喀血の主な原因と特徴

原因

一般的な特徴*

検査†

血液凝固障害

抗凝固薬の使用(肺塞栓症、脚の血栓、または心房細動の治療に用いたり、特定の心臓の手術の後、血栓のリスクを低下させるために用いたりする)

血栓を溶かす薬の使用(血栓溶解薬と呼ばれ、心臓発作または脳卒中の治療に用いられる)

ときに鼻や消化管など、他の部位からの出血(消化管からの出血は便中にみられる)

抗凝固薬または血栓溶解薬を投与されている人

ときに血液凝固障害の家族歴

血液検査により、血液凝固能を評価する

気管支拡張症

感染症を繰り返す人における、慢性のせきと粘液の生産

胸部の高分解能CT検査

ときに気管支鏡検査

急性気管支炎

急性:せきはたんを伴うこともあれば伴わないこともあり(湿性または乾性)、ときに上気道感染症の症状(鼻づまりなど)がみられる

慢性: 喫煙者または慢性閉塞性肺疾患がある人において、2年以上連続し、1年のうち3カ月以上、ほぼ毎日湿性のせきがみられる【訳注:慢性気管支炎について、日本では、日本呼吸器学会 咳嗽に関するガイドライン第2版に『Fletcherの定義に基づいて、「慢性の咳、痰が少なくとも年に3か月以上あり、それが少なくとも連続2年以上認められ、この症状が他の肺疾患や心疾患を原因としない」と定義されている』と記載されています。】

急性: 医師の診察

慢性:胸部X線検査

長引く特定の肺感染症(結核、真菌感染症、寄生虫感染症、または肺に病変をきたす梅毒

特定の感染症にさらされた人における、発熱、せき、寝汗、体重減少

しばしば、病気または薬剤による免疫系の機能低下(免疫抑制)

胸部X線検査

胸部CT検査

たん、または気管支鏡で肺から採取した液体の検査

かなり前に吸い込まれ、長い間気づかれなかった異物

上気道感染症の症状を伴わない慢性のせき(特に乳児や幼児)

ときに発熱

胸部X線検査

ときに気管支鏡検査

心不全

ピンク色で泡状のたん(ときに血がすじ状に混ざる)

横になったとき、または眠りについて1~2時間後に悪化する息切れ

聴診器で、肺の中に液体がたまっていることを示唆する音が聞こえる

通常、脚の腫れ(浮腫)

胸部X線検査

ときに血液検査を行い、心臓に負担がかかっているときに分泌される脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)という物質を測定する

ときに心エコー検査

肺膿瘍

発熱、通常は1週間以上持続する

せき、寝汗、食欲不振、体重減少

歯列不良

胸部X線検査

ときにCT検査または気管支鏡検査

肺がん

寝汗や体重減少

通常、喫煙歴のある中年以降の人にみられる

胸部X線検査

CT検査

気管支鏡検査

肺炎

発熱、けん怠感、たんを伴うせき、息切れ

深く息を吸ったときに突然生じる胸痛

聴診器で特定の異常な呼吸音が聞こえる

胸部X線検査

肺塞栓症(肺の動脈が血栓などにより突然詰まった病態)

突然鋭い胸痛が発生し、通常息を吸うときに悪化する

息切れ

心拍数と呼吸数の増加

しばしば肺塞栓症の危険因子(がん、寝たきりの人などで体を動かせない状態が続く、脚の血栓、妊娠、経口避妊薬もしくはその他のエストロゲン製剤の使用、最近の手術もしくは入院、または肺塞栓症の家族歴など)がある

肺に特化した画像検査(CT血管造影や換気血流[V/Q]シンチグラフィーなど)

肺の血管炎(グッドパスチャー症候群多発血管炎性肉芽腫症など)

疲労や体重減少

ときに血尿

ときに息切れ

ときに脚の腫れ(浮腫)

腎臓または肺組織の生検

血液検査により、それぞれの病気に特徴的な抗体(抗糸球体基底膜抗体、抗好中球細胞質抗体)がないか確認する

*特徴としては症状や診察結果を示しています。示されている特徴は典型的なものですが、常に認められるわけではありません。

†喀血がみられる人には、医師は常に胸部X線検査を行うとともに、指にセンサー(パルスオキシメーター)を取り付けて血液中の酸素レベルを測定します。

CT = コンピュータ断層撮影

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