蟯虫症

(腸蟯虫症;蟯虫感染症)

執筆者:Chelsea Marie, PhD, University of Virginia;
William A. Petri, Jr, MD, PhD, University of Virginia School of Medicine
Reviewed ByChristina A. Muzny, MD, MSPH, Division of Infectious Diseases, University of Alabama at Birmingham
レビュー/改訂 修正済み 2025年 1月
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蟯虫症は,蟯虫(線虫の一種)のヒト蟯虫(Enterobius vermicularis)による腸管感染症である。通常は学齢期の小児に発生するが,家族の成人や養育者,長期療養施設の居住者,および感染したパートナーと性交時に肛門口腔接触をする人でもリスクが高い。主な症状は肛門周囲または腟のそう痒である。診断は,肛門周囲の視診による糸状の虫体の検出または虫卵のセロファンテープ検査による。治療はメベンダゾール,パモ酸ピランテル,またはアルベンダゾールによる。

蟯虫症は世界中で10億人以上が罹患していると推定される。有病率は学齢期の小児で最も高い(例えば,ある研究では欧州の幼稚園児および小学生の有病率が約20%と報告されている)(1)。

大半の症例は学齢期の小児および幼児に発生するため,その家族または養育者は感染リスクが高い。長期療養施設の居住者でもリスクが高くなる。感染したパートナーとの性的な肛門口腔接触を介して伝播する可能性もある。

寄生虫感染症へのアプローチも参照のこと。)

総論の参考文献

  1. 1.Wendt S, Trawinski H, Schubert S, Rodloff AC, Mössner J, Lübbert C.The Diagnosis and Treatment of Pinworm Infection. Dtsch Arztebl Int.2019;116(13):213-219.doi:10.3238/arztebl.2019.0213

蟯虫症の病態生理

蟯虫の虫卵は会陰部に到達してから数時間以内に感染力を獲得する。通常,虫卵が肛門周囲から媒介物(衣類,寝具,家具,敷物,玩具,便座)に移動し,そこから新たな宿主に捕捉されて口に入り,嚥下されることにより寄生が成立する。親指しゃぶりは危険因子である。肛門周囲から口へ指を介して虫卵が運ばれることにより,再寄生(自家感染)が容易に起こる。

蟯虫は下部消化管において2~6週間で成熟する。雌虫は卵を産みつけるために(通常は夜間に)肛門から出て肛門周囲に移動する。内部に虫卵が産みつけられた粘着性のゼラチン状物質,および雌虫の動きが,肛門周囲のそう痒を引き起こす。通常の室温では,虫卵は媒介物上で3週間も生き延びることができる。

蟯虫症の症状と徴候

感染者の大半は症状も徴候も示さないが,一部の患者は肛門周囲にそう痒を覚え,引っ掻くことにより肛門周囲の表皮剥離を来す。皮膚で細菌の二次感染が起こる可能性がある。蟯虫はときに腟に移行し,そう痒および腟炎を引き起こす。まれに,上部女性生殖器を通って上行し,腹膜病変を引き起こす。

そのほかにも多数の病態(例,腹痛,不眠症,痙攣)が蟯虫症に関連付けられてきたが,因果関係がある可能性は低い。虫垂炎の症例において蟯虫による虫垂管腔の閉塞が発見されているが,寄生虫の存在は偶然の可能性がある。

蟯虫症の診断

  • 肛門周囲の診察により虫体,虫卵,またはその両方がないか確認する

蟯虫症の診断は,体長約8~13mmの雌虫(雄虫は平均2~5mm)を,夜の就寝から1~2時間後もしくは朝に肛門周囲で発見すること,またはセロファンテープ上の虫卵を低倍率の顕微鏡で同定することによる。早朝の排便または起床前に1片のセロファンテープで肛門周囲の皮膚のひだを軽く叩いて検体を採取し,テープの粘着面をスライドガラスに張りつけてから顕微鏡で観察する。50 × 30μmの虫卵は薄い殻に包まれた卵円形で,2つ折りになった幼虫が入っている。テープとスライドガラスの間にトルエンを1滴入れると粘着剤が溶け,虫卵の同定の妨げとなるテープ下の気泡を除去できる。必要であればこの手技を連続3日間,毎朝繰り返すべきである。

同様に,腟にそう痒または分泌物がみられる小児で蟯虫症が疑われる場合は(通常は本人かその友人,クラスメート,または家族に最近蟯虫に感染した既往があるため),1片のセロファンテープを腟口に当ててもよい。

ときに,患者の爪の下から採取した検体を調べることで診断を下せることがある。

頻度は低いが,便,尿,または腟分泌物の検体でも虫卵が検出されることがある。

蟯虫症の治療

  • メベンダゾール,パモ酸ピランテル,またはアルベンダゾール

蟯虫症は,ほとんど無害であること,有病率が高いこと,および再寄生がよくみられることから,症候性の感染症のみが治療の適応となる。しかしながら,自分の子供に蟯虫が寄生すると,大半の親が積極的に治療を求める。

メベンダゾール,パモ酸ピランテル,またはアルベンダゾールを単回投与し,2週間後に同量を再投与することで,90%以上の症例で蟯虫を完全に駆除できる(虫卵は完全には駆除できない)。

石炭酸入りのワセリン(carbolated petrolatum)または他の止痒薬クリームもしくは軟膏を肛門周囲に塗布すると,そう痒が緩和することがある。

蟯虫症の予防

生存能力のある虫卵が治療後1週間排出されること,および治療前に環境中に排出された虫卵は3週間生存可能であることから,蟯虫の再寄生がよくみられる。家庭内の複数のメンバーに寄生があることは一般的であり,家族全員の治療が必要になる場合がある。

以下の対策により蟯虫の拡散を予防できる:

  • トイレの使用後,おむつの交換後,および食品の取扱い前に石鹸および温水で手を洗う(最も成功率が高い)

  • 衣服,寝具,および玩具を頻繁に洗濯する

  • 感染者は,皮膚に付いた虫卵を除去するために毎朝シャワーを浴びる

  • 虫卵を除去するため,居住環境に掃除機をかける

  • 性交中の口腔と肛門の接触を避ける

要点

  • 蟯虫症は米国で最もよくみられる蠕虫感染症であり,大半の症例は学齢期の小児または幼児であるが,小児の世話をする成人,感染した小児の家族,長期療養施設の居住者,および性交中に口腔肛門接触をする人にも感染のリスクがある。

  • 蟯虫症が有害となることはまれであるが,再寄生は一般的である。

  • 環境中に排出された虫卵は3週間生き延びる。

  • 肛門周囲を引っ掻いた後,または汚染された衣類やその他の物(例,寝具)に触れた後に口を触ると,虫卵が摂取される可能性がある。

  • 感染者の大半は症状も徴候も示さないが,肛門周囲のそう痒がみられる患者もいる。

  • 蟯虫症の診断は,朝にセロファンテープで採取した虫卵を低倍率顕微鏡で観察して同定することによる;就寝して1~2時間後に,肛門周囲に雌の成虫が現れるのを目撃することによって診断されることもある。

  • 症状がある場合は,メベンダゾール,パモ酸ピランテル,またはアルベンダゾールにより治療する。

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