アスペルギルス症

執筆者:Paschalis Vergidis, MD, MSc, Mayo Clinic College of Medicine & Science
Reviewed ByChristina A. Muzny, MD, MSPH, Division of Infectious Diseases, University of Alabama at Birmingham
レビュー/改訂 修正済み 2023年 9月
v1012068_ja
意見 同じトピックページ はこちら

アスペルギルス症は,通常は下気道を侵す日和見感染症であり,環境中に遍在する糸状菌であるAspergillus属真菌の胞子を吸入することで引き起こされる。胞子は発芽して成長し,菌糸となって血管内に入り,侵襲性感染症になると出血性壊死や梗塞を引き起こす。喘息,肺炎,副鼻腔炎,または急速進行性の全身疾患の症状を呈する可能性がある。診断は画像検査,病理組織学的検査,ならびに検体の染色および培養に基づく。治療はボリコナゾールポサコナゾール,またはイサブコナゾニウムによる。アムホテリシンBの脂質製剤は代替となる治療薬の1つである。真菌球には,外科的切除が必要になる場合がある。

真菌感染症の概要も参照のこと。)

アスペルギルス症の病態生理

侵襲性感染症は通常,胞子の吸入のほか,ときに皮膚の損傷部を介した直接侵入により発生する。

アスペルギルス症の主要な危険因子としては以下のものがある:

  • 長期の好中球減少(典型的には7日を超える)

  • 長期の大量ステロイド療法

  • 臓器移植(特に移植片対宿主病[GVHD]を伴う骨髄移植)

  • 好中球の機能に関する遺伝性疾患(例,慢性肉芽腫症)

Aspergillus属真菌は,過去の肺疾患(例,気管支拡張症腫瘍結核)で生じた肺の空洞,副鼻腔,外耳道(外耳道真菌症)などの開放腔に感染する傾向がある。そのような感染は局所侵襲性および破壊性を示す傾向があるが,ときに全身性の播種を来すこともあり,特に好中球減少またはコルチコステロイドによる免疫抑制のある易感染状態の患者で多い。アスペルギルス症はHIV感染症/AIDS患者にも発生することがある。

A. fumigatusは侵襲性肺感染症の最も一般的な原因である。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症は,A. fumigatusに対する過敏反応であり,これにより真菌の組織侵襲とは無関係の炎症が肺に生じる。

病巣感染(典型的には肺)では,ときに真菌球(アスペルギローマ)が形成されるが,これはもつれた菌糸塊の特徴的な増殖であり,フィブリン滲出物と少数の炎症細胞を伴い,典型的には線維組織で被包される。ときに,その腔の辺縁で局所的な組織侵襲を認めることがあるが,通常は,真菌は腔内に存在し,明らかな局所浸潤を伴うことはない。

ときに慢性型の侵襲性アスペルギルス症も生じるが,特にコルチコステロイドを長期に服用している患者と先天的な食細胞の異常を特徴とする慢性肉芽腫症の患者でよくみられる。

Aspergillus属真菌は,眼の外傷または手術の後や血行性播種により眼内炎を引き起こすこともあり,血管内または心臓内に留置された器具に感染することもある。

原発性表在性アスペルギルス症はまれであるが,熱傷,閉鎖性ドレッシングの下,角膜外傷(角膜炎)後,または副鼻腔,口,鼻,外耳道などにおいて起こることがある。

アスペルギルス症の症状と徴候

急性の侵襲性肺アスペルギルス症は,通常は咳嗽を引き起こし,しばしば喀血,胸膜性胸痛,および息切れもみられる。侵襲性肺アスペルギルス症を無治療で放置すると,急速進行性で最終的には死に至る呼吸不全を来すことがある。

慢性肺アスペルギルス症は,重大な感染症であるにもかかわらず,軽度で進行の緩徐な症状で発症する。

肺外の侵襲性アスペルギルス症は重度の易感染状態にある患者で発生する。皮膚病変,副鼻腔炎,または肺炎で始まるが,血行性播種により肝臓,腎臓,脳,その他の組織に波及することがあり,その場合はしばしば急速に死に至る。

副鼻腔のアスペルギルス症は,アスペルギローマを形成する場合や,アレルギー性真菌性副鼻腔炎を引き起こす場合,発熱,鼻炎,および頭痛を伴って緩徐に侵襲する慢性の肉芽腫性炎症を来す場合がある。鼻または副鼻腔部分の壊死性皮膚病変,口蓋または歯肉の潰瘍形成,海綿静脈洞血栓症の徴候,肺病変,または播種性病変などがみられる。

アスペルギローマは,通常は無症状であるが,軽度の咳嗽や,ときに喀血を引き起こすこともある。

アスペルギルス症の診断

  • 通常は真菌培養および組織検体の病理組織学的検査

  • 血清および/または気管支肺胞洗浄液のガラクトマンナン抗原検査

Aspergillus属真菌は環境中で一般的に存在することから,喀痰培養が陽性となっても,環境汚染や慢性肺疾患患者における非侵襲的な定着に起因することもあり,培養陽性の判定に意義があるのは,主として免疫抑制または好中球減少により感受性が亢進している患者や典型的な画像所見から強く疑われる患者から採痰された場合である(1)。これとは逆に,アスペルギローマまたは侵襲性肺アスペルギルス症の患者では,しばしば喀痰培養が陰性となる。

胸部X線撮影を行うが,胸部CTの方がはるかに感度が高く,高リスク(すなわち好中球減少のある)患者ではCTを選択すべきである。副鼻腔感染が疑われる場合,副鼻腔のCTを施行する。いずれにおいても空洞性病変内の移動性真菌球が特徴的であるが,大部分の病変は限局性で充実性である。ときに画像検査により,暈徴候(結節を淡い陰影が取り囲む),または壊死病変中の空洞形成が検出される。びまん性汎発性肺浸潤影が一部の患者で認められる。

診断確定には,組織検体の培養および病理組織学的検査が通常必要であり,病理組織学的検査は侵襲性感染を定着と鑑別するのに役立つ。肺からの検体は,典型的には気管支鏡検査または経皮針生検で採取し,副鼻腔からの検体は前検鼻法で採取する。培養は時間を要し,病理組織学的検査は偽陰性の可能性があるため,治療に関する決定の大半は疑いの強い臨床所見に基づく。血液培養は,まれな心内膜炎症例であっても,ほぼ必ず陰性である。アスペルギルス(Aspergillus)心内膜炎では,しばしば大きな疣贅から血管を閉塞しうる大きな塞栓子が放出され,それが診断のための検体となりうる。心エコー検査,特に経食道心エコー検査では,血液培養が陰性でも疣贅と一致する移動性の心臓内腫瘤が描出される可能性がある。

血清アスペルギルス(Aspergillus)ガラクトマンナンは,特異度は高いが,早期では大半の症例で十分な同定感度が得られない。侵襲性肺アスペルギルス症では,血清よりも気管支肺胞洗浄液を用いたガラクトマンナン抗原検査の方が感度が高く,生検が禁忌となる血小板減少を有する患者では,この検査が診断上唯一の選択肢となることが多い。市販のPCR検査も利用可能である。

診断に関する参考文献

  1. 1.Patterson TF, Thompson GR 3rd, Denning DW, et al: Practice guidelines for the diagnosis and management of aspergillosis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis 63(4):e1–e60, 2016.doi: 10.1093/cid/ciw326

アスペルギルス症の治療

  • ボリコナゾール

  • ポサコナゾール

  • イサブコナゾニウム

  • アムホテリシンB(脂質製剤を含む)

  • 救済療法としてキャンディン系薬剤

  • ときにアスペルギローマに対する手術

抗真菌薬も参照のこと。)

侵襲性感染には,通常はボリコナゾール(1),ポサコナゾール(2),またはイサブコナゾニウム(3)による積極的な治療が必要である。ポサコナゾールイサブコナゾニウムは,ボリコナゾールと比べて,効力は同等で,有害作用はより少ない(2, 3)。アムホテリシンB(特に脂質製剤)も効果的であるが,より毒性が強い(4)。一部の症例では,イトラコナゾール(フルコナゾールではない)が効果的となりうる。糸状菌に活性を示すアゾール系薬剤かアムホテリシンBと併用して,カスポファンギンやその他のキャンディン系薬剤を救済療法として使用することもある。一部の患者では,ボリコナゾールとキャンディン系薬剤による多剤併用療法が効果的となりうる。

通常,治療には免疫抑制状態の解消が不可欠である(例,好中球減少の回復,コルチコステロイドの中止)。好中球減少が再発すれば,再燃の頻度が高くなる。

アスペルギローマは,全身的抗真菌療法を必要とせず,また,奏効しないが,局所的な影響,特に喀血のため,切除が必要になる場合がある。

高リスク患者(移植片対宿主病の患者と急性骨髄性白血病により好中球減少を来した患者)には,ポサコナゾールまたはイトラコナゾールの予防投与を考慮できる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Herbrecht R, Denning DW, Patterson TF, et al: Voriconazole versus amphotericin B for primary treatment of invasive aspergillosis.N Engl J Med 347(6):408–415, 2002.doi: 10.1056/NEJMoa020191

  2. 2.Maertens JA, Rahav G, Lee DG, et al: Posaconazole versus voriconazole for primary treatment of invasive aspergillosis: A phase 3, randomised, controlled, non-inferiority trial.Lancet 397(10273):499–509, 2021. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00219-1.Clarification and additional information.Lancet 398(10299):490, 2021.

  3. 3.Maertens JA, Raad II, Marr KA, et al: Isavuconazole versus voriconazole for primary treatment of invasive mould disease caused by Aspergillus and other filamentous fungi (SECURE): A phase 3, randomised-controlled, non-inferiority trial.Lancet 387(10020):760–769, 2016.doi: 10.1016/S0140-6736(15)01159-9

  4. 4.Patterson TF, Thompson GR 3rd, Denning DW, et al: Practice guidelines for the diagnosis and management of aspergillosis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis 63(4):e1–e60, 2016.doi: 10.1093/cid/ciw326

要点

  • 糸状菌であるAspergillus属真菌の胞子を吸入することにより,限局性または侵襲性の肺感染が生じるほか,まれに,重度の易感染性患者では播種性感染(例,脳)もみられる。

  • 侵襲性アスペルギルス症は,好中球減少またはコルチコステロイドによる免疫抑制がある易感染状態の患者で頻度が高いが,HIV感染症/AIDS患者でも起こりうる。

  • 一般的に組織検体の培養および病理組織学的検査が必要となるが,肺感染症の診断には気管支肺胞洗浄液でのガラクトマンナン抗原検査が役立つ可能性がある。

  • 侵襲性感染症はボリコナゾール,ポサコナゾール,またはイサブコナゾニウムで治療し,アムホテリシンBが代替薬である。

  • アスペルギローマには抗真菌薬は必要でなく,投与しても反応しないが,出血やその他の症状を引き起こしている場合は,外科的切除を考慮する。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Infectious Diseases Society of America: Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Aspergillus (2016)

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
iOS ANDROID
iOS ANDROID
iOS ANDROID