エボラワクチン

執筆者:Margot L. Savoy, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University
Reviewed ByEva M. Vivian, PharmD, MS, PhD, University of Wisconsin School of Pharmacy
レビュー/改訂 修正済み 2025年 7月
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rVSV-ZEBOVは、ザイール・エボラウイルス(Zaire ebolavirus)によって引き起こされるエボラウイルス感染症の予防のために米国で使用可能な唯一のワクチンです。また、欧州連合、カナダ、および中央、東、西アフリカのいくつかの国で使用が承認されています。rVSV-ZEBOVは、ザイール・エボラウイルス種のみに対する保護作用があり、他のエボラウイルスやマールブルグウイルスに対する保護作用はありません。           (マールブルグウイルス感染症はエボラウイルス感染症と類似していますが、異なる病気です。)

別のワクチンによる治療法としては、Ad26.ZEBOVとMVA-BN-Filoの2種類のワクチンがあります。これらのワクチンは、米国での使用は承認されていませんが、コンゴ民主共和国でのエボラウイルスの大流行時に使用されました。これらのワクチンは、ザイール・エボラウイルスによるエボラウイルス感染症の予防に用いられます。

免疫化の基礎知識も参照)

ワクチンの種類

rVSV-ZEBOVワクチンは病原性を弱めて(弱毒化)いますが、生きたエボラウイルスを含有する組み換え型弱毒化生ウイルスワクチンです。この弱毒化したエボラウイルスは研究室で製造されており、他の物質と再結合しています。ウイルスは弱毒化されているため、エボラウイルス感染症を引き起こすことはありませんが、人の免疫系に強い反応を誘発します(能動免疫化を参照)。

rVSV-ZEBOVワクチンは、エボラウイルス感染症の大流行が発生した地域の住人に迅速に配布するために、スイスに備蓄されています。

Ad26.ZEBOVとMVA-BN-Filoワクチンはベクターワクチンと呼ばれ、無害にするために改変したエボラウイルスの遺伝物質を含有しいます。この遺伝物質は、細胞に侵入するのを助ける無害なウイルス(ベクター)中に導入されています。これらのワクチンは、人に免疫反応を引き起こしますが、エボラウイルス感染症を引き起こすことはありません。

エボラワクチンの用量および推奨事項

rVSV-ZEBOVワクチンは、筋肉内に1回注射します。

Ad26.ZEBOVとMVA-BN-Filoワクチンは、2回に分けて筋肉内に注射します。

このワクチンを接種すべき人

rVSV-ZEBOVワクチンは、以下のことを行っているために、エボラへの職業曝露のリスクが高い米国の18歳以上の人に推奨されています。

  • エボラウイルス感染症の大流行に対応する

  • 米国連邦政府指定のエボラ治療センターで医療従事者として勤務している  

  • 米国のバイオセーフティーレベル4の施設で研究室職員またはその他のスタッフとして勤務している

  • ラボラトリーレスポンスネットワーク(Laboratory Response Network) 施設の研究室職員またはその他のスタッフとして勤務している

Ad26.ZEBOVとMVA-BN-Filoワクチンは、エボラウイルスの大流行が発生した地域に滞在、またはエボラウイルス感染症の流行地域に滞在している1歳以上の人に推奨されています。

このワクチンを接種すべきでない人

エボラワクチンに含まれるいずれかの成分に対して、生命を脅かす重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー反応など)を起こしたことがある人は、このワクチンを接種するべきではありません。米のたんぱく質に対するアレルギー反応を起こしたことがある人も、このワクチンを接種するべきではありません(このワクチンは米のたんぱく質を使って製造されています)。

病気(HIV感染症など)によって免疫機能が低下している人や、免疫系を抑制する薬(コルチコステロイドや化学療法など)を使用する必要がある人は、このワクチンを接種することができないことがあります。免疫不全の人は、予防接種を受けるべきかどうかについて医師に相談するべきです。

高熱や重度の感染症がある人は、病気が消散するまでAd26.ZEBOVとMVA-BN-Filoワクチンの接種を待つべきです。

妊婦は、出産後までAd26.ZEBOVおよびMVA-BN-Filoワクチンの接種を受けるべきではありません。しかし、妊娠中にエボラウイルスに曝露されることを避けられない場合、感染のリスクに対するワクチン接種の潜在的な利益とリスクについて医師と話し合うべきです。妊婦がワクチン接種を受けることを選択した場合、妊娠第2期または第3期前半にワクチン接種を受けることが推奨されています。このワクチンは妊娠第1期または妊娠第3期後期には投与されません。

授乳中の人に対しての推奨事項は妊娠中のものと同様です。しかし、大流行時など、エボラウイルス感染症のリスクが高い場合は、Ad26.ZEBOVとMVA-BN-Filoワクチンが投与されることがあります。この場合、授乳中の人は、授乳から乳児が得る利益に対する感染症のリスクについて医師と話し合うべきです。

エボラワクチンの副作用

これら3種類のいずれのワクチンにおいても、最も一般的に発生する副作用は注射部位の痛みや腫れ、筋肉および関節の痛み、頭痛、疲労感などです。

rVSV-ZEBOVワクチンでは、その他の一般的な副作用として、注射部位の発赤、発熱、吐き気、関節痛と関節の腫れやこわばり、発疹、異常発汗などがあります。

Ad26.ZEBOVとMVA-BN-Filoワクチンのその他の一般的な副作用には、注射部位の熱感や悪寒などがあります。1~17歳の小児で最も多く報告された副作用は以下のとおりです。

  • 注射部位の痛み

  • 疲労感

  • 身体活動の減少

  • 食欲低下

  • 刺激に過敏になる

副作用の詳細については、添付文書を参照してください。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  1. 米国疾病予防管理センター(CDC):エボラ出血熱の基礎

  2. CDC:エボラワクチン情報提供文書

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