網膜剥離

執筆者:Sonia Mehta, MD, Vitreoretinal Diseases and Surgery Service, Wills Eye Hospital, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2022年 4月
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網膜剥離は,感覚網膜がその下の網膜色素上皮層から分離することである。最も一般的な原因は網膜裂孔である(弁状裂孔,またはよりまれであるが,円孔[裂孔原性網膜剥離])。症状は周辺視力または中心視力の低下であり,しばしば視野にカーテンまたは暗い雲が下りるようだと報告される。関連症状として,光視症および飛蚊症の増加などの無痛性の視覚障害がみられることがある。牽引性網膜剥離および漿液性網膜剥離(網膜裂孔を伴わない)が中心視力障害または周辺視力障害を引き起こす。診断は眼底検査による;網膜剥離の存在および種類が眼底検査で不明な場合,超音波検査がその判別に役立つ可能性がある。裂孔原性網膜剥離が急性で中心視力が脅かされる場合は,緊急治療を要する。裂孔原性網膜剥離の治療法としては,網膜裂孔閉鎖(レーザーまたは凍結療法による),強膜内陥術による円孔修復,気体網膜復位術,硝子体切除術などがある。

網膜剥離の病因

剥離には,裂孔原性剥離(網膜裂孔を伴う),牽引性剥離,および漿液性(滲出性)剥離の3種類が存在する。牽引性および漿液性網膜剥離は裂孔/円孔を伴わないため,非裂孔原性と呼ばれる。

裂孔原性網膜剥離は最も頻度が高い。危険因子としては以下のものがある:

  • 近視

  • 白内障手術の既往

  • 眼外傷

  • 網膜格子状変性

  • 網膜剥離の家族歴

牽引性網膜剥離は,線維性の網膜前膜に起因する硝子体網膜牽引により起こりうるものであり,増殖性糖尿病網膜症または鎌状赤血球網膜症で起こることがある。

漿液性網膜剥離は,網膜下腔への滲出液に起因する。原因には,特にフォークト-小柳-原田病における重度のぶどう膜炎,脈絡膜血管腫,および原発性または転移性の脈絡膜癌がある(網膜を侵すがんを参照)。

網膜剥離の症状と徴候

網膜剥離は無痛性である。裂孔原性網膜剥離の初期症状としては,濃いまたは不整形の硝子体浮遊物(特に突然の増加),閃光(光視症),霧視などがある。剥離が進行すると,患者は視野中にカーテン,ベールが降りたように感じたり,視野が薄暗いと感じることが多い。黄斑が侵されると,中心視力が低下する。硝子体出血が同時に起こることがある。牽引性網膜剥離および漿液性(滲出性)網膜剥離は霧視を引き起こしうるが,初期には無症状であることがある。

網膜剥離の診断

  • 散瞳下で倒像眼底検査

以下のいずれかを認めた患者,特にリスク患者では網膜剥離を疑うべきである:

  • 飛蚊症の突然の増加または変化

  • 光視症

  • 視野にカーテンまたはベールが降りたようだと訴える

  • 突然の説明がつかない視力障害

  • 硝子体出血により網膜が遮られている

倒像眼底検査では網膜剥離が明らかとなり,ほぼ全例で網膜剥離の病型を鑑別できる。手持ち式検眼鏡を用いた直像眼底検査では,一部の網膜剥離を見逃すことがあり,それが周辺部にある場合もある。強膜圧迫による倒像眼底検査,眼をごく周辺部に向けさせて行う細隙灯顕微鏡検査,または三面鏡を用いた細隙灯顕微鏡検査のいずれかによる周辺部眼底検査を行うべきである。

硝子体出血(網膜裂孔に起因して起こることがある),白内障,角膜混濁,または外傷により網膜が遮られている場合は,網膜剥離を疑い,Bモード超音波検査を行うべきである。

網膜剥離の治療

  • 網膜裂孔の閉鎖

  • 強膜内陥術

  • 気体網膜復位術

  • 硝子体切除術

網膜裂孔による網膜剥離は,限局性であることも多いが,速やかに治療しなければ網膜全体に広がる可能性がある。網膜剥離が疑われる患者,または診断が確定した患者は緊急に眼科医の診察を受けるべきである

パール&ピットフォール

  • 飛蚊症の突然の増加もしくは変化,光視症,視野にカーテンもしくはベールが降りたようだという訴え,突然の説明がつかない視力障害が生じた場合,または硝子体出血により網膜が遮られている場合は,眼科医に紹介して緊急の倒像眼底検査を行い,網膜剥離の診断をつける。

裂孔原性網膜剥離の治療では,病変の原因および部位に応じて1つまたはそれ以上の方法を用いる。このような方法には,レーザーまたは凍結療法による網膜裂孔の閉鎖がある。強膜内陥術では,シリコン片を強膜に縫い付け,強膜を陥凹させて内側の網膜を押さえつけることにより,硝子体の網膜に対する牽引力を弱める。この手術では,網膜下腔から液を排出することがある。他の治療法として,気体網膜復位術(硝子体内へのガス注入)および硝子体切除術がある。剥離を伴わない網膜裂孔は,レーザー光凝固または経結膜冷凍凝固により閉鎖できる。裂孔原性剥離のほぼ全例は,手術的に復位できる。

硝子体網膜牽引による非裂孔原性剥離は硝子体切除術による治療が可能であり,ぶどう膜炎による滲出性剥離はコルチコステロイドの全身投与,免疫抑制薬(例,メトトレキサート,アザチオプリン,腫瘍壊死因子[TNF]阻害薬)の全身投与に反応することがある。ぶどう膜炎による滲出性剥離には,代替の治療法として眼周囲へのコルチコステロイド注射,コルチコステロイドの硝子体内注射,またはデキサメタゾンの硝子体インプラントがある。原発性および転移性の脈絡膜癌も治療を要する。脈絡膜血管腫は,局所光凝固または光線力学療法に反応することがある。

要点

  • 裂孔原性剥離の危険因子には,近視,白内障手術の既往,眼外傷,および網膜格子状変性がある。

  • 網膜剥離はいずれの病型も最終的には霧視に至る;裂孔原性網膜剥離の初期症状としては,不整形の硝子体浮遊物(特に突然の増加)や閃光(光視症)などがある。

  • 飛蚊症の突然の増加もしくは変化,光視症,視野にカーテンもしくはベールが降りたようだという訴え,突然の説明がつかない視力障害が生じた場合,または硝子体出血により網膜が遮られている場合は,眼科医に紹介して緊急の倒像眼底検査を行い,網膜剥離の診断をつける。

  • 裂孔原性網膜剥離に対しては,網膜裂孔の閉鎖(レーザーまたは凍結療法による),強膜内陥術による裂孔の閉鎖,気体網膜復位術,および/または硝子体切除術による治療を行う。

  • 硝子体網膜牽引による非裂孔原性剥離は硝子体切除術による治療が可能であり,ぶどう膜炎による滲出性剥離はコルチコステロイドの局所もしくは全身投与または免疫抑制薬の全身投与よる治療が可能である。

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