飛蚊症

執筆者:Christopher J. Brady, MD, Wilmer Eye Institute, Retina Division, Johns Hopkins University School of Medicine
レビュー/改訂 2021年 5月
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飛蚊症とは,外界の物体の像とは無関係に視野内を移動する陰影である。

飛蚊症の病態生理

加齢とともに硝子体が収縮し,網膜から分離しうる。この変化が生じる年齢は様々であるが,50~75歳に最も多い。この分離の際,硝子体が網膜に付いたり付かなかったりを繰り返す。この機械的牽引が網膜を刺激し,シグナルが脳に送られ,これが脳で光と解釈される。硝子体が網膜から完全に分離すると,飛蚊症が悪化し,数年にわたって続くこともある。

しかしながら,網膜の牽引が穴(網膜裂孔)をつくることがあり,硝子体液が裂孔の後ろへ流れ出すと,網膜が剥離することがある。網膜剥離はその他の因子によって引き起こされることもある(例,外傷,原発性の網膜疾患)。網膜剥離でよくみられる稲妻のような閃光は,光視症と呼ばれる。光視症は,眼を擦ったときまたは覚醒時に周りを見回したときにも生じうる。

飛蚊症の病因

硝子体性飛蚊症で最も頻度が高い原因は以下のものである:

  • 硝子体の特発性収縮

比較的まれな原因を飛蚊症の主な原因の表に挙げる。

飛蚊症のまれな原因としては,眼内腫瘍(例,リンパ腫)や硝子体炎(硝子体の炎症)などがある。眼内異物は飛蚊症を引き起こしうるが,通常は視力障害,眼痛,または充血などその他の症状を伴う。

表&コラム
表&コラム

飛蚊症の評価

最も重要な目標は重篤な硝子体または網膜の疾患を同定することである。これらの疾患が除外できない場合は,可能であれば常に,眼科医による散瞳下の倒像検眼鏡検査を行うべきである。眼性片頭痛を認識することもまた役に立つ。

病歴

現病歴の聴取では,症状の発症および持続ならびに飛蚊症の形態および量を確かめるとともに,症状が片側性か両側性か,および外傷が先行したかどうかを確認すべきである。飛蚊症について,(光視症にみられるような)稲妻様の閃光または(片頭痛にみられるような)視野を横切るジグザグの線状影と区別するよう患者に試みさせるべきである。重要な関連症状としては,視力障害(およびそれが視野のどこに分布するか)や眼痛などがある。

システムレビュー(review of systems)では,頭痛(眼性片頭痛)や眼の充血(硝子体炎)など,可能性のある原因の症状がないか検討すべきである。

既往歴の聴取では,糖尿病糖尿病網膜症を含む),片頭痛,眼手術,高度近視,注射薬物の使用,および免疫系を侵しうるあらゆる疾患(例,AIDS)に注意すべきである。

身体診察

眼科診察はできるだけ完全に行うべきである。最大矯正視力を測定する。眼を視診して,充血がないか確認する。視野は全ての患者で評価する。しかしながら,ベッドサイドでの検査による視野欠損の同定は非常に感度が低く,欠損部が示せないからといって患者が完全な視野を有することの証拠にはならない。外眼筋運動および対光反射を評価する。充血または眼痛があれば,角膜をフルオレセインで染色し拡大下に観察し,また可能であれば細隙灯顕微鏡検査を行う。眼圧を測定する(眼圧検査)。

眼底検査は眼科診察における最も重要な要素であり,散瞳下で行う。散瞳の際には,まず瞳孔径および対光反射を確実に記録し,通常短時間作用型α作動薬(例,2.5%フェニレフリン)および調節麻痺薬(例,1%トロピカミドまたは1%シクロペントラート)をそれぞれ1滴ずつ点眼する。瞳孔径は点眼後約20分でほぼ最大となる。眼科以外の医師が診察する場合は,直像検眼鏡により眼底検査を行う。眼科医が診察する場合は,網膜,特に辺縁部がよりよく観察できる倒像検眼鏡を用いて眼底検査を行う。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見には特に注意が必要である:

  • 飛蚊症

  • 光視症

  • びまん性または限局性の視力障害(視野欠損)

  • 最近の眼手術または眼外傷

  • 眼痛

  • 赤色反射の消失

  • 網膜所見の異常

所見の解釈

網膜剥離は,突然の飛蚊症の悪化,光視症,またはその他のより特異的な特徴(例,視野欠損,網膜の異常)により示唆される。両側で同調する症状は,眼性片頭痛を示唆するが,患者はしばしば症状が両側性であることに気づきにくい(例,両眼左側の閃輝暗点をしばしば左眼のみの症状と解釈する)。赤色反射の消失は,硝子体の混濁(例,硝子体出血または炎症)を示唆するが,進行した白内障によって引き起こされることもある。視力障害は,硝子体または網膜の機能異常を引き起こす重篤な疾患を示唆する。

検査

眼科医による評価を要する患者には,検査の実施が必要になる場合がある。しかしながら,検査は眼科医によって,または眼科医と相談して選択される。例えば,脈絡網膜炎が疑われる患者では微生物学的検査が必要になる場合がある。

飛蚊症の治療

特発性硝子体性飛蚊症は治療を必要としない。症状を引き起こすその他の疾患は治療する。

要点

  • 飛蚊症自体が重篤な疾患を示すことはまれである。

  • 検査で異常所見が認められた患者には眼科への紹介が必要である。

  • 飛蚊症に伴うその他の症状(例,持続性の閃光,視野欠損,移動するカーテン状の視力障害)があるか,飛蚊症が突然起こった患者では,検査所見にかかわらず,眼科に紹介する必要がある。

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