舟状骨骨折

執筆者:Danielle Campagne, MD, University of California, San Francisco
レビュー/改訂 2021年 1月
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舟状骨骨折は通常,手関節の過伸展により起こる。初期のX線では認められないことがある。合併症が重度のものとなる可能性がある。

骨折の概要も参照のこと。)

舟状骨は最も損傷を受けやすい手根骨である。舟状骨骨折は通常,手関節の過伸展により起こり,典型的には伸ばした手から落ちる転倒時に生じる。舟状骨近位への血液供給を妨害する可能性がある。したがって,初期治療が適切な場合でも骨壊死が一般的な合併症であり,生活に支障を来す変形性手関節症の原因になりうる。

症状と徴候

手関節橈側に腫脹および圧痛がある。このような症状がみられる場合,舟状骨骨折を考慮すべきである。より特異的な徴候としては以下のものがある:

  • 母指の軸方向の圧迫に伴う疼痛

  • 抵抗に逆らった手首の回外に伴う疼痛

  • 特に,手関節の尺側への屈曲時のタバコ窩の圧痛

タバコ窩は橈骨のすぐ遠位側の,長母指伸筋腱,短母指伸筋腱,および長母指外転筋腱の間に触知できる。

診断

  • 単純X線

  • MRI

  • 舟状骨骨折が疑われ画像検査で診断がつかない場合は,母指スパイカによる副子固定およびX線でのフォローアップによる推定治療

最初に単純X線(前後像,側面像,および斜位像)を撮影するが,正常であることが多い。最近のメタアナリシスでは,大半の症例集積研究における単純X線の偽陰性率は6~18%であった(1)。

X線が正常であるが依然骨折が疑われる場合,MRIを施行してもよい。MRIは,急性期の状況でCTまたは骨シンチグラフィーより精度が高いため,舟状骨骨折の診断に用いられることが増えてきている(1)。

臨床的に骨折が疑われ画像検査で診断がつかない場合は,骨折と推定して治療し,母指スパイカによる副子固定を行う。受傷から1週間後に再検査を行うべきである。受傷から1週間後に診察して患者が依然疼痛を訴えるか,または手関節に圧痛がある場合,単純X線撮影を再施行する。

パール&ピットフォール

  • 臨床所見から舟状骨骨折が示唆される場合,X線で骨折が明らかでない場合でも,MRIを行うか,または母指スパイカによる副子固定を行う。

母指スパイカによる副子固定

診断に関する参考文献

  1. 1.Carpenter CR, Pines JM, Schuur JD, et al: Adult scaphoid fracture.Acad Emerg Med 21 (2):101–121, 2014.doi: 10.1111/acem.12317

治療

  • 母指スパイカによる副子固定

多くの転位のない骨折は,最長6~8週間装着する母指スパイカによる副子固定により根治的に治療できる。

ときに観血的整復内固定術(ORIF)が必要となる。

要点

  • 舟状骨骨折は通常,手関節の過伸展により起こり,典型的には伸ばした手から落ちる転倒時に生じる。

  • この骨折により舟状骨近位への血液供給が妨げられることがあるため,骨壊死がよくみられ,ときに生活に支障を来す合併症となる。

  • X線前後像,側面像,および斜位像を撮影し,画像検査で正常であるか診断がつかないが臨床所見から舟状骨骨折が示唆される場合は,MRIを施行するか,母指スパイカによる副子固定を行い,1週間後のX線再施行を手配する。

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