高血圧

(血圧上昇)

執筆者:Matthew R. Weir, MD, University of Maryland School of Medicine
Reviewed ByJonathan G. Howlett, MD, Cumming School of Medicine, University of Calgary
レビュー/改訂 2025年 2月 | 修正済み 2025年 7月
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やさしくわかる病気事典

高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなっている状態のことです。

  • 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。

  • 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。

  • 多くの場合、高血圧による症状はみられません。

  • 診断は血圧の測定を2回以上行ってから下されます。

  • 体重の低下、禁煙、食事中のナトリウムや脂肪の量を減らすことが勧められます。

  • 降圧薬が投与されます。

高血圧を意味する英語の「hypertension」(hyper = 高い、tension = テンション)という言葉は、多くの人にとって過度の緊張や神経質、ストレスを連想させますが、医学用語の「hypertension」は、その原因を問わず血圧が常に高い状態、すなわち高血圧を示します。高血圧は、生命の維持に欠かせない臓器が損傷を受けるまで、何年もの間まったく症状が現れないことが多いため、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれています。高血圧がコントロールされないまま放置すると、脳卒中動脈瘤(どうみゃくりゅう)心不全心臓発作慢性腎臓病などが生じるリスクが高くなります。

米国では成人の半数近くが高血圧です。多くの人は自分が高血圧であることに気づいていません。高血圧がある成人の約80%が推奨される治療を受けたことがありますが、治療を継続しているのはその約半数にすぎません。

高血圧は非ヒスパニック系黒人の成人に多くみられ(58%)、非ヒスパニック系白人の成人では49%、非ヒスパニック系アジア人の成人では45%、ヒスパニック系の成人では39%の人にみられます。高血圧は高齢者に多くみられ、65歳以上では約3分の2の人に高血圧がみられます。55歳の時点で血圧が正常な人が、生涯のいずれかの時点で高血圧になるリスクは90%です。肥満の人での高血圧の有病率は、肥満ではない人の2倍です。

加齢による変化が、原因不明の高血圧に寄与していると考えられます(本態性高血圧)。年齢を重ねるにつれて太い動脈が徐々に硬化し、細い動脈が部分的に閉塞する場合もあります。一部の専門家は、この動脈硬化とそれに伴う細い動脈の狭窄が、加齢に伴って血圧が上昇する一因になっていると考えています。

血圧を測る際には、2つの数値を記録します。高い方の数値は、動脈内の圧力が最も高くなった状態を反映した値で、この状態は心臓が収縮している間(収縮期といいます)に生じます。低い方の数値は、動脈内の圧力が最も低くなった状態を反映した値で、この状態は心臓が再び収縮し始める直前(拡張期といいます)に生じます。血圧は「収縮期血圧/拡張期血圧」という形式で表され、例えば「120/80mmHg」のように表現されます(mmHgはミリメートルで表した水銀柱の高さに基づく単位です)。これは収縮期血圧が120、拡張期血圧が80という意味になります。

高血圧の分類

成人の血圧は、正常、高値血圧、I度(軽症)高血圧、II度高血圧に分類されます。  しかし、血圧が高くなれば、それが正常範囲内であっても合併症の危険性は増大するため、これらの群類はやや恣意的なものといえます。

高血圧切迫症は、収縮期血圧が180mmHgを超えるか拡張期血圧が120mmHgを超えているものの、患者が自覚できる臓器障害も医師が検出できる臓器障害もない状態です。通常、高血圧切迫症は症状を引き起こしません。

高血圧緊急症は特に重症の高血圧です。収縮期血圧が180mmHg以上になるか拡張期血圧が120mmHg以上になり、重要な臓器(典型的には脳、心臓、腎臓)に進行性の障害を示す所見がみられ、しばしば様々な症状を伴います。治療しないでいると、高血圧緊急症は死に至ることがあります。

体の血圧調節

体には血圧をコントロールする仕組みが数多く備わっています。身体は以下のものを変えることができます。

  • 心臓が送り出す血液量

  • 動脈径

  • 血流中の血液量

血圧を上昇させるには、、心臓は拍動の強さと速さを高めることで、送り出す血液の量を増やします。一方、細い動脈(細動脈)が収縮して狭くなることで、血液は心臓が拍動するたびに通常より狭い空間を通過しなければならなくなります。動脈の中の空間が狭くなることで、同じ量の血液が通過したときの血圧は高くなります。また、静脈が収縮して静脈内に保持される血液の量を減らすことで、動脈内の血液量を増やします。その結果、血圧は上昇します。血流中の水分の量が増加し、血液の量が増えることによっても、血圧は上昇します。

血圧を低下させるには、、心臓の拍動の強さや速さを下げたり、細動脈や静脈を拡張させたり、血流中の水分を減らしたりする仕組みで達成できます。

これらの仕組みは、自律神経系(無意識に生体プロセスを調節している神経系)の一部である交感神経と腎臓によってコントロールされています。

何らかの脅威に対する体の生理的反応である闘争・逃走反応が起こると、交感神経はいくつかの方法で一時的に血圧を上昇させます。

  • 交感神経は副腎を刺激することで、エピネフリンアドレナリン)とノルエピネフリンノルアドレナリン)というホルモンを分泌させます。これらのホルモンの刺激によって、心臓の拍動は速く強くなり、大半の細動脈が収縮し、一部の細動脈は拡張します。拡張する細動脈は、意識的に動きを調節できる骨格筋など、血液の供給量を増やす必要がある部位の血管です。

  • また交感神経は、腎臓を刺激して塩分(ナトリウム)と水分の排出量を減らし、血液量を増やします。体は細胞内のナトリウムが過剰になるのを防ぐため、細胞におけるナトリウムの出入りをコントロールします。細胞内のナトリウム量が過剰になると、体が交感神経の刺激に対して敏感になりすぎる可能性があります。

腎臓も血圧の変化に直接的に反応します。血圧が上昇すると、腎臓でのナトリウムと水分の排泄量が増加することで、血液の量が減少して血圧は正常に戻ります。逆に血圧が低下すると、腎臓でのナトリウムと水分の排泄量が減少することで、血液の量が増加して血圧は正常に戻ります。腎臓はレニンという酵素を分泌し、それがアンジオテンシンIIというホルモンの分泌を引き起こすことによって、血圧を上昇させます。

アンジオテンシンIIは以下によって血圧を上昇させます。

  • 細動脈を収縮させる

  • 自律神経系の交感神経を刺激する

  • アルドステロンバソプレシン(抗利尿ホルモンとも呼ばれる)という2種類のホルモン(腎臓のナトリウムと水分の保持量を増加させるホルモン)の分泌を誘発する

通常、腎臓は腎臓内の細動脈を拡張させる物質をつくります。この物質により、細動脈を収縮させるホルモンの働きが調節されます。

血圧の値は人の生涯を通じて変動するものです。乳児や小児の正常時の血圧は、成人での値よりかなり低い値になります。米国などの先進国に住んでいる人は、ほぼ全員が年齢を重ねるにつれて血圧が高くなります。

血圧の制御:レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系

レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は、血圧を調整するための一連の反応です。

  1. 収縮期血圧が100mmHg以下に低下すると、腎臓からレニンという酵素が血液中に分泌されます。

  2. レニンは、血流中を循環している大きなタンパク質、アンジオテンシノーゲンを分解します。分解されたタンパク質の1つはアンジオテンシンIといいます。

  3. アンジオテンシンIは比較的活性が低く、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によって分解されます。分解されたものの1つが、非常に活性の高いアンジオテンシンIIというホルモンです。

  4. アンジオテンシンIIは、細動脈の筋肉壁を収縮させることにより、血圧を上昇させます。またアンジオテンシンIIは、副腎を刺激してアルドステロンというホルモンを分泌させて、また下垂体を刺激してバソプレシン(抗利尿ホルモン)を分泌させます。

  5. アルドステロンおよびバソプレシンにより腎臓はナトリウム(塩分)を保持します。アルドステロンは、腎臓に作用してカリウムも排出させます。ナトリウムの上昇は水分を貯留させるため、血液量が増加して血圧が上昇します。

血圧は運動によって一時的に変動します。運動時には血圧は上がり、安静時には下がります。また、血圧は時間帯によっても変動し、朝が最も高く、夜寝ている間が最も低くなります。このような変動は体の正常な反応です。何らかの変化で血圧が一時的に上昇すると、その変化に拮抗して血圧を正常範囲に維持するための仕組み(代償機構)の1つが起動します。例えば、心臓が送り出す血液量が増加して血圧が上昇すると、血管が拡張し、腎臓でのナトリウムと水分の排出量が増えて血圧が低下します。

高血圧の原因

高血圧には以下のものがあります。

  • 原発性

  • 二次性

本態性高血圧

原因不明の高血圧は、原発性高血圧(以前は本態性高血圧)と呼ばれています。高血圧がある人の85%が原発性高血圧です。

心臓と血管に生じたいくつかの変化が組み合わさって、血圧を上昇させると考えられます。例えば、1分間に送り出される血液の量(心拍出量)が増えたり、血管の収縮によって血流にかかる抵抗が増加したりすることによります。全体の血液量が増加することもあります。このような変化が起こる原因はまだよく分かっていませんが、血圧の調節に関わっている細動脈の収縮に遺伝性の異常が影響を及ぼしているためではないかと考えられています。

血圧の上昇に関わると考えられているその他の変化として、細胞内へのナトリウムの過剰な蓄積や、細動脈を拡張させる物質の生産量の減少などがあります。

二次性高血圧

原因の明らかな高血圧は、二次性高血圧と呼ばれます。高血圧がある人の約15%が二次性高血圧です。

それらの人の多くでは、以下が原因で高血圧が生じています。

  • 腎臓の病気

腎臓は血圧の調節に重要な臓器であることから、多くの腎疾患で高血圧がみられます。例えば、腎臓が炎症やその他の病気により損傷すると、体からナトリウムや水分を十分除去する能力が損なわれ、血液量と血圧が上昇します。高血圧を引き起こすその他の腎疾患としては、腎動脈狭窄症(腎臓に血液を送り込む動脈が狭くなる病気で、動脈硬化に起因することがある)、腎臓の感染症(腎盂腎炎)、糸球体腎炎腎臓の腫瘍多発性嚢胞腎、腎臓の外傷、放射線療法による腎障害などがあります。

それ以外の人では、以下のような別の病気が原因で二次性高血圧が生じています。

  • 内分泌疾患

  • 特定の薬剤またはその他の物質の使用

高血圧を引き起こす内分泌疾患としては、アルドステロン症(アルドステロンが過剰に分泌される状態で、副腎の良性腫瘍が原因のことが多い)、クッシング症候群コルチゾールの血中濃度の上昇を特徴とする病気)、甲状腺機能亢進症(甲状腺の活動が過剰になった状態)などのほか、まれな原因として褐色細胞腫(副腎に発生してアドレナリンノルアドレナリンを分泌する腫瘍)があります。

高血圧の発生または悪化につながる可能性がある物質としては、アルコール(過度の飲酒)、中枢刺激薬(アンフェタミン類やコカインなど)、コルチコステロイド、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、経口避妊薬(ピル)、交感神経刺激薬(プソイドエフェドリンやフェニレフリンなど、かぜに使用される特定の鼻閉改善薬)などの薬剤、甘草などが挙げられます。

動脈硬化は体による血圧のコントロールを妨害し、高血圧のリスクを上昇させます。動脈硬化になると、血圧を正常に戻すために血管を拡張できなくなります。

高血圧を引き起こす可能性がある他の病気としては、大動脈縮窄症妊娠高血圧腎症急性間欠性ポルフィリン症、急性鉛中毒などがあります。

関係する要因

肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。また、睡眠時無呼吸症は既存の高血圧の原因となったり、悪化させたりする可能性があります。

ストレスは血圧を一時的に上昇させますが、ストレスがなくなると血圧はたいてい正常に戻ります。例えば「白衣高血圧」では、医療機関を受診するというストレスのために、血圧が高値とみなされる水準や、高血圧の基準を満たす水準まで上昇します。こうした一時的な血圧の上昇は、現在では高血圧の診断を下すまでに数回の来院で血圧を何度か測定するようになっている理由の1つです。何回か測定した値のうち1つが高い場合は、ストレスによるものである可能性が考えられますが、血圧が一貫して高い場合には、それをストレスによるものと考えるのは賢明ではありません。受診するというストレスが患者の高血圧測定値に影響している可能性があると医師が判断した場合は、24時間血圧モニタリングを行うことがあります。

不安もまた高血圧の原因になる可能性があり、医師は不安に対する治療が適切かどうかを判断することができ、そうした治療により血圧が低下する可能性もあります。

高血圧の症状

大半の人では、高血圧は何の症状も引き起こしませんが、偶然同時にみられる特定の症状(頭痛、鼻出血、めまい、顔面の紅潮、疲労など)を多くの人が高血圧によるものと誤って認識しています。これらの症状は高血圧の人にもみられますが、正常な血圧の人にも同じくらいの頻度でみられます。

しかし、高血圧が重度(収縮期血圧180mmHg以上または拡張期血圧120mmHg以上の場合と定義されます)で治療をしない場合には、脳、眼、心臓、および腎臓の障害によって症状が引き起こされる可能性があります。このような症状が現れた重度の高血圧がある人は、高血圧緊急症と呼ばれる状態にあり、緊急の治療が必要です。その症状としては、吐き気、嘔吐、息切れ、不穏や、通常と異なるまたは説明のつかない頭痛または疲労などがあります。ときに、重度の高血圧では脳浮腫が生じる可能性があり、吐き気、嘔吐、ひどい頭痛、傾眠、錯乱、けいれん、眠気がみられ、昏睡に至ることもあります。この状態を高血圧性脳症といいます。

重度の高血圧により心臓の負荷が増加し、胸痛や息切れが起こることがあります。ときに、血圧が非常に高くなることで大動脈(心臓から血液を送り出す太い動脈)が破裂し、それにより胸痛や腹痛が引き起こされることもあります。

褐色細胞腫による高血圧では、重度の頭痛、不安感、頻脈や動悸(不規則な心拍を自覚すること)、異常な発汗、ふるえ、蒼白などがみられます。これらの症状は、褐色細胞腫によって分泌されたアドレナリンノルアドレナリンの血液中の濃度が高くなったために現れます。

知っていますか?

  • 頭痛、鼻出血、めまい、顔面の紅潮、疲労などの特定の症状は高血圧によるものと判断されることが多くありますが、実際には高血圧のない人にも同じくらいよくみられます。

高血圧の合併症

長期間続いている高血圧は心臓や血管に損傷を与え、以下のリスクを上昇させる可能性があります。

高血圧を長く患っていると、心臓が血液を送り出すのにより多くの労力を必要とするため、心臓が拡大し、心臓の壁が厚くなっていきます。厚くなった心臓の壁は正常なときより硬くなります。その結果、心房や心室が正常に拡張できなくなり、血液を十分に取りこむことが困難になるため、心臓にかかる負担はさらに重くなります。このような心臓の変化によって、不整脈心不全が生じます。

また、高血圧によって血管の壁が厚くなり、動脈の硬化(動脈硬化)が起こる可能性が上昇します。血管の壁が厚くなった動脈硬化のある人では、脳卒中、心臓発作、血管性認知症、腎不全のリスクが高くなります。脳卒中や心臓発作は、動脈硬化性心血管疾患とみなされます。

高血圧の診断

  • 血圧測定

最も正確な測定値、つまり通常の簡易な方法で測定した値ではなく、高血圧の診断に用いるための測定値を得るには、医師は以下の特定の手順に従って血圧を測定します(を参照)。患者に座ってもらい、5分ほど経ってから血圧を測定します。測定前は少なくとも30分間、運動、カフェイン摂取、喫煙をしてはいけません。結果が130/80mmHg以上の場合は、血圧が高いとみなしますが、高い数値が1回出ただけでは、高血圧と診断することはできません。数値が大きくばらつくことがあるため、数回高い数値が得られても高血圧との診断を下すのに十分とはいえない場合もあります。最初の測定で高い数値が出た場合は、少し時間をおいてもう1回測定し、さらに日を分けた少なくとも2回の機会を設けて、それぞれ2回ずつ測定し、血圧の高い状態がなお続いているかどうか確認します。

血圧の測定

血圧を素早く、不快感をほとんど与えることなく測定することのできる器具がいくつかあります。一般的には血圧計が使用されます。この器具は柔らかいゴムでできたカフと、そのカフを膨らませるためのゴムのバルブ、カフに加わる圧力を表示する計測器で構成されます。計測器は、目盛り板、デジタルメーター、または水銀で満たされたガラスの筒でできています。最初に血圧の測定に用いられたのが水銀柱であったことから、血圧は水銀柱の高さに基づく「mmHg」という単位で表示されます。

血圧計を使う場合、検査を受ける人は脚を組まずに座り、背もたれで背中を支えます。腕を服から出し(袖をまくり上げる場合、袖が腕を圧迫しないよう注意します)、肘を軽く曲げて、腕を台の上に載せ、腕が心臓と同じくらいの高さになるようにします。カフを腕にぐるりと巻きつけます。腕のサイズに合ったカフを使用することが重要です。カフが小さすぎると、血圧の値が高くなります。反対にカフが大きすぎると、血圧の値が低くなります。

カフの下の動脈に聴診器を当てて拍動音を聞きながら、その血流音が一時的に止まるまでバルブを押してカフを膨らませ、カフによる動脈への圧迫を増していきます。その圧力は通常、検査を受ける人の普段の収縮期血圧(心拍動時の血圧)よりも30mmHgほど高くします。その後、カフから徐々に空気を抜いていきます。このとき、最初に動脈から拍動音が聞こえたときの圧力が収縮期血圧です。カフをさらに緩めると、ある点で拍動音が聞こえなくなります。この時点の血圧が拡張期血圧(拍動の間に心臓が拡張したときの血圧)です。

聴診器やゴムのバルブを使わずに血圧を測定できる自動血圧計もあります。これらの装置には、上腕、指、手首で測定するタイプがあります。50歳以上の人は、上腕で血圧を測定するのが最も正確です。集中治療室に入院中の患者などでは、ときに厳密な血圧の測定が必要になります。このような場合は、動脈内にカテーテルを挿入して、血圧を直接測定します。

高血圧の人向けに、自宅で血圧を測定できる家庭用血圧計もあり、血圧や治療に対する反応のモニタリングに役立ちます。

それでもまだ診断できない場合は、24時間血圧計を使用します。この血圧計は腰に装着する小型の電池式の装置で、腕に巻いたカフとつながっています。この装置は、24時間または48時間にわたって昼夜を問わず繰り返し血圧を測定し、結果を記録します。この記録から、高血圧の有無とその重症度を判断することができます。

偽性高血圧は、実際は血圧が高くないにもかかわらず測定値が高くなる現象で、動脈が非常に硬くなった人(大半が高齢者)で起こります。これは腕の動脈が硬すぎてカフで圧迫できないために起こり、その結果、正確な血圧は測定できません。

仮面高血圧は、実際は血圧が高いのに測定値が正常な場合をいいます。仮面高血圧は、高血圧がある人の10~30%でみられます。このタイプの高血圧は、血圧を自宅で測定するか、合併症(心不全など)の原因として高血圧が疑われない限り、認識することは不可能です。

高血圧の診断がついたら、通常は重要な臓器、特に血管、心臓、脳、眼、腎臓などに対する高血圧の影響を評価します。高血圧の原因も調べます。臓器損傷の検出や高血圧の原因の特定のために行われる検査の数や種類は、患者毎に異なります。一般に、すべての高血圧患者に対する通常の評価では、病歴の聴取、身体診察心電図検査、血液検査(ヘマトクリット値[血液全体の体積のうち赤血球が占める体積の割合]、カリウムおよびナトリウム濃度、腎機能検査を含む)、尿検査などが行われます。

身体診察では、腹部の腎臓の辺りに圧痛がないか確認し、聴診器を腹部に当てて、腎臓に血液を送り込む動脈内に、狭くなった動脈を通って血液が勢いよく流れる際に生じる雑音(血管雑音といいます)が聞こえるかどうかを調べます。

両眼の網膜を検眼鏡で検査します。網膜は、高血圧が細動脈に与える影響を医師が直接観察できる唯一の部位です。網膜の細動脈でみられる変化は、腎臓など、体のあらゆる部位の細動脈や他の血管の変化と似ていると考えられています。網膜の損傷(高血圧網膜症)の程度を特定することで、高血圧の重症度を分類することができます。

心音を聞くために聴診器を使用します。IV音と呼ばれる異常な心音は、高血圧によって心臓に生じる早期症状の1つです。この音は、肺を除く全身に血液を送り出す左心室が拡大して硬くなり、そこに血液を満たすために左心房が激しく収縮するために生じます。

心臓の変化、特に心筋の肥厚(肥大)や心臓全体の増大(心拡大)を検出するには、通常は心電図検査を行います。心拡大が疑われる場合は、心エコー検査を行う場合もあります。

腎障害は尿検査と血液検査から検出できます。尿検査から腎障害の初期の徴候を検出できます。尿から血球とアルブミン(血液中に最も多く含まれるタンパク質)がみつかった場合、腎障害の可能性があります。腎障害の症状(意識障害[嗜眠]や食欲不振、疲労など)は、もっと後になるまで、具体的には腎機能が大幅に失われるまで現れません。

原因の診断

血圧が高い人ほど、また年齢が低い人ほど、原因を探るためにより大がかりな検査が行われることがありますが、高血圧の原因を特定できるのは全体の10%未満にすぎません。大がかりな評価としては、X線検査、超音波検査、腎臓や腎臓への血流を調べる画像検査、胸部X線検査などが行われます。アドレナリンアルドステロンコルチゾールなどの特定のホルモンを検出するための血液および尿検査も行います。

身体診察での異常な所見や症状によって、原因を推定できる場合があります。例えば、腎臓に血液を供給する動脈内の雑音(聴診器で聴くことができる異常な音)は、腎動脈狭窄症を示唆している可能性があります。

様々な症状が同時にみられる場合は、褐色細胞腫によって分泌されるアドレナリンノルアドレナリンというホルモンの血中濃度が高くなっている可能性があります。褐色細胞腫の存在は、これらのホルモンの分解産物が尿中で検出されることで確認されます。

特定の検査を定期的に実施することで、高血圧の他のまれな原因が検出できることがあります。例えば、血液中のカリウム濃度の測定は、高アルドステロン症の検出に役立ちます。

高血圧の治療

  • 食事と運動

  • 血圧を下げる薬剤

原発性高血圧を根治することはできませんが、コントールして合併症を予防することは可能です。高値血圧や程度を問わず高血圧の状態にある人は、生活習慣を改善するべきです。医師が薬剤を処方するかどうかの決定は、実際の血圧測定値と、動脈硬化性心血管疾患があるかどうか、なくても今後10年間に発症するリスクが10%以上あるかどうかに基づいて行われます。

高血圧の人は、しばしば自宅での血圧測定を医師から勧められます。自分で血圧を測ることが、治療に関する医師の指示に積極的に従う動機づけとなるからです。

治療の目標

ほとんどの場合、高血圧治療の目標は血圧を130/80mmHg未満に下げることです。ただし、血圧が130/80mmHg未満になると失神、ふらつき、記憶障害、めまいなどの症状が現れる人には、医師はより高めの目標値(140/90未満)を推奨することがあります。また、一部の患者(心疾患のリスクが高い人など)では、収縮期血圧の目標値をさらに低い値に設定するのが適切な場合もあります。

生活習慣の改善

†高血圧があるすべての人には生活習慣の改善が重要です。

過体重で高血圧がある人には、体重を減らすことが推奨されます。4.5キログラムほど体重を落とせば、血圧は下がります。肥満の人や糖尿病の人、コレステロール値が高い人では、心血管系の疾患のリスクを下げるために、食習慣を変えること(果物や野菜が豊富で、低脂肪乳製品が多く、飽和脂肪酸や総脂肪含有量が少ない食事にする)が重要です。

喫煙者は禁煙するべきです。

カルシウム、マグネシウム、カリウムの摂取量を十分に維持しながら、アルコールと塩(ナトリウム)の摂取量を減らすことによって、高血圧の薬物療法が不要になることもあります。飲酒量は、男性は2ドリンク以内(1日の合計でビールでは約1リットル、ワインでは約240ミリリットル、アルコール度数100プルーフのウイスキーなどでは約60ミリリットル)、女性は1ドリンク以内にすべきです。【訳注:日本における「1ドリンク」の定義(アルコール量で10g、アルコール度数5%のビールで250mL程度)とは異なります。】 理想的には、1日のナトリウム摂取量は1500ミリグラム未満に、塩化ナトリウム(塩)換算では3.75グラム未満に減らすべきです。

中程度の有酸素運動も効果があります。原発性高血圧の人の場合は、血圧が調節できていれば運動を制限する必要はありません。定期的な運動は血圧を下げ、体重を減らし、心機能と全身の健康を改善する効果があります(運動の効果を参照)。

十分な睡眠を取るべきです。一晩に6時間以上睡眠をとることが、血圧コントロールの維持に役立つ可能性があります。

薬剤

降圧薬も参照のこと。)

高血圧の治療に使用される薬剤は降圧薬と呼ばれています。様々な種類がある降圧薬を使用すれば、ほぼすべての人で高血圧をコントロールすることができますが、治療は個々の患者の状況に合わせて進める必要があります。患者と医師が十分なコミュニケーションをとり、協力して治療プログラムを実行できれば、治療効果も高まります。

降圧薬の血圧を下げるメカニズムは薬剤の種類によって異なるため、様々な治療戦略があります。状況によっては、段階的に薬物療法を行っていく場合もあります。その場合はまず、1種類の降圧薬で治療を始めて、必要に応じてほかの降圧薬を追加します。また、別の患者には逐次的な薬物療法が望ましいと判断することがあります。これは、まず1種類の降圧薬を処方し、効果がなければ中止し、別の種類の降圧薬を処方する方法です。血圧が140/90mmHg以上の患者には、通常は2つの薬剤を同時に処方します。降圧薬を選ぶ際、医師は以下のような要因を考慮します。

  • 患者の年齢、性別、ときに民族

  • 高血圧の重症度

  • 糖尿病や高コレステロール血症など他の病気の有無

  • 考えられる副作用(薬剤によって異なる)

  • 薬剤の価格や特定の副作用が起きていないか調べるための検査にかかる費用

多くの患者には、血圧を目標値まで下げるのに複数の降圧薬が必要になります。

大半の患者は処方された降圧薬を問題なく服用することができます。しかし、どの降圧薬にも副作用が生じる可能性はあります。そのため副作用が起こった場合は、すぐに主治医に報告するべきで、そうすれば医師は薬剤の投与量を調節したり、別の薬剤に変更したりすることができます。通常、降圧薬は血圧を調節するために無期限に服用し続ける必要があります。

二次性高血圧の治療

可能であれば、高血圧の原因疾患を治療します。腎臓の病気を治療すれば、ときに血圧が正常に戻るか、少なくとも低下させることができるため、降圧薬による治療効果が高まります。腎臓につながる動脈の狭窄は、先端にバルーンの付いたカテーテルを挿入してバルーンを膨らませる方法(血管形成術)によって広げることができます。あるいは、腎臓につながる動脈の狭窄部位に迂回路(バイパス)を作る治療も可能です。そのような手術を行うと、しばしば高血圧が解消されます。褐色細胞腫など高血圧を引き起こす腫瘍は、通常は手術で摘出できます。

治療抵抗性高血圧の治療

治療抵抗性高血圧は、3種類の薬剤を適切な用量で投与してもコントロールすることができない高血圧のことをいいます。一部の患者では4つの薬剤が必要になることがあります。

米国以外の一部の国では、治療抵抗性高血圧の患者の管理のために2つの介入治療が可能です。しかし、米国では、これらの治療法は実験的な治療法とみなされているため利用できません。2つの介入法の1つ(腎動脈交感神経焼灼術)では、左右それぞれの腎臓につながる動脈にカテーテルを挿入し、カテーテルから高周波を発生させて、腎動脈に沿って交感神経を破壊します。もう1つの介入法(ペースメーカー療法または圧反射活性化療法)では、頸部に電極を植込み、特定の神経の末端部を刺激することで血圧のコントロールを補助します。これらの治療法の長期的な効果は不明です。

高血圧急迫症と高血圧緊急症の治療

高血圧緊急症では、速やかに血圧を下げる必要があります。高血圧緊急症は病院の集中治療室で治療されます。フェノルドパム(fenoldopam)、ニトロプルシド、ニカルジピン、ラベタロールなど、急速に血圧を低下させる薬剤は大半が静脈内に投与されます。

高血圧の予後(経過の見通し)

高血圧を治療しないでおくと、心不全、心臓発作、心臓突然死などの心疾患や、腎不全、脳卒中を若いうちに起こすリスクが高くなります。高血圧は脳卒中の最大の危険因子です。また、心臓発作の是正可能な三大危険因子のうちの1つでもあります(他の2つは喫煙と血中コレステロール高値です)。

高血圧の治療は、脳卒中や心不全のリスクを大幅に減少させます。さらに、劇的ではないものの、心臓発作のリスクも減少させます。

さらなる情報

以下の英語の資料が役立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国心臓協会:高血圧(American Heart Association): High blood pressure:高血圧の原因について理解し、治療に必要な生活習慣の変更を管理するのに役立つ包括的な情報源

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