出生前遺伝カウンセリング

執筆者:Jeffrey S. Dungan, MD, Northwestern University, Feinberg School of Medicine
Reviewed ByOluwatosin Goje, MD, MSCR, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2024年 1月 | 修正済み 2024年 7月
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出生前遺伝カウンセリングは,親になる希望がある全ての個人に対して提供されるものであり,理想的には受胎前に遺伝性疾患の危険因子を評価するものである。さらに,出生前カウンセリングでは,先天異常の他の原因発生の予防に役立つ予防策(例,催奇形因子の回避,葉酸の補充,慢性疾患の管理)について,カップルに情報が提供される。

遺伝カウンセリング時に提示する情報は,不安を抱えたカップルが理解できるよう,できるだけ簡潔に,非指示的に,かつ専門用語を用いないようにすべきである。何度か繰り返す必要がある。両親に2人きりの時間を与え,質問を整理させるべきである。両親に,母体の高齢,繰り返す自然流産,神経管閉鎖不全児の分娩既往,トリソミー児の分娩既往など,遺伝学的異常に関連している可能性のある多くの一般的問題に関するその他の情報(例,American College of Obstetricians and Gynecologists: Genetic Disorders and Pregnancy)について知らせる場合がある(妊娠中の合併症の危険因子を参照)。

将来親になりうる多くのカップル(例,危険因子が存在するか疑われるカップル)にとって,情報提供および検査の選択肢提示のための遺伝専門医への紹介が有益となる。遺伝学的異常の危険因子を有する両親には,起こりうる結果と遺伝学的評価の選択肢について助言が与えられる。検査により疾患が同定された場合は,生殖に関する選択肢について話し合いがもたれる。

遺伝性疾患のあるカップルに対する受胎前の生殖に関する選択肢としては,以下のものがある:

着床前遺伝学的検査(PGT)は,体外受精により作成された胚を移植する前に,その胚の遺伝的欠陥を検出するために用いられる。パートナーのどちらかで特定のメンデル遺伝病または染色体異常のリスクが高い場合に施行されることがある。

受胎後の生殖に関する選択肢としては,以下のものがある:

  • 先天異常に関する出生前検査

  • 遺伝性疾患が存在する場合は,妊娠中絶

  • 分娩時により高度の新生児ケアを受けられるよう,三次医療施設への紹介

遺伝医学の一般原則も参照のこと。)

遺伝性疾患または先天異常の危険因子

全ての妊娠において,遺伝学的異常のリスクが多少は存在する。出生時の発生率は以下の通りである(1):

  • 数的または構造的染色体異常が0.5%

  • 単一遺伝子による疾患(メンデル遺伝病)が1%

  • 複数遺伝子(多遺伝子性)による疾患が1%

自然流産または死産では異常の割合がより高い。

単一の器官系を侵す形成異常(例,神経管閉鎖不全,大半の先天性心疾患)大半は,多遺伝子性または多因子性(すなわち,環境因子によっても影響される)の遺伝によって生じる。

胎児に染色体異常が伴うリスクは,少数の特殊なもの(例,45,X;三倍体;de novoの染色体再構成)を除き,以前に染色体異常(認識されていたか否かにかかわらず)の胎児や子をもったカップルの大半で増大する。以前にダウン症候群の子をもったカップルでは,染色体異常の種類に応じて再発リスクが上昇することがある。不分離による21トリソミー(最も頻度が高い)では,21トリソミーを有する胎児を再びもつリスクは,女性パートナーが35歳未満の場合には3.5倍,35歳以上では1.7倍高くなる(2)。

染色体異常は以下の場合に,存在する可能性がより高い:

少数のカップルは,胎児の染色体異常のリスクが上昇する染色体異常を有していることがある。カップルに特定の転座や逆位(遺伝子が破壊されず遺伝物質の喪失や付加もない状態)など,無症状の染色体異常(例,均衡型の異常)がある場合,それは認識されていないことがある。カップルに繰り返す自然流産,不妊症,または先天異常のある子どもがある場合,均衡型の染色体再構成の存在を疑うべきである。

母体年齢が高くなるにつれて,減数分裂中の不分離率(染色体が正常に分離しない)が上昇することで,胎児に染色体異常が発生する可能性が高くなる。(母体年齢と染色体異常のある子を出産するリスクの表を参照のこと。)母親の年齢に応じた頻度の高い異数性のリスクは以下の通りである(7):

  • 35歳未満:21トリソミー(1/591),18トリソミー(1/2862),および13トリソミー(1/4651)

  • 35歳以上:21トリソミー(1/100),18トリソミー(1/454),および13トリソミー(1/1438)

母体の高齢に起因する染色体異常は,大半が染色体の過剰(トリソミー),特に21トリソミー(ダウン症候群)である。父親の年齢が35~50歳であると,子に軟骨無形成症など,顕性(優性)遺伝子の病的バリアント(かつては突然変異[mutation]と呼ばれていた)が生じるリスクが増大する(8)。

表&コラム
表&コラム

一部の染色体異常は顕微鏡では観察できず,従来の核型分析では検出されない。顕微鏡で検出できない染色体異常は,ときにコピー数バリアント(copy number variant)と呼ばれ,年齢に関連した不分離の機序とは関係なく生じる。この種の異常の厳密な発生率は不明であるが,構造的異常を有する胎児で高頻度でみられる。多施設共同研究では,臨床的に重要なコピー数バリアントの発生頻度が核型正常の胎児で1%(検査の適応とは無関係),構造的異常を有する胎児で6%であることが証明された(9)。

1世代にとどまらない家族歴が認められる場合は,常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患が疑われ,常染色体遺伝性疾患は男女差なく発生する。片方の親が常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患をもつ場合,この疾患が子に伝えられるリスクは50%である。

常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患が発症するには,子が両親から同じ病的遺伝子バリアントを受け継がなければならない。両親がヘテロ接合体(キャリア)の場合があり,もしそうであれば発症はしていないが異常遺伝子を保有している(表現型は正常)。平均すると,両親ともにキャリアである場合,子(性別は問わない)が病的遺伝子バリアントのホモ接合体となって発症するリスクは25%であり,50%はヘテロ接合体となり,残り25%は発症せずキャリアにもならない(遺伝子型が正常)可能性が高い。片方の親のみがキャリアである場合,子がヘテロ接合体となるリスクは50%であり,遺伝子型が正常である確率も50%である。同胞のみが罹患し,他の近親者は罹患していない場合は,常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患を疑うべきである。両親が同じ常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)を有する可能性は,両親が近親結婚の場合に増加する。

女性にはX染色体が2つあるが,男性は1つしかもたないため,X連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)疾患は男性が病的遺伝子バリアントを有すれば必ず発現する。このような疾患は通常,表現型が正常なヘテロ接合体(キャリア)の女性を介して伝えられる。したがって,キャリア女性の息子では,疾患をもつリスクは50%,娘ではキャリアとなるリスクは50%である。罹患した男性は遺伝子を息子に伝えることはないが,全ての娘に伝えるため,娘はキャリアとなる。罹患していない男性がその遺伝子を伝えることはない。

先天性疾患の危険因子に関する参考文献

  1. 1.Korf BR, Pyeritz RE, Grody WW: 3-Nature and frequency of genetic disease.In Emery and Rimoin's Principles and Practice of Medical Genetics and Genomics, 7th ed.Academic Press, 2019, Pages 47-51,ISBN 9780128125373,https://doi.org/10.1016/B978-0-12-812537-3.00003-2

  2. 2.Sheets KB, Crissman BG, Feist CD, et al: Practice guidelines for communicating a prenatal or postnatal diagnosis of Down syndrome: recommendations of the national society of genetic counselors. J Genet Couns 20(5):432-441, 2011.doi:10.1007/s10897-011-9375-8

  3. 3.Hardy K, Hardy PJ, Jacobs PA, et al: Temporal changes in chromosome abnormalities in human spontaneous abortions: Results of 40 years of analysis. Am J Med Genet A 170(10):2671-2680, 2016.doi:10.1002/ajmg.a.37795

  4. 4.Donnelly JC, Platt LD, Rebarber A, et al: Association of copy number variants with specific ultrasonographically detected fetal anomalies. Obstet Gynecol 124(1):83-90, 2014.doi:10.1097/AOG.0000000000000336

  5. 5.Reddy UM, Page GP, Saade GR, et al: Karyotype versus microarray testing for genetic abnormalities after stillbirth. N Engl J Med 367(23):2185-2193, 2012.doi:10.1056/NEJMoa1201569

  6. 6.Dalton SE, Workalemahu T, Allshouse AA, et al: Copy number variants and fetal growth in stillbirths. Am J Obstet Gynecol 228(5):579.e1-579.e11, 2023.doi:10.1016/j.ajog.2022.11.1274

  7. 7.Forabosco A, Percespe A, Santucci S: Incidence of non-age-dependent chromosomal abnormalities: a population-based study on 88965 amniocenteses.Eur J Hum Genet 17 (7): 897–903, 2009.doi:10.1038/ejhg.2008.265

  8. 8.Sharma R, Agarwal A, Rohra VK, et al: Effects of increased paternal age on sperm quality, reproductive outcome and associated epigenetic risks to offspring. Reprod Biol Endocrinol 13:35, 2015.Published 2015 Apr 19.doi:10.1186/s12958-015-0028-x

  9. 9.Wapner RJ, Martin CL, Levy B: Chromosomal microarray versus karyotyping for prenatal diagnosis.N Engl J Med 367:2175-2184, 2012.doi:10.1056/NEJMoa1203382

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