トキソカラ症は、回虫(線虫) の一種であるイヌ回虫(Toxocara canis)と ネコ回虫(Toxocara cati)によって引き起こされる感染症で、通常は動物に寄生する寄生虫です。
人では、特に幼い子どもは、回虫の虫卵を含む動物の便(糞便)で汚染された土を摂取することで感染することがあります。
この感染症では、発熱、せき、喘鳴、肝臓の腫大などが起こることがあり、一部の人には視力障害を引き起こすこともあります。
血液サンプル中に回虫に対する抗体が存在すれば、診断が確定します。
治療は通常不要ですが、回虫感染症の治療に用いられる薬剤やコルチコステロイドなどが使用されることがあります。
イヌとネコに対して定期的に駆虫を行い、手洗いをすることが感染を予防するのに役立ちます。
蠕虫(ぜんちゅう)とは、人にも動物にも感染しうる寄生虫のことです。蠕虫には3種類あり、それらは吸虫(ジストマ)、条虫(絛虫)、回虫(線虫)です。トキソカラ、イヌ回虫、ネコ回虫はいずれも回虫の一種です。
トキソカラ症は主に幼児がかかる病気で、体内に寄生虫がいるイヌやネコ、もしくは他の動物の糞で汚染された土に触れて、トキソカラの虫卵を摂取してしまうことで感染します。小児がよく遊ぶ砂場では、イヌやネコがよく糞を排泄するため、虫卵への曝露の危険が特に大きい場所です。小児はよく虫卵のついた手を口に入れたり、汚染された砂を食べたりします。
ときに、成人が汚染された土や泥、汚染された他の物の表面、他の人の洗っていない手に触れて、虫卵を摂取して感染することがあります。
土、泥、粘土など、食べもの以外のものを定期的に食べる人(異食症と呼ばれる摂食障害)は、トキソカラ症にかかるリスクが特に高くなります。
まれに、ウサギやアヒルなどの感染した他の動物の生肉や加熱調理が不十分な肉を食べることで感染することもあります。
(寄生虫感染症の概要も参照のこと。)
トキソカラ症の伝播
感染した動物が便(糞便)中にトキソカラの虫卵を排出した後、虫卵は環境中で成熟し、感染を引き起こすようになります。
感染を引き起こす虫卵は、汚染された土や洗っていない手を介して口に入ることがあります。体内に入った虫卵は、腸でふ化して幼虫になります。幼虫は腸壁を貫通して血流に乗り、体中に広がります。血流に入ると、幼虫は体内のさまざまな組織(肝臓、心臓、肺、脳、眼など)に移動し、損傷や炎症を引き起こします。
この幼虫は人の体内では成虫に成熟しませんが、体内で何カ月も生存することができます。幼虫はイヌやネコに寄生すると成虫に成熟します。
トキソカラの虫卵は、ウサギ、アヒル、ヒツジなどの他の動物に摂取されることがあります。これらの動物では、虫卵が幼虫にふ化して腸壁を貫通し、さまざまな組織に移動した後、そこでシストを形成します。まれに、これらの動物の生肉や加熱調理が不十分な肉を食べ、シストを摂取することで感染することもあります。
Image from the Centers for Disease Control and Prevention, Global Health, Division of Parasitic Diseases and Malaria.
トキソカラ症の症状
トキソカラ症の症状は、虫卵が摂取されてから数週間後に始まります。症状は、侵された臓器によってさまざまです。
幼虫が軟らかい内臓に感染すると(内臓幼虫移行症と呼ばれます)、最もよくみられる症状は発熱、せきや喘鳴、肝臓の腫大です。発疹、脾臓の腫大、または肺の炎症がみられる場合もあります。食欲がなくなったりすることもあります。
幼虫が眼に感染すると(眼幼虫移行症と呼ばれます)、通常は無症状または非常に軽度の症状を引き起こします。通常は片眼のみに感染します。しかし、眼に炎症が起きたり、視力が低下したり失われたりすることがあります。
トキソカラ症の診断
ときに寄生虫に対する抗体を検出する血液検査
肝臓の腫大、肺の炎症、発熱、血液中の好酸球(白血球の一種)の増加がみられる場合は、トキソカラ症が疑われます。
トキソカラ症の診断は、血液中のトキソカラに対する抗体を特定することで確定します。(抗体は、寄生虫などによる感染から体を守るために免疫系が作り出すタンパク質のことです。)
まれに、生検と呼ばれる肝臓や他の組織から組織片を採取し、幼虫の形跡や幼虫による炎症の有無を調べることもあります。
トキソカラ症の治療
必要であれば、寄生虫の駆虫薬やコルチコステロイド薬の使用
眼に感染した場合、ときにレーザー光凝固術またはその他の手術
トキソカラ症の人の大半では、感染症は自然に消失し、治療は必要ありません。
症状が中等度から重度の場合は、アルベンダゾールかメベンダゾールを投与します。これらの薬剤は駆虫薬として知られており、経口で服用します。
症状が重度の場合は、炎症を抑えるためにコルチコステロイドを投与することがあります。
眼幼虫移行症の人は、眼科専門医による治療を受ける必要があります。2種類のコルチコステロイドを投与します。1つは経口で、もう1つは感染した眼に直接投与します。適切なケアを行っても、ほとんどの人は視力をいくらか失います。
場合によっては、レーザー光凝固術(レーザー光線を網膜の眼の奥に照射する処置)を使用して眼の中の幼虫を死滅させます。場合によっては、トキソカラ症による問題を解決するために、冷却プローブ(凍結手術)を用いて眼の領域を凍結させたり、他の種類の眼手術を行ったりすることがあります。
予防と治療
予防には定期的に以下の治療を行います。
ペットやその他の動物と遊んだ後、ペットの排泄物を処分した後、屋外での活動後、食品や食事を扱う前に、石けんと水で手を洗う
使用していない間は砂場を覆い、動物がその中に排泄できないようにする
汚れ、土、粘土を食べないよう小児に指示する



