子宮内膜症

執筆者:James H. Liu, MD, Case Western Reserve University School of Medicine
レビュー/改訂 修正済み 2024年 4月
v803366_ja

子宮内膜症では、正常な状態では子宮内膜(子宮の内側を覆っている層)にしか存在しない組織(子宮内膜組織)が子宮以外の場所で認められます。

  • 子宮内膜組織が子宮以外の異常な場所にできる理由は不明です。

  • 子宮内膜症は妊よう性(妊娠のしやすさ)を低下させたり、痛み(特に月経前、月経中、性交時)を生じさせたりすることがありますが、何の症状も引き起きないこともあります。

  • 通常は、へその近くを小さく切開し、そこから腹部に観察用の細い管状の機器(腹腔鏡)を挿入して、子宮内膜組織を調べる検査(腹腔鏡検査)を行います。

  • 痛みを軽減したり、異常な場所にできた組織の増殖を遅らせたりするために薬剤も使用されます。

  • 手術を行って、異常な場所にできた子宮内膜組織を、ときに子宮と卵巣と併せて切除することもあります。

子宮内膜症:異常な場所にできた組織

子宮内膜症では、通常は子宮内膜(子宮の内側を覆っている層)にしか存在しないはずの組織が子宮以外の場所に大小の病変として出現します。なぜ、どのようにして発生するのかは解明されていません。

異常な子宮内膜組織がよくみられる部位は、卵巣や子宮を支える靱帯で、比較的まれですが卵管にみられることもあります。しかし、異常な場所にできた組織は骨盤内の別の場所に現れることもあれば、腹部やあるいはまれに肺や心臓を覆っている膜上に出現することもあります。

異常な場所にできた子宮内膜組織は、周囲の組織を刺激して、腹腔内の臓器の間に瘢痕組織の帯(癒着)を形成することがあります。異常な組織が卵管を閉塞させることで不妊症の原因になる場合もあります。

子宮内膜症は慢性の病気で、痛みを伴うことがあります。子宮内膜症の診断には、異常な場所にできた子宮内膜の組織(子宮内膜組織)を直接観察しなければならず、それには一般的に腹腔鏡検査などの外科的な処置が必要になることから、子宮内膜症の状態にある女性の正確な数は不明です。全女性の約18%が子宮内膜症と診断されています。子宮内膜症の女性の割合は、不妊症の女性(約30%)や慢性骨盤痛がある女性(約40%)で高くなっています。診断時の平均年齢は28歳ですが、子宮内膜症は青年やまれに女児に発症することもあります。

異常な子宮内膜組織がよくみられる部位としては、以下のものがあります。

  • 卵巣

  • 子宮を支えている靱帯

  • 腹部および骨盤の内側を覆っている組織(腹膜)

発生が比較的まれな部位としては、卵管、小腸や大腸の外側の表面、尿管(腎臓と膀胱をつないでいる管)、膀胱、腟と直腸の間の空間、腟などがあります。まれに、胸膜(肺を覆っている膜)、心膜(心臓を包んでいる袋状の膜)、外陰部、子宮頸部、腹部手術の傷口などで子宮内膜組織が増殖することもあります。

異常な場所にできた子宮内膜組織は、月経周期中に正常な子宮内膜組織と同じようにホルモンに反応します。そのため、異常な子宮内膜組織から出血や痛みが生じることがあり、特に月経前や月経中に顕著になります。症状の重症度、この病気の妊よう性や臓器機能への影響には、非常に大きな個人差があります。

病気が進行すると、異常な場所にできた子宮内膜組織は徐々に大きくなる傾向があります。新たに別の場所に広がることもあります。しかし、子宮内膜症の異常組織の量や進行の速さにも大きな個人差があります。異常組織は発生した臓器の表面にとどまる場合もあれば、奥深くに浸入(浸潤)して結節を作ることもあります。

子宮内膜症の原因

子宮内膜症の原因は不明ですが、以下のようないくつかの仮説が提唱されています。

  • 月経中に剥がれ落ちた子宮内膜の一部が、経血とともに腟から体外に排出されずに、卵管を逆流し卵巣の方に移動して腹腔内に到達する。

  • 子宮内膜の細胞が血管やリンパ管を通って別の部位に移動する。

  • もともと子宮以外の場所にあった細胞が子宮内膜細胞に変化する。

子宮内膜症は家系内で受け継がれることがあり、子宮内膜症患者の第1度近親者(すなわち母親、姉妹、娘)ではより多くみられます。以下のような特徴がみられる女性では、発症の可能性が高くなります。

  • 第1子の出産時の年齢が30歳以上である

  • 出産経験がない

  • 初潮が通常より早い、あるいは閉経が通常より遅い

  • 月経周期が短く(27日間未満)、月経が8日間を超えて続き、出血量が多い

  • 子宮に特定の構造的異常がある

  • 母親が妊娠中に流産予防のためにジエチルスチルベストロール(DES)という薬剤を服用していた(米国では1971年に使用禁止になった)

以下のような特徴がみられる女性では、子宮内膜症が発症する可能性が低くなるとみられています。

  • 何度も妊娠を経験している

  • 初潮が通常より遅い

  • 授乳期間が長い

  • 低用量の経口避妊薬を長期間使用したことがある

  • 定期的に運動を行っている(特に15歳未満で始めた場合や1週間当たり4時間以上行っている場合、あるいはその両方)

子宮内膜症の症状

子宮内膜症の3つの古典的症状は、月経周期中の痛み、性交時の痛み(その痛みは通常、腟表層の組織ではなく、腹部の深部に生じます)、および不妊症です。月経周期とは関連のない下腹部および骨盤部の痛み(骨盤痛)が生じる場合もあります。

子宮内膜症の症状の重さは、異常な場所の子宮内膜組織の量だけでは決まりません。異常な組織が大きくても症状が出ない人がいる一方、異常な組織は少量であるのに、耐えがたい痛みがある人もいます。多くの女性で、病変の発生から数年間は痛みが起こりません。一部の患者では、性交に痛みを伴う傾向があり、特に月経前と月経中に生じます。

この痛みは通常、月経周期に合わせて変化し、月経前と月経中に悪化します。月経時の出血量が多くなったり、月経前に少量の性器出血が起きるなどの月経異常を伴うこともあります。異常な場所にできた子宮内膜組織は、正常組織と同じホルモン(卵巣から分泌されるエストロゲンプロゲステロン)に反応します。そのため、異常な子宮内膜組織から月経時に出血が起き、炎症が生じることがあります。異常な組織は、しばしば筋肉のけいれんや痛みを引き起こします。

症状は、異常な子宮内膜組織の部位によっても様々です。部位別に現れる可能性のある症状は以下の通りです。

  • 卵巣:内部が血液で満たされた腫瘤(子宮内膜症性嚢胞)が形成され、破裂、漏出、または捻転を起こすと、痛みのほか、ときに吐き気や嘔吐が生じることがある

  • 大腸:腹部膨満、排便時の痛み、下痢や便秘、月経中の下血

  • 膀胱:恥骨の上の辺りの痛み、排尿時の痛み、血液が混じった尿、頻尿と尿意切迫

異常な場所にできた子宮内膜組織やその組織からの出血によって、周辺の組織が刺激されることがあります。その結果、瘢痕が形成され、腹腔内の臓器の間に線維性の帯状の組織(癒着)ができることがあります。異常な場所の子宮内膜組織や癒着によって臓器の機能が妨げられる可能性があります。まれに、癒着により腸がふさがってしまうこともあります。

重症の子宮内膜症は、異常組織やそれにより生じた瘢痕組織によって卵子が卵巣から子宮に移動するための通路がふさがれることで、不妊症の原因になる場合があります。軽症の子宮内膜症も不妊症の原因になる場合がありますが、その仕組みは解明されていません。

妊娠中には、子宮内膜症の活動性が一時的に低くなり(寛解状態になり)、ときにその状態が生涯続くこともあります。また閉経後には、エストロゲンおよびプロゲステロンの分泌量が低下するため、子宮内膜症の活動性は低下する傾向にあります。

子宮内膜症の診断

  • 子宮内膜組織の有無を調べる腹腔鏡検査、ときに生検を併用

  • ときに骨盤内超音波検査またはMRI検査

典型的な症状がみられる場合や原因不明の不妊症がみられる場合に、子宮内膜症の可能性が疑われます。ときには、内診で患者が痛みや圧痛を訴えたり、子宮の後方や卵巣の付近を触診した際に、医師がしこりや組織のかたまりを触知する場合もあります。

画像検査では子宮内膜症を確実に検出できない場合があります。しかし、骨盤内超音波検査やMRI検査では、子宮内膜症が原因の可能性がある卵巣嚢胞(子宮内膜症性嚢胞)が描出されることがあり、体を傷つけることなく子宮内膜症を評価するのに役立ちます(切開が不要であるため)。MRI検査では、子宮内膜組織に特徴的な固有の信号を検出できる場合がありますが、子宮内膜組織の小さな病変は検出することができません。

子宮内膜症を診断するには、医師が腹腔鏡(観察用の細い管状の機器)を用いて腹腔内を調べ、そこに子宮内膜組織があることを確認します。多くの場合、へそのすぐ上または下を小さく切開して、そこから腹腔鏡を腹腔内(腹部臓器周辺の空間)に挿入します。次に、腹腔に二酸化炭素のガスを注入し、腹腔内を膨張させて臓器を観察しやすくします。腹腔全体を観察します。

腹腔鏡検査は病院で行い、通常は全身麻酔が必要です。入院の必要は通常ありません。腹腔鏡検査は腹部に軽度から中等度の不快感を引き起こすことがありますが、通常は数日ほどで通常の生活を再開できます。

腹腔鏡検査中に異常組織が発見されれば、診断を下すのに生検は必要ありませんが、診断の確定は生検の結果によります。生検では、腹腔鏡の内部を通した専用の器具を使って、組織のサンプルを採取します。採取されたサンプルは顕微鏡で検査します。入院が必要になるのは、通常はかなり大量の異常組織を摘出する場合だけです。

異常組織の位置によっては、内診での腟の診察中に生検を行う場合や、肛門から内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を挿入して大腸の下部、直腸、および肛門を観察する検査(S状結腸内視鏡検査)や内視鏡で膀胱を観察する検査(膀胱鏡検査)の際に生検を行う場合もあります。ときに、腹部により大きな切開(開腹と呼ばれる処置)が必要になることもあります。

子宮内膜症は以下の要素に応じて、微症(I期)、軽症(II期)、中等症(III期)、重症(IV期)の4段階に分類されます。

  • 子宮内膜症組織の量

  • その部位

  • 深さ(臓器の表面にとどまっているか臓器内部深くまで広がっているのか)

  • 子宮内膜症性嚢胞と癒着の有無と数

不妊症の女性では、原因が子宮内膜症と別の病気(卵管の異常など)のどちらであるかを判断する目的で検査を行うことがあります。

子宮内膜症の治療

  • 痛みに対し非ステロイド系抗炎症薬

  • 卵巣の活動を抑制する薬剤

  • 子宮内膜症組織を除去または破壊する手術

  • ときに子宮のみまたは子宮と卵巣を摘出する手術

子宮内膜症の治療法は、患者の症状、妊娠計画および年齢と子宮内膜症の病期によって異なります。

子宮内膜症の治療に使用される薬剤

通常は、痛みを軽減するために非ステロイド系抗炎症薬NSAID)が使用されます。妊娠を計画していない症状の軽い患者では、これで十分な場合もあります。

ホルモン避妊薬が使用されることもあり、卵巣の活動を抑制し、それにより異常な子宮内膜組織の増殖を遅らせることで、出血や痛みを軽減します。ホルモン避妊薬は主に、すぐに妊娠する予定のない女性に対して使用されます。経口避妊薬は継続的に使用できます(特に月経中に痛みが悪化する場合)。以下の薬剤が一般的に使用されます。

  • 混合型経口避妊薬エストロゲンとプロゲスチン)

  • エストロゲン療法を受けられない女性にはプロゲスチン

以下の薬剤は通常、NSAIDやホルモン避妊薬で症状が十分にコントロールされない場合にのみ使用されます。

  • ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(GnRHアゴニスト:リュープロレリンなど)

  • GnRHアンタゴニスト(エラゴリクス[elagolix]やレルゴリクスなど)

  • アロマターゼ阻害薬(例:アナストロゾール、レトロゾール)

  • ダナゾール(合成された男性ホルモン[アンドロゲン])

しかし、薬剤の使用だけでは子宮内膜症の病変を根絶できない場合もあり、たとえそれができたとしても、より根治的な治療を行って卵巣の機能を完全かつ永久的に停止させない限り、薬剤の使用を中止すると再発する可能性が高くなります。

GnRHアゴニストは、エストロゲンプロゲステロンの分泌を促進するために脳から卵巣に送られる信号を遮断します。その結果、これらのホルモンの分泌量が減少します。GnRHアゴニストの副作用としては、ホットフラッシュ、関節のこわばり、気分の変化、腟の乾燥などがあります。GnRHアゴニストを4~6カ月継続して使用すると、骨密度の低下を引き起こし、骨粗しょう症につながることがあります。そこで骨密度の低下を最小限に抑えるため、少量のプロゲスチンまたはビスホスホネート系薬剤(アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸など)を投与する場合があります。子宮内膜症が再発すれば、再び治療が必要になることがあります。

GnRHアンタゴニストのエラゴリクス(elagolix)は、GnRHアゴニストと同様に卵巣からエストロゲンがつくられるのを抑制し、長期間使用すると骨密度の低下を引き起こします。6カ月を超えて服用する場合は、骨密度の低下を最小限に抑えるために女性に少量のプロゲスチンを投与することがあります。

レルゴリクス(別のGnRHアンタゴニスト)をエストラジオールおよびノルエチステロンと併用する治療法が子宮内膜症の治療として研究されています。この併用療法により、ホットフラッシュや骨量の減少は最小限に抑えられますが、24カ月以上服用すると骨量の減少が続き、不可逆的となる可能性があります。

アロマターゼ阻害薬は、GnRHアナログで子宮内膜症を抑制できない場合に使用されることがあります。

ダナゾールは、卵子の放出(排卵)を阻害します。しかし、ダナゾールには体重増加や男性的な特徴の出現(体毛の増加、頭髪の脱毛、乳房の縮小、声の低音化など)といった副作用もあります。これらの副作用によりその使用は限定されます。

経口避妊薬は、ダナゾールまたはGnRHアゴニストによる治療の後に、子宮内膜症の進行を遅らせ、痛みを和らげる目的で使用されることがあります。

子宮内膜症の手術

中等症から重症の子宮内膜症患者の大半では、最も効果的な治療法は、異常な部位にできた子宮内膜組織と子宮内膜症性嚢胞を除去または破壊することです。通常、こういった外科的処置はへその近くを小さく切開して、そこから腹部の中に腹腔鏡を挿入して行われます。このような治療は以下の場合に必要になることがあります。

  • 下腹部または骨盤部の重度の痛みを薬剤で軽減できない

  • 下腹部または骨盤部に生じた癒着によって重大な症状が引き起こされている

  • 異常な子宮内膜組織によって片側または両側の卵管がふさがれている

  • 子宮内膜症性嚢胞がみられる

  • 子宮内膜症が不妊症の原因になっていて、患者が妊娠を希望している

  • 子宮内膜症が性交時の痛みを引き起こしている

しばしば、診断のための腹腔鏡検査の際に、異常な場所にある子宮内膜組織を切除または破壊できる場合があります。ときに腹腔鏡下手術の際に、子宮内膜組織を破壊または除去するため、電気焼灼器(電流によって熱を発生させる装置)やレーザーなどが使用されることもあります。ときに、子宮内膜組織を切除するために開腹手術(腹部を切開して行う手術)が必要になります。

子宮内膜症性嚢胞(子宮内膜症による卵巣嚢胞)は、内部の液体の吸引(ドレナージ)を行うよりも切除した方が再発の可能性が低いため、通常は切除します。

手術では、異常な場所にある子宮内膜組織を、卵巣を傷つけない範囲でできるだけ多く取り除きます。そのため、手術後も妊よう性を維持できる可能性があります。手術後には、妊娠率が上昇します。すべての病変組織を除去しきれない場合は、GnRHアゴニストによる治療が行われることがあります。しかし、この種の薬剤によって妊娠の可能性が高まるかどうかは分かっていません。子宮内膜症の女性でも、体外受精などの生殖補助医療を利用することで、妊娠が可能になる場合があります。

病変組織を取り除く手術は一時的な対策にしかなりません。病変組織を切除した後、卵巣の機能を抑制する薬剤を使用したり、卵巣を摘出しない限り、ほとんどの女性で子宮内膜症が再発します。

卵巣は摘出せずに子宮を摘出する方法(卵管卵巣摘出術を伴わない子宮摘出術)は、妊娠の希望がない女性においてしばしば適切であり、特に薬剤では腹部や骨盤部の痛みが軽減されない場合の手段となります。

ときに子宮に加えて、両側の卵巣の摘出も必要になります。これらの手術は、子宮摘出術と両側卵管卵巣摘出術と呼ばれます。閉経時のようにエストロゲンの分泌量が減少するため、閉経と同じ影響が現れます。そのため50歳未満の女性では、手術後の更年期症状を軽減するためにエストロゲン療法を行う場合もあります。このような女性の多くはプロゲスチンの投与も受けます。プロゲスチンは、異常な子宮内膜組織が残存した場合の再増殖を予防する目的で追加されます。50歳以上の女性には、卵巣を摘出した後も続く症状を軽減するために、プロゲスチンだけを使用することもできます。

子宮摘出術と両側卵管卵巣摘出術は、例えば以下のような場合に行われます。

  • 女性(通常は閉経が近いか、今後の妊娠を希望していない女性)が根治的治療(病気を完全に取り除く治療)を望む場合

  • 子宮内膜症が再発した場合(多くは何度もの再発)

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS