小児に対する虐待とネグレクトの概要

(小児虐待)

執筆者:Alicia R. Pekarsky, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital
レビュー/改訂 修正済み 2025年 11月
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小児虐待には、小児に対して危害が及ぶか危害が及ぶ可能性がある、あるいは危害を示唆する脅しがある状況など、親、養育者、またはそれ以外の後見人による18歳未満の小児に対するあらゆる種類の虐待およびネグレクトが含まれます。小児に対するネグレクトとは、小児の身体的、情緒的な基本的ニーズを満たそうとしないことをいいます。小児虐待とは、小児に危害を加えることです。

  • 小児に対する虐待やネグレクトのリスクを高める要因としては、親が若年または一人親である、親自身が小児虐待またはネグレクトの被害者である、または親が個人的もしくは家族のストレス(食糧不安、経済的ストレス、親密なパートナーからの暴力、社会的孤立、精神衛生上の問題、物質使用症など)を抱えているなどがあります。

  • ネグレクトや虐待の被害を受けた小児は、疲れていたり、空腹であったり、不潔であったり、身体的な外傷、情緒面の問題、精神的な問題などを抱えている場合がありますが、虐待やネグレクトの明らかな徴候がみられない場合もあります。

  • 虐待が疑われるのは、けがのパターンからそのけがが偶発的なものでないと示唆される場合や、けがの様子が養育者の説明と食い違う場合、そのようなけがをするようなことをできるほどには成長していない場合(乳児がストーブに火をつけるなど)などです。

  • それ以上の被害から小児を保護する必要があり、その方法としては、養育者と小児に対するカウンセリング、安全で適切なケアを行えるように家族を支援する、入院などがあります。児童保護局や警察が介入することもあります。

小児虐待には、小児に対して危害が及ぶか危害が及ぶ可能性がある、あるいは危害を示唆する脅しがある状況など、18歳未満の小児に対するあらゆる種類の虐待およびネグレクトが含まれます。

ネグレクトは、小児の身体面、医療面、教育面、情緒面で必要不可欠なものを与えないことです。

虐待には、身体的虐待性的虐待心理的虐待があります。

小児に対するネグレクトと虐待が同時に行われることが多く、親密なパートナーへの虐待のような別の家庭内暴力に伴って行われることもよくあります。

親やその他の養育者もしくは親族、同居している人、または一時的に養育の責任を負う人(教師、コーチ、聖職者など)から、小児に対するネグレクトや虐待が起こることがあります。

米国では数百万人の小児、世界中では毎年何億人もの小児が小児虐待を受けています。小児の性的虐待率は男児よりも女児の方が高い一方、身体的虐待率は女児よりも男児の方が高いです。多くの小児は、身体的に非常に弱い立場にあり、言葉で自己防護したり、助けを求めたりすることができない2歳以下の時に被害者となります。

虐待またはネグレクトは、怪我、病気、低栄養、発達遅滞、心理的問題、さらには死に至ることもあります。ネグレクトや虐待はその行為による直接の危害に加え、精神疾患や物質使用症といった長期的な弊害のリスクを高めます。小児虐待は、肥満や心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの成人期の健康問題のリスク増加にも関連します。

米国では、小児虐待の報告の大半は、医師、看護師、教師、ソーシャルワーカーなど、法律によって義務付けられている専門家によって行われています。

小児に対するネグレクトと虐待の危険因子

小児ネグレクトや虐待は、個人的、家族的、地域社会的、社会的な要因が複雑に組み合わさって起こります。経済的ストレスや食糧不安があること、物質使用症や精神的な問題(パーソナリティ症、低い自尊心など)を抱えている、もしくはこれらの要因が複合的に存在することにより、親が子どもにネグレクトや虐待をする可能性が高くなります。親の持つ危険因子が多いほど、小児虐待が起こる可能性が高くなります。

親が子どもの頃に精神的虐待や身体的虐待、性的虐待を受けたことがある場合、自分の子どもを虐待する可能性がより高くなります。初めての子育てや、両親が10代であること、また5歳未満の子どもが数人いるような家庭でも、虐待のリスクが高くなります。

ときに情緒的な強い絆が親子間に形成されないことがあります。このような絆の欠如は、乳児期早期に親から分離された早産児病気の乳児、または生物学的血縁関係のない小児(例、継子)でより高頻度に生じ、虐待リスクが高くなります。

小児に対するネグレクトと虐待の種類

小児に対するネグレクトや虐待には、いくつかの種類があります。これらがときに同時に起こります。主に次の4種類があります。

さらに、小児に意図的に身体症状を引き起こしたり、小児の身体症状について嘘をついたり、身体症状を誇張したりすることで、有害な医学的評価と介入を招く可能性がある場合は、医療現場における小児虐待と呼ばれる虐待の一形態となります。

ネグレクト

ネグレクトとは、子どもの身体的、情緒的、教育的、医学的な基本的ニーズを満たそうとしないことをいいます。その人が虐待をしていることを知っていながら、親や養育者がその人に子どもを預ける場合、または幼児を付き添いなしで1人にしておく場合などがあります。ネグレクトには様々な種類があります。

身体的ネグレクトでは、親や養育者は、十分な食事、衣類、居住環境、監督、潜在的危害からの保護を与えません。

心理的ネグレクトでは、親や養育者は、愛情やその他の情緒的な支援を与えません。子どもは無視されたり、拒絶されたり、他の子どもや大人との交流を妨げられたりします。

医療ネグレクトでは、親や養育者は、けがや身体的または精神的な病気に必要な治療などの十分なケアを子どもに受けさせません。子どもが病気になったときに医療機関の受診を遅らせ、より重い病気にかかるリスクを高め、死亡に至らしめることさえあります。

教育的ネグレクトでは、親や養育者は、子どもを学校に入学させなかったり、公立学校や私立学校などの通常の学校へきちんと出席させなかったり、在宅教育を受けさせなかったりします。

ネグレクトは、多くの場合、親や養育者が、育児の中で小児にわざと危害を加えようとして起こしたものではないという点で虐待とは異なります。

ネグレクトは通常、不十分な育児技能、ストレス対処技能の不足、支援が得られない家庭環境、ストレスの多い生活環境など、複数の要因が組み合わさって生じます。ネグレクトは経済的ストレスと環境ストレスのある家庭で発生することが多く、特に、親に未治療の精神疾患(典型的にはうつ病双極症統合失調症)、物質使用症、または知的障害などがみられる場合に、その傾向が強まります。しかし、貧困は犯罪ではないことに注意することが重要です。健康の社会的決定要因(例えば片親の家庭、経済的ストレス、食糧や住居の確保の不安定さなど)による問題を抱える家庭の子どもは、利用可能な資源が少ないことにより、ネグレクトのリスクが生じます。

身体的虐待

過度の体罰も含めて、小児を身体的に虐げたり、危害を加えたりすることが、身体的虐待に該当します。具体的な形態としては、揺さぶる、落とす、たたく、かむ、やけどを負わせる(例、熱湯をかける、タバコを押し付ける)などがあります。この種の虐待は、米国の小児の死亡原因の10位以内に入っています。

どの年齢の小児も身体的虐待を受けることがありますが、乳児や幼児は自分自身で話すことができないため、虐待の繰り返しに対して特に脆弱です。また、こうした時期には、養育者は困難に直面し、いらだち、衝動のコントロールを失います。養育者をいらだたせることがらとしては、かんしゃくトイレトレーニング一定しない睡眠パターンコリックなどがあります。

乳児にみられる重篤な頭部外傷で、最も一般的な原因は、身体的虐待です。身体的虐待による腹部のけがは、乳児より幼児でよくみられます。乳幼児は、頭部が体に比べて大きく、首の筋肉が比較的弱いため、頭部および脊椎の損傷のリスクが高まります。

貧困および若年で片親であることは、身体的虐待のリスク上昇と関連しています。家族がストレスを抱えていると、身体的虐待の原因となります。このようなストレスは、失業、頻繁な転居、友人や家族からの社会的孤立、家庭内暴力の存在などによるものです。親は扱いにくい行動をとる子ども(短気、要求が多い、活発すぎる)や特別な配慮が必要な子ども(発達障害や身体障害がある)に対していらだちを覚えやすい傾向があり、それゆえ身体的虐待をする可能性が高くなります。

別のストレスがある中で困難な事態が発生したことがきっかけとなって身体的虐待が引き起こされることがよくあります。そういった困難な事態には、失業、家族の死、しつけの問題などがあります。親に物質使用症がある場合、子どもに対して衝動的で自制できない行動をとることがあります。親に精神的な問題がある小児も、虐待を受けるリスクが高くなります。

子どもの頃にネグレクトや虐待を受けたことがある親は情緒的に成熟していないことや、自尊心が低いことがあります。虐待をする親たちは、子どもを無制限かつ無条件の愛情をくれる源とみなし、自分がかつて受けられなかった支援を子どもに期待することがあります。その結果として、親は、子どもが自分に与えることができるものに対して非現実的な期待を抱き、いらだちやすくなって衝動を抑えられなくなり、自身が一度も受けたことがないものを子どもに与えることができない可能性があります。

性的虐待

成人、またはかなり年上(発達上の年齢または実年齢)の、もしくはより力のある小児(ときに4歳の年齢差と定義されます)が、自分の性的満足を満たすために他の小児に対して行う行為は、すべて性的虐待とみなされます(小児性愛を参照)。

性的虐待には次のようなものがあります。

  • 小児の腟、肛門、口に挿入行為を行う

  • 挿入は行わないが性的な意図で小児の体に触る(性的いたずら)

  • 小児に虐待加害者の性器やわいせつ物を見せる

  • 性的なメッセージや写真を(通常は携帯電話経由で)小児と共有したり(セクスティング)、小児の写真を投稿したりする

  • 他人との性行為に強制的に参加させる

  • ポルノ作品に小児をキャスティングする

小児同士の性的な遊びは、性的虐待に含まれません。性的な遊びは、年齢と発達が近い小児間で強制や脅迫なしに起き、互いの性器を視認したり触れたりした場合は、典型的には、正常な行動とみなされます。小児との特定の状況を、性的虐待とみなすべきか否か明らかにしようとする場合、小児の年齢、力、体格や人気度などを考慮に入れることが重要です。典型的に、年長の小児と年少の小児との年齢差が大きいほど、両者の間の情緒面と知的面の成熟度や社会的地位の差は大きくなります。そうした差がある程度大きくなる(一部の法域では4歳差と法的に定義されています)と、差が非常に大きいことから、年少者が年長者との行為に正当に「合意した」とはいえなくなります。

性的虐待

小児を心理的に虐待するようなことを言ったり、そのように振る舞うことが、心理的虐待です。心理的虐待によって、自分は役に立たない、自分には欠点がある、自分は愛されていない、自分は必要とされていない、自分は危険にさらされている、他の人の要求を満たさないと自分に価値はないといった感情が小児に芽生えます。

心理的虐待には次のようなものがあります。

  • 怒鳴ったり叫んだりして叱りつける

  • 小児の能力や小児が成し遂げたことをけなす

  • 罪を犯したり、アルコールや薬物を使用したりするなどの逸脱行動や犯罪行動をそそのかす

  • 小児をいじめたり、脅迫したり、おびえさせたりする

このような心理的虐待は長期間にわたって行われる傾向があります。

特別な配慮

医療現場における小児虐待

医療現場における小児虐待(以前は代理ミュンヒハウゼン症候群と呼ばれ、現在は、他者に負わせる作為症と呼ばれている)は、あまり多くないタイプの小児虐待で、親または養育者が健康な小児を病気であると意図的に医師に思わせるものです。養育者は、一般的には小児の症状について虚偽の情報を与え、例えば、小児が吐いたり腹痛を訴えたりしていない場合でも、小児が吐いている、痛みを訴えているなどと言います。しかし、養育者は、例えば小児に適応ではない、または処方されていない薬剤を投与するなど、症状を引き起こすようなことを行う場合もあります。養育者は、ときには臨床検査に供されるサンプルに血液や他の物質を加えることにより、あたかも小児が病気であるように見せかけることもあります。

このタイプの小児虐待の被害者は、不必要で有害または有害となりうる診察、検査や治療(処置または手術を含む)を受けます。

文化的因子

文化的規範は様々で、人は地域、国、市や町、社会グループ、年齢層、出身国、宗教、その他の要因によって定義される1つ以上の文化の基準に従います。社会的に受け入れられている行動と虐待の違いは、文化によって異なります。しかしながら、文化的規範は、あらゆる行動の言い訳として用いるべきではありません。しかし、正常な行動と虐待の区別を理解することは困難なことがあります。

文化が違えば、小児をしつける方法も違います。痛みを与える身体的な罰はどのようなものでも体罰といいますが、なかには体罰を用いる文化もあります。むちで打つ、火や熱湯で熱傷(やけど)を負わせるなど、重い体罰は身体的虐待です。しかし、たたくなどの比較的程度の軽い体罰の場合、社会的に許容される行動と虐待との境界は様々な社会規範の間であいまいです。

文化的または宗教的な伝統や儀式の一部として受け入れられ、重要視されている慣行の中には、そのような慣行が始まった文化以外の状況では虐待と見なされるものもあります(例えば、女性性器切除)。あざや軽いやけどを引き起こす可能性のある民間療法(コイニングやカッピングなど)の中には、一部の人によって虐待とみなされるものもあります。

宗教的または文化的集団の信条の中には、治療を求めない、特定の種類の治療(輸血、ワクチン接種など)に同意しない、または何かを疾患(けいれんなど)ではなく、神聖または精神的なものの象徴とすると考えるものなどがあります。このような集団に属する人は、糖尿病性ケトアシドーシス髄膜炎などに対する治療を受けさせないことがあり、その結果、小児が死亡する場合があります。そのような行動は、親または養育者の信条にかかわらず、一般的にはネグレクトとみなされます。小児が病気で不健康な場合に治療を拒否すると、裁判所の命令による治療を含む法的介入が行われることがあります。予防接種やその他の予防医療の拒否が法的に医療ネグレクトとみなされるかどうかは、法域によって異なります。

小児に対するネグレクトと虐待の症状

ネグレクトや虐待によって現れる症状は、ネグレクトや虐待の種類や期間、小児一人ひとり、および特定の状況に一部依存して異なります。症状には、明らかな身体的外傷に加えて、情緒障害や行動問題、精神疾患もみられます。このような問題は、ネグレクトや虐待を受けた直後に現れる場合や、しばらく経ってから現れる場合があり、長引く場合もあります。

身体的ネグレクト

身体的ネグレクトを受けた小児は、低栄養状態に見えたり、疲れていたり、不潔だったり、適切な服装をしていない場合や発育不良の場合があります。また、学校を休みがちになることもあります。極端な例では、小児が一人きり、または兄弟姉妹だけで暮らしていて、成人が監督していないことが発覚する場合もあります。監督されていない小児は、病気になったりけがを負ったりすることがあります。身体的および情緒的発達が遅れることがあります。ネグレクトを受けた小児のなかには、飢えや野ざらしにされることによって死亡する小児もいます。

身体的虐待

身体的虐待の徴候としては、あざ、熱傷(やけど)、みみず腫れ、咬まれた跡、すり傷などがよくみられます。これらの傷跡は、小児を虐待するのに使われたベルト、電気コード、延長コードなどの形をしていることがよくあります。小児の皮膚には、たたくまたはつかんで揺することによる、手形や指先の円形の跡がみられることがあります。また、タバコや熱湯による熱傷が、腕や脚、体の他の部分にみられることもあります。猿ぐつわをはめられた小児では、口角部に皮膚の肥厚や瘢痕(はんこん)がみられることがあります。髪を引っ張られた小児では、髪の一部が抜けているか、頭皮が腫れていることがあります。口の中、眼、脳、その他の内臓に重い損傷があっても、外見からは分からないことがあります。

しかし、身体的虐待の徴候は、多くの場合はっきりしません。例えば、小さいあざや赤紫色の点々が顔、首、またはその両方に現れることがあります。骨折など、すでに治り始めた古い傷の跡が認められることもあります。虐待によるけがで外見が損なわれることもあります。

幼児が故意に熱湯(熱い風呂など)に入れられると、熱湯による熱傷を負います。このような熱傷が殿部にみられる場合があり、ドーナツのような形になることがあります。熱湯に浸からなかった皮膚や、浴槽の冷たい底に押し付けられた皮膚には熱傷は認められません。熱いお湯が飛び散って、殿部以外のあちこちに小さい熱傷ができていることもあります。

乳児は、現在では虐待による頭部外傷と呼ばれる脳損傷を負うことがあります。これは、激しく揺さぶったり、頭を硬い物にぶつけたりすることによって引き起こされます。虐待による頭部外傷という用語は、揺さぶりだけではない行為が関与している可能性があるため、「揺さぶられっ子症候群」という言葉から変更されたものです。虐待による頭部外傷がみられる乳児は、ぐずったり嘔吐したりすることもあれば、外傷の目に見える徴候がないにもかかわらず深く眠っているように見えることもあります。このような睡眠は脳が損傷を受けて腫れているためで、これは脳と頭蓋骨の間の出血(硬膜下出血)により生じている可能性があります。また、眼球の後ろにある網膜に出血(網膜出血)がみられることもあります。肋骨やその他の骨(または関節を形成する骨の末端)が骨折することがあります。

長い間虐待を受けていた小児は、怖がりで神経過敏にみえることがよくあります。また、睡眠を十分にとれないこともよくあります。ときに、虐待を受けている小児に注意欠如多動症(ADHD)の症状が出ているようにみえることがあり、このような場合には、誤って注意欠如多動症と診断されます。さらに、抑うつ状態になり、不安を感じ、心的外傷後ストレスの症状がみられる場合もあります。このような小児は、暴力的にふるまったり、希死念慮を表現する傾向にあります。

性的虐待

行動の変化は、性的虐待を受けた小児によくみられる徴候です。このような変化は、突然みられる場合や極端に変化する場合があります。小児が攻撃的になったり、内気になったり、恐怖症や睡眠障害が発生することもあります。性的虐待を受けた小児は、過度に自分に触る、または適切でない方法で他人に触れるなど、問題のある性行動を示すことがあります。親や他の家族から性的虐待を受けた小児は、矛盾した感情を覚えることがあります。この場合、加害者に対して感情的には親しさを感じる一方で、裏切られた思いを抱きます。

性的虐待により身体的外傷がみられることもあります。小児では、性器、肛門、口の内部や周囲にあざ、裂傷、出血、びらん、隆起、刺激が生じることがあります。性器や直腸に受けた傷のために、最初は、歩いたり座ったりすることが難しくなることもあります。女児では腟分泌物、かゆみ、あざ、または出血がみられることがあります。男児では内出血、出血、性器周囲の刺激が生じることがあります。 淋菌感染症クラミジア感染症ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症などの性感染症や他の感染症がみられる場合もあります。妊娠することもあります。

心理的虐待とネグレクト

一般に、心理的虐待を受けた小児には、精神的に不安定で、他者との関係に不安を抱く傾向がみられます。その原因は、自分の要求を一貫して満たしてもらったり、期待通りに受け入れてもらったりした経験がないためです。他の所見は、小児が心理的虐待を受けた特定の方法によって異なります。小児の自尊心が低下することがあります。小児を怖がらせたり脅したりすると、ビクビクして内気になることがあります。この場合、臆病で、疑い深く、優柔不断で、成人を喜ばせようと必死になることもあります。また、見知らぬ人に近づくなどの不適切な行動をすることもあります。他人との関わりを許されなかった小児は、社会環境の中では落ち着きがなくなり、通常の人間関係を築きにくくなることがあります。犯罪を犯したり、物質使用症を発症することもあります。より年長の小児では、きちんと学校へ行かなくなったり、行っても成績がよくなかったり、先生や友人と関係を築きにくくなったりします。

心理的ネグレクトを受けた乳児は、発育不良に陥ることが多く、感情が欠落しているように見えたり、周囲に関心がないように見えたりすることがあります。心理的ネグレクトを受けた小児の行動は、知的障害や身体的な病気と間違われることもあります。心理的ネグレクトを受けた小児では、社会的技能(他者とうまく付き合う能力)の欠如や、発話や言語能力の発達の遅れがみられることがあります。

知っていますか?

  • 性的虐待を受けた被害者のほとんどが、加害者を知っています。

小児に対するネグレクトと虐待の診断

  • 医師による病歴聴取と診察

  • 傷の写真

  • 身体的虐待では、ときに臨床検査や画像検査(X線検査やCT検査)

  • 性的虐待では、ときに感染症の検査、ときに法医学的証拠として体液、体毛やその他の物質のサンプル採取

ネグレクトや虐待に気づくのは難しい場合が多く、小児が重度の低栄養状態に見えたり、明らかな傷があったり、ネグレクトや虐待の現場を他の人が目撃するといったことがない限り、なかなか発見されません。ネグレクトや虐待は、長年にわたって気づかれずにいることもあります。

ネグレクトや虐待が気づかれない理由は、数多く存在します。例えば、虐待を受けている小児が、それを普通のことだと思って話そうとしない場合があります。また、身体的虐待や性的虐待を受けた小児が虐待のことについて進んで話をしたがらないことも多く、その理由は恥ずかしさや仕返しをおそれてのことですが、虐待を受けるのが当然だと思っている場合さえあります。身体的虐待を受けた小児が意思疎通できる年齢の場合は、直接尋ねられれば、たいてい加害者を特定し自分の身に起こったことを説明します。しかし、性的虐待を受けた小児では、秘密にすると加害者に誓っている場合や、心の傷があまりに深いために虐待の事実を話すことができない場合や、具体的に質問されても虐待を否定する場合さえあります。

ネグレクトや何らかの虐待が疑われる場合は、他の種類の虐待の兆候を探します。また、子どもの身体的、環境的、感情的、社会的ニーズも十分に評価します。医師は、小児と養育者との相互関係をできる限り観察するようにもします。病歴の記録として、開示があった場合は聴取内容の正確な引用を書きとめ、あらゆる傷の写真を撮ります。

ネグレクトと心理的虐待

ネグレクトを受けている小児は、医療従事者が、けがや病気、問題行動など、直接関係のない問題を調べているときに特定されることがあります。小児の身体面や精神面での成長が通常より遅いことや、予防接種や健診をほとんど受けていないことに医師が気づくことがあります。しばしば教師やソーシャルワーカーがネグレクトの第一発見者となります。小児が学校の無断欠席を繰り返すことで、教師が気づく場合もあります。

心理的虐待は、通常、学校の成績がよくない、問題行動があるといった別の問題を調べているときに発見されます。心理的虐待を受けた小児では、身体的虐待や性的虐待がないかも調べます。医師は、病歴聴取と身体診察を行います。これには、コルポスコープ(医師が性器の組織を拡大して観察できる特殊な装置)による外性器の検査を含む場合と含まない場合があります。

身体的虐待

まだ伝い歩き(家具につかまって歩く)ができない乳児に、あざやひどいけががみられる場合に、身体的虐待が疑われることがあります。乳児が普段よりも眠りがちであったり、嗜眠状態の場合は、脳損傷がないか調べます。幼児や年長の小児では、脚の後ろ側や殿部など、普通みられないような場所にあざがみられる場合に虐待が疑われることがあります。小児が歩き始めようとしているときにあざができることはよくありますが、そのようなあざは、一般的に膝、すね、あご、額など、体の前側の骨が突き出た部分にできます。

親が小児の健康状態についてほとんど知らなかったり、小児の重篤なけがについて無関心であったり、大げさに心配するといった様子がみられる場合も、虐待が疑われることがあります。自分の子どもを虐待している親は、何が原因で小児がけがをしたのかを医師や友人に話すことを嫌がることがあります。親の説明が小児のけがの発生時期やけがの状態と一致しない場合や、話すたびに説明が変わる場合もあります。虐待をする親は、子どものけがの治療をすぐには求めないことがあります。

医師が身体的虐待を疑う場合、通常は小児の外傷(あざなど)の写真を撮ります。脳の画像検査(CT検査MRI検査)を行うことがあります。また、X線検査を行って、過去に受けた傷の痕跡や最近のけががないか調べることもあります。小児が2歳未満の場合は、全身の骨のX線検査を行って骨折がないか調べることもよくあります。

乳児の肋骨骨折
詳細を非表示

このX線写真には、乳児に生じた肋骨骨折(赤色でハイライトされた部分)が写っています。これは小児虐待を示唆するものです。

PHOTOSTOCK-ISRAEL/SCIENCE PHOTO LIBRARY

性的虐待

性的虐待の診断は、多くの場合、被害を受けた小児の話や虐待行為の目撃者の話に基づいて下されます。しかし、多くの小児は、恥ずかしく感じていたり、虐待者による害やその他起きることを恐れていたりするため、性的虐待について話すことに消極的です。虐待は、小児の行動が変化した場合にのみ疑われることがあります。幼児が性感染症にかかっている場合、医師は性的虐待を疑うべきです。

医師が小児の性的虐待を疑う場合は、たとえ転院させなければならないとしても、通常は性暴力被害者支援看護職による診察を受けるよう手配します。そこで、体液および皮膚表面のスワブなど、性的接触の可能性を示す法的証拠を収集します。この証拠の収集は多くの場合、レイプキットと呼ばれます。目に見える傷があればすべて写真撮影を行います。一般的には性感染症の検査も行い、適切な場合は妊娠検査も行います。

小児に対するネグレクトと虐待の治療

  • けがの治療

  • 適切な当局への報告やときに家庭からの退避など、小児の安全を確保する対策

必要に応じて、身体的な外傷や病気に対して治療が行われます。けがや重度の低栄養、その他の病気の治療のために、入院が必要な小児もいます。手術を必要とする重度のけがもあります。虐待による頭部外傷の可能性がある乳児は、通常、入院させます。ときには、安全な場所が確保できるまで、さらなる虐待から保護するために、健康な小児を入院させることもあります。身体的虐待(特に頭部外傷)は、発達に対して長期にわたり影響を及ぼします。頭部外傷がある小児は、言語療法や作業療法などの早期介入が必要である場合があるため、すべて医師の診察を受ける必要があります。

性的虐待を受けた小児には、ときにHIV感染症を含めた、性感染症を予防する薬が投与されることもあります。虐待を受けていると疑われる小児には、直ちに支援を行う必要があります。性的虐待を受けていた場合、初めは影響がないようにみえる小児でも、長期的な問題がよく発生するため、精神科医の診察を受けさせます。長期にわたって心理カウンセリングが必要になることもよくあります。性的虐待以外の虐待を受けた小児に行動障害や情緒障害がみられる場合、医師はカウンセリングを受けさせます。

被害児の当面の安全確保

小児に対するネグレクトや虐待が疑われるケースを、速やかに地域の適切な児童保護局に届け出ることが法的に義務づけられている人を報告義務者といいます。医師や医療専門職だけでなく、仕事やボランティア活動を通じて小児と接する多くの人々が、報告義務者とみなされています。この中には、教師、保育者、里親、警察官、司法関係者なども含まれています。医療従事者は親に対して、法に従って当局への報告が行われること、それをもとに当局から親へ連絡があり面接を受けたり、自宅への訪問調査が行われる場合があることを伝えるべきです(しかしこれは義務づけられてはいません)。状況によっては、地元の警察当局に連絡する場合もあります。

法律で義務づけられてはいませんが、報告義務者以外の人でも、ネグレクトや虐待に気づいたり、それを疑ったりした場合には、通報するように奨励されています。正当な理由に基づいて誠意ある虐待報告を行う者は誰でも、その行為のために逮捕されたり訴えられたりすることはありません。虐待を通報したり支援を得るには、全米小児虐待ホットライン(National Child Abuse Hotline、1-800-4-A-CHILD[1-800-422-4453、米国のみ]【訳注:日本の場合は児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」】)に連絡します。

報告を受けた小児虐待のケースは、まず詳しい調査が必要か否か調べられます。報告されたケースで詳しい調査が必要なものについては、地元の児童保護局の担当者による調査が行われ、担当者は虐待などの事実があるかどうかを判断しようと試み、様々な勧告を行います。児童保護局の担当者による勧告には、様々な社会的サービス(小児と家族が対象)の適用、必要であれば保護あるいは栄養補給を目的とした一時的入院措置、一時的な親族の家への引き取り、一時的なフォスターケア(里親制度)の適用などがあります。医師は、部分的には被害の重症度に左右される子どもの緊急医療ニーズに基づいて、何をすべきかを決定します。ソーシャルワーカーがこれらの医師を援助することがよくあります。児童保護局の代表者が、小児の安全計画または処分を決定します。

フォローアップケア

医師、その他の医療従事者、ソーシャルワーカーなどからなるチームが、ネグレクトや虐待の原因やその影響への対処を試みます。このチームは、法的システムと連携して小児のケアを調整します。このチームはまた、被害を受けた小児にとって何が必要かということについて家族が理解するのを手助けし、地元の様々なサービスを受けられるよう支援します。例えば、親が医療費を支払う余裕がない小児には、国の医療費援助を受ける資格が与えられます。他の団体や国の制度により、食事や保護施設が提供されることもあります。親が物質使用症の問題を抱えている場合は、適切な治療プログラムを受けるよう指導されることもあります。

地域によっては、子育てのためのプログラムや支援グループを利用できるところもあります。ソーシャルワーカーや被害者擁護団体などから定期的または継続した連絡を受けることが家族にとって必要な場合もあります。

家庭からの退避

児童保護局の最終目標は、小児を安全で健全な家庭環境に戻すことです。虐待の性質やその他の要因に応じて、小児を家族とともに帰宅させる場合や、家庭から引き離して、小児をさらなる虐待から守ることのできる親戚の家や里親のもとで養育させる場合があります。このような措置は一時的であることが多く、例えば、親が住む家や仕事を見つけるまでの間や、ソーシャルワーカーによる定期的な家庭訪問が可能になるまでの間に適用されます。残念ながら、ネグレクトや虐待の再発はよくみられます。

ネグレクトや虐待が激しいケースでは、長期の退避を考慮することや親権が永久に剥奪されることがあります。このような場合は、小児の養子縁組が決まるか、成人するまでの間はフォスターケア(里親)による養育を続けます。

小児に対するネグレクトと虐待の予防

小児虐待とネグレクトを防止する最良の方法は、始まる前に阻止することです。親を支援し良好な養育技能を指導するプログラムが、非常に重要かつ必要です。親は、積極的なコミュニケーション、適切なしつけ、子どもの身体的な要求や情緒的な要求にこたえる方法を学ぶことができます。小児虐待とネグレクトを防止するプログラムは、親子関係を改善し、親に社会的支援を行う助けにもなります。

親を支援するこのようなプログラムは、家庭、学校、診療所や精神科クリニック、地域の保健所やセンターで催されます。プログラムは個別のこともあればグループで行われることもあります。

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