血管性認知障害・認知症とアルツハイマー病の相違点

臨床的評価

血管性認知障害・認知症

アルツハイマー病

現病歴

多発性梗塞後の認知機能の段階的進行

緩徐に進行する皮質下の虚血性血管疾患

認知機能の緩徐な悪化

既往歴/

家族歴

脳血管危険因子または脳血管疾患

冠動脈疾患

末梢血管疾患

アルツハイマー病

精神状態

虚血性損傷の部位によって様々

皮質下の虚血性血管疾患による遂行機能の微妙な低下

アルツハイマー病に典型的な記憶障害(例,物事をすぐに忘れる,環境的および社会的手がかりを見逃す)

神経学的所見

局所神経脱落症状,歩行障害

精神状態の障害;それ以外は疾患が進行するまで正常

心血管系所見

心血管系危険因子に関連する所見(例,末梢動脈疾患による下肢の皮膚変化,心不全による圧痕性浮腫,心房細動による不整脈,高血圧)

通常は正常

必要な臨床検査

ヘモグロビンA1Cおよび脂質の測定(上昇している)

心房細動の有無を調べるための心電図検査

認知障害の他の考えられる原因を除外するため,ルーチンの臨床検査(生化学検査全般,血算,TSH,ビタミンB12値,トレポネーマ蛍光抗体吸収試験)により可逆的な認知症の有無を調べる

MRI/CT

局所的な梗塞(認知および行動に重要な脳領域において),融合性の白質病変

純粋な血管性認知障害・認知症では,海馬の体積は相対的に保持される

海馬,側頭葉,頭頂葉,および前頭葉の萎縮

FDG-PET

多巣性の代謝低下(血管性の脳損傷の部位によって異なる)

頭頂葉,側頭葉,後期には前頭葉において代謝が低下するが,一次運動感覚皮質は障害されない

バイオマーカー

なし

髄液検査またはPETでアミロイドβまたはリン酸化されたタウタンパク質が検出される

FDG-PET = フルデオキシグルコース陽電子放出断層撮影;PET = 陽電子放出断層撮影;TSH = 甲状腺刺激ホルモン

Adapted from Wong EC, Chui HC: Vascular cognitive impairment and dementia.Continuum (Minneap Minn) 28 (3):750–780, 2022.doi: 10.1212/CON.0000000000001124