女性の骨盤腔には女性の上部生殖器(卵巣,卵管,子宮体部,および子宮頸部)が含まれる。卵巣,卵管,および周囲の結合組織(例,子宮広間膜)は付属器と呼ばれる。骨盤腔には腸管,下部尿管,および膀胱も含まれる。骨盤内腫瘤はこれらの構造のいずれからも発生しうる。
骨盤内腫瘤は症状を伴う場合もあれば伴わない場合もあり,内診や画像検査で見つかることもある。骨盤内腫瘤は良性,低悪性度,悪性のいずれもありうる。
女性の骨盤内腫瘤の病因,診断,および治療は,生殖に関するライフステージや状況(初経前,妊娠可能年齢,妊娠,または閉経)によって異なる。ここでは,小児と初経前の青年にみられる骨盤内腫瘤について考察する。
女児の骨盤内腫瘤の病因
小児では,女性生殖器で最も頻度の高い腫瘤の種類が年齢層によって異なる(1)。
新生児および乳児では,子宮内でまたは生後数カ月の間に,母体由来のホルモンにより嚢胞の発生が刺激されると,卵胞嚢胞が発生することがある。胎児の嚢胞は胎児の超音波検査で検出されることがある(2)。
思春期前の女児では,骨盤内腫瘤はまれである。卵巣腫瘤は卵胞嚢胞である場合もあれば,まれに良性または悪性の腫瘍である場合もある。小児の卵巣腫瘍の中で最も頻度の高い種類は,性腺芽腫や成熟奇形腫などの胚細胞腫瘍であり,良性の上皮性腫瘍(例,漿液性および粘液性嚢胞腺腫)も発生することがある(3)。悪性腫瘍としては,未熟奇形腫,胚細胞腫,顆粒膜細胞腫,セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍などがある。一部の腫瘍はホルモン活性があり,良性の性索間質性腫瘍(莢膜細胞腫・線維種)のように早発思春期を引き起こすことがある。思春期前の骨盤内腫瘤のその他の原因は,傍卵管嚢胞(例,中腎管または子宮広間膜の嚢胞)または傍卵巣嚢胞である。
思春期に,生殖器の先天異常により月経血の排出が妨げられると,腟留血症(血液により腟が拡張する)または子宮留血症(血液により子宮が拡張する)が発生することがある。
骨盤内炎症性疾患は思春期前の女児ではまれであるが,起こる可能性があり,卵管卵巣膿瘍または卵管留水症を合併することがある。
病因論に関する参考文献
1.American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Practice Bulletins—Gynecology.Practice Bulletin No. 174: Evaluation and Management of Adnexal Masses. Obstet Gynecol.2016 (reaffirmed 2021);128(5):e210-e226.doi:10.1097/AOG.0000000000001768
2.Zampieri N, Borruto F, Zamboni C, Camoglio FS: Foetal and neonatal ovarian cysts: a 5-year experience. Arch Gynecol Obstet.2008;277(4):303-306.doi:10.1007/s00404-007-0483-5
3.Birbas E, Kanavos T, Gkrozou F, Skentou C, Daniilidis A, Vatopoulou A: Ovarian Masses in Children and Adolescents: A Review of the Literature with Emphasis on the Diagnostic Approach. Children (Basel).2023;10(7):1114.Published 2023 Jun 27.doi:10.3390/children10071114
女児の骨盤内腫瘤の評価
病歴
一般的な病歴を聴取し,乳児では出生歴および母親の妊娠・分娩歴を含める。がん(特に卵巣がん)の家族歴が重要である。親(または養育者)および年齢に応じて小児から病歴を聴取する。
現病歴の聴取には,腫瘤に関連する症状(例,疼痛,圧迫感,性器出血,発熱)の有無を含める。
システムレビュー(review of systems)では,可能性のある原因の症状として,以下のようなものがないか検索すべきである:
身体診察
一般身体診察を行う。腹部を評価して,腹部膨隆,腫瘤,腹水,圧痛,および腹膜刺激徴候がないか確認する。
小児の内診が必要な場合は,何が起こりうるのかを親と小児が把握でき,小児と医師との間に信頼関係が構築できるよう,親と小児に対して診察に関する十分な説明を行うべきである。診察の目標は,小児に恐怖や不必要な不快感を与えることなく,必要な情報を得ることである。
外性器,会陰部,および鼠径部の診察では,出血,分泌物,皮下出血,または損傷に注意すべきである。
警戒すべき事項(Red Flag)
以下の所見には特に注意が必要である:
腫瘍マーカーが上昇している患者に付属器腫瘤があり,それが超音波検査で悪性腫瘍の特徴を示している:悪性腫瘍の可能性
帯下,発熱,悪寒,下腹部の圧痛,および/または性器損傷の徴候がある:骨盤内感染症の可能性(卵管卵巣膿瘍を伴う可能性や性的虐待の可能性あり)
所見の解釈
検査
小児では,典型的には内診を制限し,骨盤内腫瘤の評価には画像検査を施行する。幼児および思春期前の青年では,経腟超音波検査よりも経腹的超音波検査の方が望ましい。超音波検査で腫瘤の大きさ,位置,硬さが明確に捉えられなければ,別の画像検査(典型的にはMRI)が必要になることがある。
徴候および症状が骨盤内感染症と一致する場合は,血算を行う。腟分泌物の検体は,小児に適した方法を用いて,腟鏡診なしで採取することができる。その検体で腟の一般的な細菌感染症またはカンジダ症について培養を行う。性的虐待が疑われる場合,核酸増幅検査(NAAT)を行う;NAATでは淋菌感染症とクラミジア感染症の両方を検出できる。
早発思春期の徴候がみられる場合は内分泌学的評価が必要となる。卵巣腫瘤を有し,非上皮性腫瘍が疑われる患者では,腫瘍マーカー(例,α-フェトプロテイン,乳酸脱水素酵素,インヒビン)を測定する。
女児の骨盤内腫瘤の治療
乳児または小児における骨盤内腫瘤は,病因に基づいて管理する。
一部の付属器腫瘤は安全にモニタリングすることが可能であり,なかには自然に消失するものもある(例,卵胞嚢胞)。
画像検査または腫瘍マーカーに基づいて良性もしくは悪性の腫瘍が疑われる場合,または付属器捻転の可能性が高い場合は,手術が必要である(1)。可能な場合は,妊孕性温存手術が望ましい(2)。
月経が起こるようにするために,生殖器の先天異常に対しても手術が必要になることがある。
治療に関する参考文献
1.Adnexal Torsion in Adolescents: American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG) Committee Opinion No, 783. Obstet Gynecol.2019;134(2):e56-e63.doi:10.1097/AOG.0000000000003373
2.Delehaye F, Sarnacki S, Orbach D, et al: Lessons from a large nationwide cohort of 350 children with ovarian mature teratoma: A study in favor of ovarian-sparing surgery. Pediatr Blood Cancer.2022;69(3):e29421.doi:10.1002/pbc.29421
要点
小児で最もよくみられる骨盤内腫瘤の種類は,年齢層によって異なる。
骨盤内腫瘤は症状を伴うこともあれば伴わないこともあり,また良性の場合も悪性の場合もある。
母体由来のホルモンによる刺激のため,新生児および乳児(または胎児にさえも)に卵胞嚢胞が発生することがある。
胚細胞腫瘍,特に成熟奇形腫は,小児における最も一般的な種類の卵巣腫瘍である。
骨盤内腫瘤が疑われる小児は画像検査で評価する;幼児または思春期前の青年では,経腟超音波検査よりも経腹的超音波検査が望ましい。



