乳児および小児における発疹の主な原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ

感染症

カンジダ感染症

皮膚溝も含むおむつ部位に,隣接した衛生病変を伴う,強く発赤した(beefy red)発疹を認める

しばしば,舌または口腔粘膜にけば状の白色局面

ときに最近の抗菌薬使用歴

臨床的評価

ときにKOH直接鏡検のための病変の擦過

水痘*

顔面,頭皮,体幹および四肢近位部に赤色点が現れ,10~12時間で小隆起,小水疱,そして中心臍窩を伴う膿疱となり,それが痂皮を形成する

水疱は非常にかゆみが強く,手掌,足底,頭皮,粘膜,およびおむつ部位にも生じる

臨床的評価

伝染性紅斑

頬に融合性の紅斑がみられる(平手打ちされた頬のような外観)

ときに発熱,倦怠感

臨床的評価

膿痂疹

非水疱性膿痂疹:鼻または口の近くに無痛性であるがかゆみのある赤いただれが生じ,間もなく膿または液体が漏出し,蜂蜜色の痂皮が形成される

水疱性膿痂疹:主に2歳未満の小児に生じる

液体が充満した無痛性の水疱で(ほとんどは腕,脚,および体幹に生じ,発赤しかゆみのある皮膚に囲まれている),破れた後,黄色または銀色の痂皮を形成する

臨床的評価

ライム病

遊走性紅斑;拡大する(約5~7cmまで)紅斑性の病変,ときに中心部は消退するか,まれに紫斑(2%)

しばしば疲労,頭痛,関節痛または体の痛み

通常,ダニへの曝露のリスクがある流行地域でみられ,ダニに咬まれたことが判明している場合もしていない場合もある

臨床的評価

ときに血清学的検査

麻疹*

斑状丘疹状皮疹が,顔面から始まり体幹および四肢へ広がる

しばしばコプリック斑(頬粘膜の白色斑)

発熱,咳嗽,鼻感冒,結膜充血

臨床的評価

血清学的検査(公衆衛生上の理由)

髄膜炎菌血症

点状出血,ときに電撃性紫斑病を伴う

発熱,嗜眠,易刺激性

より年長の小児では,髄膜刺激徴候

頻脈,ときに低血圧

血液および髄液のグラム染色および培養

伝染性軟属腫

皮膚常色で中心臍窩を伴う丘疹の集簇

そう痒および不快感はない

臨床的評価

突発性発疹(roseola infantum)

高熱が4~5日持続した後,典型的には解熱とともに斑状丘疹状皮疹が突然現れる

臨床的評価

風疹*

顔面から始まり下行性に広がる,ときにそう痒を伴うピンク色または淡赤色の発疹(融合して一様な色の斑を形成することもある)で,通常広がるにつれ顔面から消退する

最長3日続く

しばしばリンパ節腫脹(後頭部,耳介後部,後頸部),軽度の発熱

臨床的評価

血清学的検査(公衆衛生上の理由)

猩紅熱

発熱,ときに咽頭痛

ざらざらした感触を呈し,圧迫により色調が消退する赤色の細かい発疹が全身に現れ,典型的には発熱後12~72時間に胸部,腋窩,および鼠径部に出現する

特徴として,口の周りの蒼白(口囲蒼白)および皮膚のしわでの症状の増強(Pastia線),苺舌

しばしば続いて手掌および足底,指先およびつま先,ならびに鼠径部の広範な落屑

臨床的評価

ときにレンサ球菌迅速検査または咽頭培養

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

有痛性の紅斑が広範囲に生じて弛緩性の大きな水疱となるが,水疱は容易に破れ,広い範囲で剥離が生じる

水疱は愛護的に圧迫すると側方に拡大する(ニコルスキー現象陽性)

粘膜は侵されない

通常5歳未満の小児に起こる

臨床的評価

ときに生検および/または培養によって確定

白癬

辺縁がわずかに隆起し中心部が退色した,鱗屑を伴う卵円形の病変

軽度のそう痒

臨床的評価

ときにKOH直接鏡検のための病変の擦過

ウイルス感染症(全身性)

斑状丘疹状皮疹

しばしばウイルス性呼吸器疾患の前駆症状

臨床的評価

過敏反応

アトピー性皮膚炎(湿疹)

鱗屑を伴う赤色の斑が,しばしば屈曲部の溝に慢性または反復性にみられる

ときに家族歴

臨床的評価

接触皮膚炎

強いそう痒を伴う紅斑で,ときに小水疱を伴う

全身の症状や徴候は認めない

臨床的評価

薬物反応

びまん性の斑状丘疹状皮疹

現在または最近(1週以内)の薬物使用歴

臨床的評価

スティーブンス-ジョンソン症候群

中毒性表皮壊死融解症

前駆症状として発熱,倦怠感,咳嗽,咽頭痛,および結膜炎

有痛性の粘膜潰瘍が,ほとんどの場合口内および口唇,ときに性器および肛門部に生じる

有痛性の紅斑が広範囲に生じ,弛緩性の大きな水疱を形成する。水疱は容易に破れ,広い範囲で剥離が生じる;足底にも出現する可能性があるが通常頭皮には出現しない

水疱は愛護的に圧迫すると側方に拡大する(ニコルスキー現象陽性)

ときに原因薬物(例,スルホンアミド系,ペニシリン,抗てんかん薬)の使用

臨床的評価

ときに生検

蕁麻疹

境界明瞭でそう痒を伴う赤色かつ隆起性の病変

既知または可能性のあるアレルゲンへの曝露歴は,ある場合もあれば,ない場合もある

臨床的評価

血管炎

IgA血管炎(かつてのヘノッホ-シェーンライン紫斑病)

数日~数週間にわたり触知可能な紫斑が多発し,典型的には重力がかかる部位(例,下肢,殿部)に出現する

しばしば関節炎,腹痛

ときに血尿,便潜血陽性,および/または腸重積症

通常10歳未満の小児に起こる

臨床的評価

ときに皮膚生検

川崎病

多様な外観(例,蕁麻疹様,標的様,紫斑様)をとりうる,びまん性で紅斑を伴う斑状丘疹状皮疹であるが,水疱や小水疱の性状をとることは決してない;手掌および/または足底にも生じうる

5日以上の発熱(しばしば39℃を超える)

口唇の発赤および亀裂,苺舌,結膜炎,頸部リンパ節腫脹

手足の浮腫

その後,指趾の皮膚の落屑が手掌および足底に拡大

臨床基準

他の疾患を除外するための検査

その他

脂漏性皮膚炎

赤色および黄色の鱗屑が頭皮(乳痂)およびときに皮膚のしわに生じる

臨床的評価

おむつ皮膚炎(カンジダ性以外)

おむつ部位に鮮紅色の発疹を生じる;皮膚溝は侵されない

臨床的評価

溶血性尿毒症症候群

点状出血,蒼白

通常,感染性大腸炎の罹患中または罹患後に,腹痛,嘔吐,および血性下痢で発症する

乏尿または無尿

高血圧

微小血管障害性の貧血および血小板減少症の所見がないか調べるため,血小板数を含む血算および血液塗抹検査

腎機能検査

便検査(志賀毒素の測定または大腸菌(E. coli)O157:H7に対する特異的な培養)

稗粒腫

新生児の顔面に生じる真珠様の小嚢胞

臨床的評価

多形紅斑

淡紅色斑が対称性に四肢から生じ,その後,退色した中心部周囲に淡紅色の輪を伴った古典的な標的様病変に進行する

ときに口腔粘膜病変,そう痒

臨床的評価

汗疹(あせも)

赤色の小隆起,またはときに小水疱

年少の幼児で最もよくみられるが,特に高温高湿度の気候ではいずれの年齢でも発現しうる

臨床的評価

中毒性紅斑

平坦な赤色斑(通常,中心に面皰様の白色隆起を伴う)であり,新生児の最大半数に発現する

生後5日以降はまれにしか発現せず,通常7~14日で消失する

臨床的評価

新生児ざ瘡

新生児の顔面に生じる赤色隆起,ときに中心に白色点を伴う

通常,生後2~4週に生じるが,生後4カ月まで発現することがあり,12~18カ月持続しうる

臨床的評価

ばら色粃糠疹

ときにウイルス性上気道感染症の前駆症状

典型的には,体幹または四肢近位部に単一でそう痒を伴う2~10 cmの赤色卵円形のヘラルドパッチ(初発疹)として始まる

ヘラルドパッチの発現後7~14日に体幹にピンク色または赤色で薄片状かつ卵円形の発疹の大きな斑が生じ,ときに特徴的なクリスマスツリー様の分布を示す

臨床的評価

*これは,ワクチン接種のため現在はまれであるが,ワクチン未接種の小児では考慮すべきである。