肝障害を伴う主な感染症

肝障害を伴う主な感染症

疾患または微生物

臨床像

ウイルス

サイトメガロウイルス

新生児:肝腫大,黄疸,先天異常

成人:肝炎を伴う伝染性単核球症様の疾患;輸血後に起こりうる

エプスタイン-バーウイルス感染症

伝染性単核球症

5~10%では黄疸を伴う臨床的な肝炎,90~95%では無症状の肝病変

若年成人ではときに重度となる急性肝炎

SARS-CoV-2感染症(COVID-19)(1)

アミノトランスフェラーゼ値の軽度上昇

ウイルスの直接感染が肝機能障害の一因となる

疾患の重症度と相関するが,無症候性感染でも生じる可能性がある

単純ヘルペスウイルス

無黄疸性肝炎(anicteric hepatitis),通常は易感染性患者にみられる(ただし免疫能が正常な患者にも起こりうる)

大半で発熱,50%で発疹

急性肝炎,しばしば重症化する

黄熱

黄疸,全身毒性,出血

炎症反応をほとんど伴わない肝壊死

その他

肝感染症(ときに,エコーウイルスまたはコクサッキーウイルス感染症水痘風疹麻疹による)

細菌

放線菌症

進行性の壊死性膿瘍を伴う肝臓の肉芽腫性反応

化膿性膿瘍*

門脈膿血症,胆管炎,または血行性もしくは直接進展による重篤な感染症がみられ,様々な微生物が原因となるが,特にグラム陰性菌と嫌気性菌が多い

体調は悪く,重篤感があるが,まだ肝機能障害は軽度

結核

肉芽腫病変を伴う肝障害(一般的,通常は無症状);黄疸(まれ)

アルカリホスファターゼ値が不釣り合いに上昇

その他

多数の全身性感染症でみられる軽微な限局性の肝炎(一般的,通常は無症状)

真菌

ヒストプラズマ症

石灰化を伴って治癒する肝臓および脾臓の肉芽腫(通常は無症状)

その他

ときにクリプトコッカス症コクシジオイデス症ブラストミセス症,その他の感染症で肉芽腫病変が起こる

原虫

アメーバ症*

重要な疾患であり,しばしば明らかな赤痢を伴わない

通常,液状変性を伴う大きな単一の膿瘍

全身症状,圧痛を伴う肝腫大,驚くほど軽度の肝機能障害

マラリア

流行地域では肝脾腫の一般的な原因の1つである

活動性の溶血がない限り,黄疸は認められないか軽度である

トキソプラズマ症

経胎盤感染

新生児:黄疸,中枢神経系,その他の全身症状

内臓リーシュマニア症

寄生虫の網内系への浸潤,肝脾腫

蠕虫

回虫症

成虫による胆道閉塞,幼虫による実質性肉芽腫

肝吸虫症

胆道への寄生,胆管炎,結石,胆管癌

エキノコックス症

単一または複数の包虫嚢胞がみられ,通常は辺縁が石灰化しており,大きいこともあるが,無症状のことが多く,肝機能を障害しない

腹腔内または胆道内に破裂することがある

肝蛭症

急性:圧痛を伴う肝腫大,発熱,好酸球増多

慢性:胆管の線維化,胆管炎

住血吸虫症

虫卵に対する門脈周囲の肉芽腫性反応に,進行性の肝脾腫,パイプ軸線維症(pipestem fibrosis),門脈圧亢進症,および静脈瘤を伴う

肝細胞機能は保たれる;真の肝硬変ではない

トキソカラ症

内臓幼虫移行症

肉芽腫を伴う肝腫大,好酸球増多

スピロヘータ

レプトスピラ症

急性の発熱,極度の疲労,黄疸,出血,腎障害

肝壊死(重度の黄疸にもかかわらず,しばしば軽度)

梅毒

先天性:新生児の肝脾腫,線維化

後天性:第2期では様々な程度の肝炎,第3期では不整な瘢痕を伴うゴム腫

回帰熱

ボレリア感染症

全身症状,肝腫大,ときに黄疸

*アメーバに対する血清学的検査と直接の経皮的膿瘍穿刺により,アメーバ症と鑑別する。

*アメーバに対する血清学的検査と直接の経皮的膿瘍穿刺により,アメーバ症と鑑別する。

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