糖原病および糖新生異常症

疾患(OMIM番号)

欠損タンパク質または酵素

備考

糖原病I型(von Gierke病)

最も頻度の高い糖原病I型:Ia型(> 80%)

発症:1歳未満

臨床的特徴:1歳未満では,重度の低血糖,乳酸アシドーシス,および肝腫大;それ以降では,肝腺腫,進行性の腎機能不全および高血圧を伴う腎腫大,低身長,高トリグリセリド血症,高尿酸血症,鼻出血を伴う血小板機能異常,および貧血

Ib型では,重症度は低いものの,好中球減少,反復性感染症を伴う好中球機能障害,および炎症性腸疾患がある

治療:正常血糖値を維持するための生コーンスターチ1.5~2.5g/kg,経口,4~6時間毎またはマルトデキストリン付加乳糖除去人工乳;夜間の哺乳(重要);フルクトースおよびガラクトース制限;乳酸アシドーシスに対して重炭酸塩0.25~0.5mmol/kg,1日4回;尿酸値を6.4mg/dL未満に維持するためのアロプリノール;肝腎移植(有効のことがある)

好中球減少があるIb型患者には,G-CSF

Ia型(232200*)

グルコース-6-ホスファターゼ

Ib型(232220*)

グルコース-6-リン酸トランスロカーゼT1

Ic型(232240*)

グルコース-6-リン酸トランスロカーゼT2

Id型(232240*)

グルコース-6-リン酸トランスロカーゼT3

糖原病II型(ポンペ病,232300*)

発症:乳児期,小児期,または成人期;小児型および成人型では酵素活性残存

臨床的特徴:乳児型では,心不全を伴う心筋症,重度の筋緊張低下,巨舌症

若年型および成人型では,運動発達遅滞を伴う骨格筋ミオパチー,末梢の筋および呼吸筋における進行性の筋力低下

IIb型では,知的障害

治療:症状のある患者には酵素補充(アルグルコシダーゼ アルファ)

心筋症には,心臓移植

IIa型

ライソゾーム酸性α-グルコシダーゼ

IIb型(Danon病)

ライソゾーム膜タンパク質-2

糖原病III型(Forbes病,Cori病,限界デキストリン症;232400*)

頻度:IIIa型85%;IIIb型15%;IIIc型およびIIId型はまれ

発症:乳児期または小児期

臨床的特徴:IIIa型では,Ia型およびII型の特徴を伴う肝および筋症状

IIIb型では,肝症状に加えIa型の特徴のみ

IIIc型およびIIId型では,罹患組織に応じて様々な特徴

治療:正常血糖値維持のための生コーンスターチおよび持続栄養投与,糖新生を刺激する高タンパク質食

IIIa型およびIIIb型

脱分岐酵素(アミログルコシダーゼおよびオリゴグルカノトランスフェラーゼ)

IIIc型

アミログルコシダーゼのみ

IIId型

オリゴグルカノトランスフェラーゼのみ

糖原病IV型(Andersen病;232500*)

分岐酵素

発症:乳児期早期;まれに,新生児期,小児期後期,または成人期(非進行性の変異型または神経筋型として発症する)

臨床的特徴:進行性の肝硬変および低血糖,食道静脈瘤,ならびに腹水を伴う肝腫大;脾腫;発育不良

神経筋型では,筋緊張低下および筋萎縮

治療:既知の治療法はない

肝硬変には,肝移植(これにより基礎疾患も治療できる)

糖原病V型(McArdle病;232600*)

筋ホスホリラーゼ

発症:青年期または成人期早期

臨床的特徴:筋痙攣による運動耐容能低下,横紋筋融解症

治療:運動前の炭水化物投与,高タンパク質食

糖原病VI型(Hers病;232700*)

肝ホスホリラーゼ

頻度:まれ

発症:小児期早期

臨床的特徴:加齢とともに症状が軽減する良性の経過;発育遅滞,肝腫大,低血糖,高脂血症,ケトーシス

治療:正常血糖値維持のための生コーンスターチ

糖原病VII型(垂井病;232800*)

ホスホフルクトキナーゼ

発症:小児期中期

臨床的特徴:筋痙攣による運動耐容能低下,横紋筋融解症,溶血

治療:非特異的,過度の運動の回避

糖原病VIII/IX†

発症:不均一

臨床的特徴:不均一;肝腫大,発育遅滞,筋緊張低下,高コレステロール血症

治療:非特異的

IXa1型およびIXa2型(306000*)

X連鎖性ホスホリラーゼキナーゼ

IXb型(261750*)

肝および筋ホスホリラーゼキナーゼ

IXc型(613027*)

肝ホスホリラーゼキナーゼ

IXd型(300559*)

筋ホスホリラーゼキナーゼ

糖原病0型(240600*)

グリコーゲン合成酵素

発症:多様であるが,しばしば夜間授乳中止後または併発疾患後

臨床的特徴:空腹時低血糖およびケトーシス,食後乳酸アシドーシス

治療:頻回の高タンパク質食,就寝時生コーンスターチ

Fanconi-Bickel症候群(227810*)

グルコース輸送体2

発症:乳児期

臨床的特徴:発育不良,腹部膨隆,肝腫大,腎腫大,軽度の空腹時低血糖および高脂血症,耐糖能障害,腎ファンコニ症候群

治療:低炭水化物・高タンパク食;フルクトース制限による正常な血糖値の維持;腎で喪失している電解質の補充;ビタミンD

フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症(229700*)

フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ

発症:乳児期または小児期早期

臨床的特徴:発作性の過換気,無呼吸,低血糖,ケトーシス,または乳酸アシドーシス;絶食,発熱性感染症,またはフルクトース,ソルビトール,もしくはグリセロールの摂取により誘発されるエピソード

治療:絶食ならびにフルクトース,ソルビトール,およびグリセロールの回避;生コーンスターチ

ホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼ欠損症(261680*)

ホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼ

発症:小児期

臨床的特徴:発育不良,筋緊張低下,肝腫大,乳酸アシドーシス,低血糖

治療:絶食の回避,生コーンスターチ

*遺伝子,分子,および染色体上の位置に関する網羅的な情報については,Online Mendelian Inheritance in Man® (OMIM®) databaseを参照のこと。

†以前のVIII型は現在ではIXa型に含まれている。

G-CSF = 顆粒球コロニー刺激因子;GSD = 糖原病。

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