尿失禁の治療薬

薬剤

機序

用量

備考

腹圧性尿失禁における膀胱出口部の機能不全

デュロキセチン

中枢作用性セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害作用

20~40mg,経口,1日2回から80mg,経口,1日1回

デュロキセチンは,排尿括約筋の横紋筋緊張を増強する。

効果的と考えられるが,本剤の使用経験は限られている。

イミプラミン

三環系抗うつ薬,抗コリン性,α作動性作用

夜に25mg,経口,最大用量の150mgまで25mgずつ増量することが可能

イミプラミンは,排尿筋過活動および膀胱出口部の機能不全に起因する夜間頻尿および混合性尿失禁に対して有用である。

6歳以上の小児で遺尿症を軽減するための一時的な補助療法として許容可能である。

プソイドエフェドリン

α作動性作用

30~60mg,経口,6時間毎

プソイドエフェドリンは尿道平滑筋の収縮を刺激する。

有害作用には不眠,不安,男性の尿閉などがある。

この薬剤は心疾患,高血圧,緑内障,糖尿病,甲状腺機能亢進症,または前立腺肥大症を有する患者には推奨されない。

切迫性または溢流性尿失禁を呈する男性の下部尿路閉塞

アルフゾシン

αアドレナリン受容体遮断

10mg,経口,1日1回

男性では,αアドレナリン受容体遮断薬は,下部尿路閉塞の症状を軽減させ,排尿後残尿量と膀胱出口部の抵抗を減少させる可能性があり,尿流率を増大させることがある。効果は数日から数週で発現する。

有害作用には低血圧,疲労,無力症,浮動性めまいなどである。

ドキサゾシン

1~8mg,経口,1日1回

プラゾシン

0.5~2mg,経口,1日2回

シロドシン

4~8mg,経口,1日1回

タムスロシン

0.4~0.8mg,経口,1日1回

テラゾシン

1~10mg,経口,1日1回

デュタステリド

5α還元酵素阻害

0.5mg,経口,1日1回

デュタステリドおよびフィナステリドは,前立腺を小さくして閉塞症状を軽減させ,50g超の前立腺の経尿道的切除が必要になる可能性を低下させる。

有害作用は最小限であり,性機能障害(例,性欲減退,勃起障害)である。

フィナステリド

5mg,経口,1日1回

タダラフィル

確立されていない

5mg,経口,1日1回

タダラフィルは勃起障害の治療にも使用される。

可能であれば,硝酸薬またはαアドレナリン受容体遮断薬を服用中の患者には使用すべきでない。

切迫性または腹圧性尿失禁における排尿筋過活動*

ダリフェナシン

抗コリン作用,選択的

M3 ムスカリン受容体拮抗

徐放性:7.5mg,経口,1日1回

有害作用はオキシブチニンと同様であるが,膀胱選択的であるため,重症度はより低い可能性がある。

ジサイクロミン

平滑筋弛緩,抗コリン作用

10~20mg,経口,1日3回~4回

ジサイクロミンは十分に研究されていない。

フェソテロジン

抗コリン作用,選択的M3ムスカリン受容体拮抗

4~8mg,経口,1日1回

このプロドラッグからは,トルテロジンと同じ活性代謝物に変換される。

腎障害を有する患者での用量は4mg,1日1回を超えてはならない。

有害作用はオキシブチニンと同様である。

フラボキサート

平滑筋弛緩作用

100~200mg,経口,1日3回または1日4回

フラボキサートは通常,無効である。

有害作用には悪心,嘔吐,口腔乾燥,霧視などがある。

有害作用は用量1200mg/日までは耐容可能である。

ヒヨスチアミン

抗コリン作用

錠剤または液剤:0.125~0.25mg,経口,1日4回

徐放錠:0.375mg,経口,1日2回

ヒヨスチアミンはこれまで十分には研究されていない。

イミプラミン

三環系抗うつ薬,抗コリン性,α作動性作用

夜に25mg,経口,最大用量の150mgまで25mgずつ増量することが可能

イミプラミンは,排尿筋過活動および膀胱出口部の機能不全に起因する夜間頻尿および混合性尿失禁に対して有用である。

ミラベグロン

β3アドレナリン受容体作動薬

25~50mg,経口,1日1回

ミラベグロンは過活動膀胱(尿意切迫と場合により切迫性尿失禁がみられ,通常は頻尿を伴う)の治療に使用される。

血圧を上昇させる可能性がある。

A型ボツリヌス毒素(ボツリヌス毒素製剤)

神経終末の受容体発現部位に結合して神経筋伝達を遮断し,アセチルコリンの放出を阻害

排尿筋に100単位(過活動膀胱に対し)または200単位(神経因性排尿筋過活動に起因する尿失禁[神経因性切迫性尿失禁]に対し)を,必要に応じて12週毎

A型ボツリヌス毒素を膀胱鏡下で注射する。

成人の過活動膀胱または神経因性切迫性尿失禁の治療として,抗コリン薬で十分な反応が得られない場合や,患者が抗コリン薬に耐えられない場合に使用される。

オキシブチニン

平滑筋弛緩作用,抗コリン作用性,非選択的ムスカリン性,局所麻酔作用

即放性:2.5~5mg,経口,1日3回~1日4回

徐放性:5~30mg,経口,1日1回

経皮パッチ:3.9mg,週2回

経皮吸収ゲル(10%):1g小包中の100mg,適用,1日1回

経皮吸収ゲル3%:ポンプ3回,適用,1日1回

オキシブチニンは,切迫性または腹圧性尿失禁の原因となっている排尿筋過活動の治療に使用される薬剤で最も効果的なものである。

効力は時間経過とともに増加する場合がある。

有害作用には抗コリン作用(例,口腔乾燥,便秘)があり,これはアドヒアランスに干渉し,尿失禁を増悪させる可能性がある。

有害作用は徐放性製剤および経皮投与製剤では重症度がより低い。

プロパンテリン

抗コリン作用

7.5~15mg,経口,1日4回~1日6回

プロパンテリンは,有害作用の少ない新しい薬剤にほとんど取って代わられている。

この薬剤は空腹時に服用させなければならない。

ソリフェナシン

抗コリン作用,選択的M1およびM3ムスカリン受容体拮抗

徐放性:5~10mg,経口,1日1回

有害作用はオキシブチニンと同様であるが,膀胱選択的であるため,重症度はより低い可能性がある。

トルテロジン

抗コリン作用,選択的M3ムスカリン受容体拮抗

即放性:1~2mg,経口,1日2回

徐放性:2~4mg,経口,1日1回

効力および有害作用はオキシブチニンと同様であるが,長期の経験は限られている。

M3受容体が標的とされるため,有害作用はオキシブチニンと比べて軽度である。

重度の腎障害を有する患者では,用量の減量が必要である。

トロスピウム

抗コリン作用

即放性:20mg,経口,1日2回(腎機能不全患者には20mg,1日1回)

有害作用はオキシブチニンと同様である。

重度の腎障害を有する患者では,用量の減量が必要である。

溢流性尿失禁における排尿筋低活動

ベタネコール

コリン作動性作用

10~50mg,経口,6時間毎

ベタネコールは通常,無効である。

有害作用には紅潮,頻脈,腹部痙攣,倦怠感などがある。

*抗コリン作用を有する薬剤は,高齢者に対しては慎重に使用すべきである。

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