られる。(その他の腎代替療法[RRT]については,... さらに読む が必要となる。 動脈硬化 アテローム性動脈硬化 アテローム性動脈硬化は,中型および大型動脈の内腔に向かって成長する斑状の内膜プラーク(アテローム)を特徴とし,そのプラーク内には脂質,炎症細胞,平滑筋細胞,および結合組織が認められる。危険因子には,脂質異常症,糖尿病,喫煙,家族歴,座位時間の長い生活習慣,肥満,高血圧などがある。症状はプラークの成長または破綻により血流が減少ないし途絶した... さらに読む アテローム性動脈硬化 の危険因子の是正により,進行を減速させ,寛解がもたらされる場合がある。治療計画は,高血圧,高脂血症,糖尿病の管理, 禁煙 禁煙 ほとんどの喫煙者は禁煙したいと願い,それを試みているが,成功率は限られている。効果的な介入としては,禁煙カウンセリングとバレニクリン,ブプロピオン,ニコチン代替製品などの薬剤投与がある。 米国の喫煙者の約70%は,喫煙をやめることを望んでおり,少なくとも1回は禁煙を試みたことがあると言う。ニコチンの離脱症状は,禁煙の重大な障壁となりうる。 ( タバコおよび ベイピングも参照のこと。)... さらに読む ,定期的な有酸素運動と良好な栄養の奨励である(アテローム性動脈硬化の治療を参照 治療 アテローム性動脈硬化は,中型および大型動脈の内腔に向かって成長する斑状の内膜プラーク(アテローム)を特徴とし,そのプラーク内には脂質,炎症細胞,平滑筋細胞,および結合組織が認められる。危険因子には,脂質異常症,糖尿病,喫煙,家族歴,座位時間の長い生活習慣,肥満,高血圧などがある。症状はプラークの成長または破綻により血流が減少ないし途絶した... さらに読む 治療 )。

要点

  • 腎アテローム塞栓症は通常は血管手術,血管形成術,動脈造影中の大動脈の処置によってもたらされ,自然発生の動脈硬化性塞栓によるものではない。

  • 大動脈または他の大径動脈の処置後に腎機能が増悪する場合は,診断を疑う。

  • 診断は臨床所見およびときに経皮的腎生検によって確定する。

  • 支持療法,修正可能な危険因子の是正に加え,可能な場合は塞栓の発生源を治療するが,全体的な予後は依然として不良である。

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