小児の骨端軟骨(成長板)の骨折

執筆者:Danielle Campagne, MD, University of California, San Francisco
レビュー/改訂 2021年 1月
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小児の開いている成長板がしばしば骨折する。診断は単純X線による。治療は,非観血的整復と固定または観血的整復内固定術(ORIF)による。

骨折の概要も参照のこと。)

骨幹端(metaphysis)を近位側の境界,骨端(epiphysis)を遠位側の境界とする骨端軟骨板(成長板)に組織が追加されると,骨が成長する(骨端軟骨板[成長板]の骨折のSalter-Harris分類の図を参照)。成長板が閉じて骨の成長が終わる年齢は骨により異なるが,20歳までに全ての骨で成長板が閉じる(骨端軟骨板[成長板]の図を参照)。

閉じる前の成長板は骨のなかで最も脆弱な部分であるため,力が加わった際にしばしば破綻する。成長板の骨折は骨幹端および/または骨端にまで及ぶことがある;Salter-Harris法では異なる型に分類される。骨折がI型からV型に進むに従い,成長障害のリスクが高まる。英語での型の有用な記憶法は,以下のSALTRである:

  • Salter I:S = Straight(骨折線が成長板をまっすぐ通って進む)

  • Salter II:A = Above(骨折線が成長板の上方へ伸びる,または成長板から離れて伸びる)

  • Salter III:L = Lower(骨折線が成長板の下方へ伸びる)

  • Salter IV:T = Through(骨折線が骨幹端,成長板,および骨端を通過して伸びる)

  • Salter V:R = Rammed(成長板が押しつぶされている)

成長板だけでなく骨端も含む損傷(Salter III型およびIV型)または成長板を圧縮する損傷(Salter V型)の患児は,予後不良の傾向がある。

骨端軟骨板(成長板)の骨折のSalter-Harris分類

I~IV型は骨端軟骨の離解であり,成長板が骨幹端から分離する。II型が最も頻度が高く,V型が最も頻度が低い。

骨端軟骨板(成長板)

最初の数字はX線で骨化が最初に現れる年齢で,括弧内の数字は癒合が起こる年齢である。

診断

  • 単純X線

成長板上に限局する圧痛および腫脹のある小児,または動けないもしくは患肢に体重をかけられない小児では,成長板骨折を疑う。

単純X線が第1選択の診断検査である。所見では判断が難しい場合,比較のための反対側のX線が役立つことがある。Salter I型およびV型では,比較のための像を用いてもX線が正常にみえることがある。X線が正常にみえるが成長板骨折が疑われる場合,骨折があると想定して副子またはギプスを当て,数日後に再診察する。持続する疼痛および圧痛は成長板の骨折を示唆する。

治療

  • 骨折に応じて,非観血的整復(必要な場合)および固定,または観血的整復内固定術(ORIF)

個々の骨折によって異なるが,I型およびII型では通常,非観血的整復で十分である;III型およびIV型ではしばしばORIFが必要となる。

V型の損傷はほぼ必ず成長異常につながるため,V型の患者は小児整形外科医に紹介すべきである。

要点

  • 小児では成長板がより脆弱であるため,他の安定化しつつある構造(例,主要靱帯)より先に成長板が破綻する場合が多い。

  • Salter III型,IV型,およびV型の小児では,I型,II型の小児より予後不良の傾向がある。

  • 骨折が疑われるが受傷側のX線で描出されない場合,受傷していない側の比較のためのX線を考慮する。

  • III型,IV型ではしばしばORIFが必要になる。

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