遺伝子診断技術とは、生物の遺伝子について理解したり評価したりするために用いられる科学的な方法のことです。
(遺伝子と染色体も参照のこと。)
遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)全体のうち、細胞の種類に応じた機能を果たす特定のタンパク質や特定の機能を果たすRNAの設計情報が記録(コード)されている領域のことです。
遺伝子診断技術は急速に進歩しています。遺伝子の一部をコピーしたり、遺伝子の変化を探索したりするために、様々な方法が用いられます。
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法は、遺伝子や遺伝子の一部コピーを大量に生成する実験技術で、これにより遺伝子研究が非常に容易になります。研究室では、特定の遺伝子など、デオキシリボ核酸(DNA)の断片をコピー(増幅)することができます。1つのDNA分子を30回複製すると、ほんの数時間で約10億個のコピーがつくられます。
遺伝子プローブ
遺伝子プローブを用いれば、ある遺伝子の特定の部分(遺伝子DNAの断片)や、ある遺伝子全体が、染色体上のどの位置にあるのかを知ることができます。プローブは、DNAの正常な部分とDNAの変異が起きた部分のどちらを特定することにも使用できます。クローニングあるいは複製されたDNAの一部に放射性同位元素または蛍光色素を結合させると、標識プローブができます。このプローブはDNA上の対合する部分を探し出して結合します。その後、この放射性プローブを高度な顕微鏡と写真技術を用いて検出することができます。遺伝子プローブを使えば、いくつかの疾患を出生前後に診断できます。将来は、遺伝子プローブで、多くの主要な遺伝性疾患を同時に検査されるようになるでしょう。
DNAマイクロアレイ(DNAチップ)
DNAチップは、DNAの変異を特定するのに用いることができる強力なツールです。マイクロアレイを用いることで、1つのサンプルだけで一度に数百万ものDNA変化について検査することができます。ゲノムワイド関連研究(GWAS)では、DNAマイクロアレイを用いて多数の対象者と正常な集団のDNAを比較することにより、病気のリスクの一因となりうる変異を特定します。
アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)
aCGHはマイクロアレイの一種で、特定の染色体にあるDNAの欠失や複製を特定するため目的で現在広く用いられています。このアレイでは、多数のプローブを用いて、対象者のDNAが基準の遺伝子型(個々人で異なる遺伝子の組合せや遺伝子構成のこと)と比較されます。患者のDNAと基準とするサンプルに、様々な色の蛍光色素が加えられます。DNAの一部が欠失していると、その人のDNAサンプルでは基準サンプルと比べて蛍光色素の量が少なくなり、この差がプローブによって検出されます。一部分が二重または三重に重複していると、その人のサンプルでは基準のサンプルと比べて蛍光色素の量が多くなり、この差がプローブによって検出されます。これらのプローブを使用して、全体の遺伝子型を検査することができます。
次世代シークエンシング技術
次世代シークエンシング技術では、遺伝子型(またはゲノム)全体を小さな断片に分割し、その一部または全部のDNA配列を解析して、より小さな遺伝子とDNAの断片まで検出することができます。その後、結果を処理能力の高いコンピュータで解析します。単一または複数の塩基の変化のほか、あるべき塩基が欠けている領域や塩基が間違った位置に挿入されている領域を特定することが可能です。この技術にかかる費用は、以前と比べて劇的に下がっていて、今も下がり続けています。装置や計算方法の改良も続いています。
以上のような変化の一部は、医師が遺伝性疾患を診断する上での手がかりになります。次世代シークエンシング技術は非常に感度が高いため、母親から採取した血液サンプルに含まれる胎児のDNAを検出して解析することで、胎児にダウン症候群かどうかを判定することが可能となっています。しかし、遺伝子型の解析では膨大な量の情報が得られるため、医師が結果を理解して解釈すること(例えば、重要な差をランダムな変化やささいな差と区別すること)を難しくする様々な問題が発生することがあります。そうした問題があるとしても、これらの技術は遺伝学的検査の柱になっています。



