甲状腺結節は甲状腺内部の良性または悪性の腫瘍である。一般的にみられ,加齢に伴い増加傾向を示す。
(甲状腺機能の概要も参照のこと。)
報告されている発生率は,評価方法により幅がある。中高年では触診により約5%で結節が判明する。超音波検査および剖検による研究では,高齢者の約50%に結節が存在することが示唆されている。結節の多くは,他疾患のため実施した甲状腺画像検査で偶然発見される。
病因
甲状腺結節の評価
病歴
疼痛は甲状腺炎または嚢胞内への出血を示唆する。無症候性の結節は,悪性の場合もあるが,通常は良性である。甲状腺機能亢進症状は機能の亢進した腺腫または甲状腺炎を示唆し,一方で甲状腺機能低下症状は橋本甲状腺炎を示唆する。甲状腺癌の危険因子としては以下のものがある:
甲状腺照射歴(特に乳児期または小児期における)
年齢20歳未満
男性
甲状腺癌または多発性内分泌腫瘍症(MEN)2型の家族歴
孤立性結節
発声障害
サイズの増大(特に,急速な成長または甲状腺の抑制療法施行中の成長)
身体診察
甲状腺癌を示唆する徴候には,石様硬または周囲構造への固定,頸部リンパ節腫脹,および反回神経麻痺による嗄声などがある。
検査
甲状腺結節の初期評価時には以下の検査を行う:
甲状腺刺激ホルモン(TSH)
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体
甲状腺刺激ホルモン(TSH)が抑制されている場合は,放射線ヨードによるシンチグラフィーを行う。放射性核種の摂取率が上昇している(ホット)結節が悪性であることはほとんどない。甲状腺機能検査により甲状腺機能亢進症も橋本甲状腺炎も示唆されなかった場合には,超音波ガイド下での穿刺吸引細胞診を実施し良性結節と悪性結節を鑑別する。穿刺吸引細胞診の早期実施は,放射線ヨードシンチをルーチンに行うよりも経済的なアプローチである。
超音波検査は,結節のサイズ決定に有用である;穿刺吸引生検は,超音波検査で1cm未満の結節または全体が嚢胞状の結節には,ルーチンに適応とはならない。超音波検査ががんの診断に役立つことはまれであるが,以下のような特定の超音波検査所見またはX線所見はがんを示唆する:
甲状腺結節の治療
基礎疾患の治療
治療は基礎疾患に対して行う。サイロキシンでTSHを抑制し比較的小さい良性結節を縮小させる方法は,最大でも半数の症例にしか効果がなく,ほとんど行われない。悪性結節の治療にサイロキシンは使用されない。