浅く刺さった釣り針の抜去

執筆者:Matthew J. Streitz, MD, San Antonio Uniformed Services Health Education Consortium
レビュー/改訂 2020年 9月
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釣り針が皮下層に刺さることがある。

浅く刺さった釣り針とは,皮膚にまっすぐ入った釣り針がカーブ部分まで刺さっていない場合を指し,返しのついた先端は皮膚表面と反対側を向いている。深く刺さった釣り針とは抜去の方法が異なる。

適応

  • 皮膚に浅く刺さった釣り針

眼球に刺さった釣り針は専門医が対応すべきである。

禁忌

  • なし

合併症

  • 感染症

  • 慢性の肉芽腫形成

器具

  • ポビドンヨードやクロルヘキシジンなどの消毒液

  • 21Gおよび25G針

  • 10mLシリンジ

  • 1%リドカインなどの局所麻酔薬

  • 抜去方法に応じて,ペンチ,18G針,または30~40cmの頑丈な糸(例,縫合糸)

  • ときに11番のメス刃

  • 非滅菌手袋

関連する解剖

  • まれに,抜去時に考慮に入れなければならない重要な構造(例,神経,血管,腱)の内部または付近に釣り針が刺さってしまうことがある。

体位

  • 十分な照明の下で,患者にとって不快感が少なく,釣り針がよく露出する姿勢をとらせ,硬く平坦な場所に患部を固定する

処置のステップ-バイ-ステップの手順

浅く刺さった釣り針は,直接牽引により抜去するが,それにはいくつかの方法がある。単純にまっすぐ引き抜く方法もあれば,釣り針の返しが組織に引っかかって抜去の妨げにならないように,返しの部分を中空針またはメスの刃で覆う方法もある。どの方法を用いる場合でも以下を行う:

  • 釣り針の突出している部位も含めて,ポビドンヨードまたはクロルヘキシジン液で処置部位を消毒する。

  • 釣り針のカーブの内側にある,釣り針の返しの位置を確認する。

  • 釣り針の刺入部付近に局所麻酔薬を注射する。

単純にまっすぐ引き抜く方法(string法)

  • 釣り針の皮膚に近い部分をペンチで挟むか,輪を作った糸(釣り糸または太い縫合糸)を釣り針のカーブに通し,糸の端を術者の利き手に数回巻きつける。

  • 利き手でない方の母指と中指で釣り針をつかみ,示指で釣り針を皮膚に数ミリ押し込むことで,組織から返しの部分を外す。

  • 返しの部分が外れたら,ペンチまたは糸を使って釣り針を強く引き抜く。String法(釣り針の抜去:string法の図を参照)では,しばしば釣り針が勢いよく飛び出るため,術者とその場にいる人を保護する対策を講じる。

釣り針の抜去:string法

1:輪にした糸(釣り糸または太い縫合糸)を釣り針のカーブに通し,糸の端を術者の利き手に巻きつける。2:利き手ではない方の母指と中指で釣り針をつかみ,示指で釣り針を皮膚に数ミリ押し込むことで,組織から返しの部分を外す。3:返しの部分が外れたら,ペンチまたは糸を使って釣り針を強く引き抜く。しばしば釣り針が勢いよく飛び出るため,術者とその場にいる人を保護する対策を講じる。

針で覆う方法

  • ショートベベルの18G針を,釣り針の軸と平行に釣り針の刺入部に挿入し,ベベルで返しの尖った先端を覆う。そして,返しの部分を覆った状態で釣り針を引き抜く(釣り針の抜去:針で覆う方法の図を参照)。

  • 別の方法:11番のメス刃の先端を挿入して返しの部分を覆い,引っかかった皮下組織から返しを外す。

釣り針の抜去:針で覆う方法

十分な局所麻酔を施した後,ショートベベルの18G針を釣り針の軸と平行に釣り針の刺入部に挿入し,ベベルで返しの尖った先端を覆う(左)。そして,返しの部分を覆った状態で釣り針を引き抜く(右)。

釣り針を抜去した後

アフターケア

  • 創傷を乾燥した清潔な状態に保ち,48時間後にドレッシング材を除去する。

  • 足の創傷では,下肢を挙上し,歩行を1~2日間控えさせる。

  • 疼痛の増強,発赤,腫脹など,感染症を示唆する所見がないか調べる評価のために再受診させる。

  • 易感染性患者でない限り,抗菌薬はルーチンに投与しない。

易感染性患者を除き,抗菌薬のルーチン使用を支持するデータはない。投与する場合は,第1世代セファロスポリン系薬剤またはペニシリナーゼ抵抗性ペニシリンを使用するか,ペニシリン系およびセファロスポリン系薬剤への禁忌がある患者には,クリンダマイシン,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,またはテトラサイクリンを使用する。

注意点とよくあるエラー

  • 全ての刺創と同様に,感染の有意なリスクがある。

アドバイスとこつ

  • 返しを引き抜くときは,ゆっくりと着実に引き,ひねらずまっすぐに皮膚から引き抜く。先端が弯曲した鉗子が最も望ましいが,これは先端を皮膚に当てても持ち手が皮膚から十分離れており,把持しやすいからである。

  • 爪の下の組織に刺さった釣り針は,抜去する前に指ブロックを行う。症例によっては,釣り針を露出するために爪の全体または一部を切除する必要がある。

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