自閉スペクトラム症

執筆者:Stephen Brian Sulkes, MD, Golisano Children’s Hospital at Strong, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
Reviewed ByAlicia R. Pekarsky, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital
レビュー/改訂 2024年 4月 | 修正済み 2025年 11月
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やさしくわかる病気事典

自閉スペクトラム症は、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、限定的な行動または反復行動がみられる病気です。

  • 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手です。

  • 自閉スペクトラム症の患者は、行動、関心や動作のパターンが限定的で、多くの場合、決まった行為に従って毎日を過ごします。

  • 診断は、観察結果、親や養育者からの報告、自閉症用の標準化されたスクリーニング検査の結果に基づいて下されます。

  • 体系だった行動療法を行えば、極めて良好な効果が得られる患者が大半です。

自閉スペクトラム症は神経発達症の一種です。

かつて自閉スペクトラム症は、古典的自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、および特定不能の広汎性発達障害に細分されていました。しかし、これらは重複する部分が非常に多く区別が困難であったため、この分類はもはや使用されておらず、これらすべてで自閉スペクトラム症とみなされています(別の遺伝性疾患であるレット症候群は除きます)。自閉スペクトラム症はレット症候群と異なりますが、自閉スペクトラム症の人の多くはレット症候群を併発しています。分類システムでは、幅広いスペクトラム内で、特定の個人に異なる特徴が強く出たり弱く出たりすることが強調されています。

自閉スペクトラム症は、米国では約36人に1人の頻度で発生していて、女児よりも男児で4倍多くみられます。医師と養育者が自閉スペクトラム症の症状について詳しく知るようになったことで、自閉スペクトラム症と特定される人数の推計値が増加しています。

自閉スペクトラム症の原因

自閉スペクトラム症の具体的な原因は十分に解明されていませんが、多くの場合、遺伝的な要因が関係しています。自閉スペクトラム症の子どもが1人いる親の場合、もう1人自閉スペクトラム症の子どもをもつリスクはおよそ3~10%高くなります。脆弱X症候群結節性硬化症ダウン症候群などのいくつかの遺伝的異常が自閉スペクトラム症と関連しています。

出生前の風疹サイトメガロウイルスなどのウイルス感染が関与している可能性があります。早産(未熟性)も危険因子となる可能性があり、未熟性の程度が高いほど、自閉スペクトラム症のリスクも高くなります。

自閉スペクトラム症の小児の一部では、脳の形や機能に違いがみられます。

しかし、ASDは不十分な子育ての失敗や小児期の恵まれない環境によって引き起こされないことは明らかです。予防接種が自閉症を引き起こさないという説得力のある証拠があります(MMRワクチンと自閉症に関する懸念も参照のこと)。

自閉スペクトラム症の症状

自閉スペクトラム症の症状が2歳までに現れることもありますが、軽症の場合には学齢期まで分からないことがあります。

自閉スペクトラム症の小児では、次の領域の症状が現れます。

  • 社会的コミュニケーションと対人関係

  • 限定された反復する行動パターン

自閉スペクトラム症の症状には軽度から重度まで幅がありますが、自閉スペクトラム症の人の大半には、両方の領域について、一定の支援が必要になります。自閉スペクトラム症の人は、学校や社会で自主的に行動する能力に大きな個人差があり、支援する必要性も大幅に異なります。さらに、自閉スペクトラム症の小児の最大20%では、特に知能指数(IQ)が50未満の小児の場合、青年期に至る前にけいれん発作が起こります。患児の約25%に、それまでに獲得した技能の喪失(発達の退行)が診断時ごろにみられ、これが最初の徴候である場合があります。

社会的コミュニケーションと対人関係

多くの場合、自閉スペクトラム症の乳児は、典型的な抱かれ方や視線の合わせ方をしません。親と離れると動揺する自閉スペクトラム症の乳児もいますが、自閉スペクトラム症でない小児のように安心や安全を求めて親を頼ることをしないことがあります。多くの場合、年長児は1人で遊ぶ方が好きで、誰か(特に家族以外の人)と親密な関係を築くことはありません。他の小児と交流する際、コミュニケーションを取るために視線を合わせたり顔に表情を浮かべたりしないことがあります。また、他者の気分や表情を読みとることが苦手です。いつどのように会話に加わればよいのか分からず、その場にふさわしくない言葉や人を傷つける言葉に気づきにくいことがあります。これらの要因により、患者は奇妙で風変わりな人物とみなされ、社会的に孤立することがあります。

言語

最重症の患児は話せるようになりません。話せるようになる場合でも、話し出すのは普通の小児よりずっと遅く、変わった言葉の使い方をすることがあります。多くの場合、自分に話しかけられた言葉をそのまま繰り返したり(反響言語)、自発的な言葉の代わりに記憶している原稿にあるような表現を使ったり、代名詞を入れ替えて使ったりします。特に、自分のこと指して「わたし」「ぼく」ではなく「あなた」「きみ」を使うことがよくあります。会話が双方向的ではないことがあり、会話があるとしても、考えや感情を共有するのではなく、一方的に表現したり要求したりするために会話を用いる傾向があります。また、自閉スペクトラム症の人は、会話するときの声の抑揚や高さが独特なものになりがちです。

行動、興味、活動

自閉スペクトラム症の人は、新しい食べものやおもちゃ、家具の配置、衣服などの変化に、しばしば強い抵抗を示します。また、特定の対象(生き物以外)に異常な執着を示すことがあります。繰り返して物事を行うことがよくあります。より年少の小児や重症の小児は、体を揺らす、手をたたく、ものを回転させるなどの特定の行動を繰り返す傾向があります。なかには、頭を何かにぶつける、自分をかむなどという行動を繰り返す結果、けがをする小児もいます。比較的軽症の患者は、同じビデオを何回も見たり、毎回の食事に同じものを食べることにこだわったりします。自閉スペクトラム症の人は、非常に特殊な、しばしば異常な興味を示すことがあります。例えば、掃除機に夢中になったりします。自閉スペクトラム症の人は、感覚が鋭すぎたり鈍すぎたりすることがよくあります。ある種の臭い、味、手触りをとても嫌がったり、人々が苦痛に感じる痛み、熱さ、冷たさに異常な反応を示すことがあります。

ある音を無視したり、ある音には極めて大きな苦痛を感じたりします。特定の臭い、味、質感を極度にはねつけたり、他の人が苦痛を感じるような痛み、熱感、冷感に奇妙な反応をすることがあります。ある音は無視し、別な音を非常に煩わしがることもあります。

知能

自閉スペクトラム症の人の多くには、ある程度の知的能力障害(知能指数[IQ]が70未満)がみられます。作業能力にばらつきがあります。たいていの場合、運動能力や空間認知の検査結果は、言語能力の検査結果よりも優れています。自閉症の小児の中には、複雑な暗算をこなす能力や卓越した音楽の才能など、その子だけにしかない断片的な特殊能力がみられる小児もいます。残念ながら、このような人は多くの場合、その才能を生産的な形や社会的な相互関係の中で活かすことができません。

自閉スペクトラム症の徴候がすべて現れていなくとも、診断は可能ですが、以下のAとBの両方で困難があることが必要です。非常に様々な程度の徴候がみられますが、小児の機能が障害されている必要があります。

A. 社会的コミュニケーションと対人関係を築くのが困難:

  • 他者と関わるのが苦手で、考えや感情の共有が困難

  • 言葉によらないコミュニケーション(例、アイコンタクトをとる、身振りや顔の表情を理解しまたそれらを用いる)が困難

  • 対人関係を発展させる、維持する、理解するのが困難

B. 行動、興味、活動の対象が限られていて、特定のパターンを繰り返す:

  • 反復動作や復唱

  • 頑固にいつもの習慣を守り、変更に抵抗する

  • 興味の範囲が非常に狭く、それだけに集中する

  • 味覚、嗅覚、触覚などの身体感覚が非常に鋭い、または鈍い

自閉スペクトラム症の診断

  • 医師による評価

  • 親や養育者からの報告

  • 自閉症用の標準化されたスクリーニング検査

自閉スペクトラム症の診断は、遊び部屋の状況の中で小児を注意深く観察するとともに、親と教師から詳しく話を聴くことによって下されます。年長児向けの社会的コミュニケーション質問表(Social Communication Questionnaire)や改訂乳幼児期自閉症チェックリスト修正版(フォローアップ付き)(Modified Checklist for Autism in Toddlers, Revised, with Follow-Up[M-CHAT-R/F])など、自閉症用の標準化されたスクリーニング検査は、より精密な検査が必要な小児を特定する助けになります。心理士や他の専門医は、より詳細な「自閉症診断観察法(Autism Diagnostic Observation Schedule)」や他のツールを用いることがあります。

標準化された検査に加えて、遺伝性代謝疾患や脆弱X症候群などの治療可能な病気や遺伝性の病気がないかを調べる血液検査や遺伝子検査も行います。

自閉スペクトラム症の治療

  • 応用行動分析

  • 教育プログラム

  • 言語療法

  • ときに薬物療法

応用行動分析は、特定の認知的、社会的、または行動的技能を段階的に小児に教える治療アプローチです。自閉スペクトラム症の小児では、小さな改善を強化して徐々に積み重ねていくことで、特定の行動を改善、変化、または発展させます。具体的な行動としては、社会的技能、言語やコミュニケーション技能、読書、学業のほか、セルフケア(例えば、シャワー、身だしなみを整えるなど)、日常生活技能、時間の厳守、仕事といった習得した技能などがあります。この治療は、進歩を妨げる可能性のある行動(攻撃性など)を最小限に抑えるためにも用いられます。応用行動分析は、個々のニーズに応じて調整することが可能で、通常は行動分析の認定を受けた専門家(認定行動療法士)が設計して監督します。米国では、応用行動分析は個別教育計画(Individualized Educational Plan:IEP)の一環として学校を通じて利用できる場合があり、多くの州で健康保険が適用されます。行動に基づくもう1つの集中的介入は、発達段階と個人差を考慮に入れた相互関係に基づくアプローチ(Developmental, Individual-differences, and Relationship-based:DIR®)モデルであり、フロアタイムとも呼ばれます。DIR®は、患児の興味や好みの活動を活用して、社会的交流技能やその他の技能の習得を支援します。現在のところ、DIR/フロアタイム®を支持する科学的根拠は応用行動分析より少ないですが、これら2つの療法はともに効果的である可能性があります。

ASDのある学齢期の小児に対する教育プログラムでは、社会的技能の育成や発話と言語の遅れに対処し、高校卒業後の教育または就職の準備を支援すべきです。

米国個別障害者教育法(Individuals with Disabilities Education Act:IDEA)は、公立学校に対して、自閉スペクトラム症の小児と青年に適切な教育を無償で提供することを義務づけています。教育は極力制限がなく、可能な限り包括的な環境で行わなくてはなりません。つまり、障害のある小児が障害のない小児と交流する機会や、その地域にある施設などの資源を同等に使う機会を、あらゆる場面で与えられる教育環境です。障害をもつアメリカ人法(Americans with Disability Act)リハビリテーション法第504条(Section 504 of the Rehabilitation Act)にも、学校やその他の公共施設における配慮に関しての規定があります。

薬物療法薬物療法では自閉スペクトラム症そのものを治すことはできません。しかし、フルオキセチン、パロキセチン、フルボキサミンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、自閉スペクトラム症の患者の儀式的行動を軽減するのにしばしば効果的です。自傷行為を減らすために抗精神病薬のリスペリドンが使用される場合がありますが、副作用(体重増加や運動障害など)のリスクを考慮する必要があります。不注意、衝動性、多動のある患者には、気分安定薬や精神刺激薬が役立つことがあります。

食事療法、胃腸療法、免疫療法などを試みる親もいますが、これまでのところ、このような治療法が自閉症に有効であるという証拠はありません。コミュニケーションの促進、キレート療法、聴覚統合訓練、高気圧酸素療法などの代替療法は、効果的であると証明されてはいません。そのような治療法を考慮する場合、家族は便益とリスクについて小児のかかりつけ医と相談すべきです。

自閉スペクトラム症の予後(経過の見通し)

自閉スペクトラム症の症状は一般に生涯続きます。小学校に入る年齢までに小児がどれだけコミュニケーション可能な言語能力を獲得できるかによって、予後は大きく異なります。例えば、標準的な知能指数(IQ)検査の結果が50未満の場合など、知能検査の数値が低い自閉スペクトラム症の小児は、成人になっても緊密な支援が必要になる可能性が高くなります。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  1. 米国個別障害者教育法(米国個別障害者教育法(Individuals with Disabilities Education Act:IDEA)):障害のある子どもが無料で適切な公教育を受けられるようにし、特別教育と関連サービスを受けられるようにする米国の法律

  2. 障害をもつアメリカ人法(Americans with Disability Act):障害に基づく差別を禁止する米国の法律

  3. リハビリテーション法第504条(Section 504 of the Rehabilitation Act):障害のある人に一定の権利を保障する米国の法律

以下の組織は、自閉スペクトラム症の患者とその介護者に対して、支援、コミュニティ、および教育資源を提供しています。

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