高齢者における薬力学

執筆者:J. Mark Ruscin, PharmD, FCCP, BCPS, Southern Illinois University Edwardsville School of Pharmacy;
Sunny A. Linnebur, PharmD, BCPS, BCGP, Skaggs School of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, University of Colorado
レビュー/改訂 2018年 12月
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    薬力学は,薬物が生体に及ぼす作用,または薬物に対する生体の反応と定義され,受容体結合,受容体後の作用,および化学的相互作用により影響を受ける(薬物-受容体相互作用を参照)。高齢者においては,若年者と比較して作用部位における同程度の薬物濃度の効果(感受性)が,大きかったり小さかったりする可能性がある(薬物反応における加齢の影響の表を参照)。こうした違いは,薬物-受容体相互作用や受容体後の事象の変化,または適応的な恒常性維持反応の変化,およびフレイルな高齢者においては,しばしば臓器の病理学的変化に起因する可能性がある。

    高齢者は,抗コリン薬の作用に特に感受性が高い。多くの薬剤(例,三環系抗うつ薬,鎮静性抗ヒスタミン薬,泌尿器系に対する抗ムスカリン薬,一部の抗精神病薬,アトロピン様作用を有する抗パーキンソン病薬,多くのOTC医薬品の睡眠薬および感冒薬)には抗コリン作用がある。高齢者(最も顕著であるのは認知障害患者)では,これらの薬剤による中枢神経系への有害作用が生じやすく,錯乱や眠気を呈することがある。さらに抗コリン薬は,一般的に便秘,尿閉(特に前立腺肥大症の高齢男性で),霧視,起立性低血圧,口腔乾燥を引き起こす。低用量であっても,これらの薬剤は発汗を抑制することで,熱中症のリスクを増加させることがある。概して高齢者では,可能であれば,抗コリン作用を有する薬剤を回避すべきである。

    表&コラム
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