糖尿病網膜症

執筆者:Sonia Mehta, MD, Vitreoretinal Diseases and Surgery Service, Wills Eye Hospital, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
Reviewed BySunir J. Garg, MD, FACS, Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 4月
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やさしくわかる病気事典

糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で網膜に損傷が生じる病気です。

  • 網膜の血管に漏れが生じることがあります。

  • 新しい血管ができることがあり、この血管がときに出血を起こしたり、瘢痕を形成したり、網膜剥離を起こすことがあります。

  • 点眼薬で瞳孔を散大した後に行う眼の診察に基づいて、診断を行います。

  • 糖尿病網膜症のある人や、糖尿病網膜症になるリスクのある人は、血糖と血圧をコントロールすることが重要です。

  • レーザー治療でそれ以上の損傷を防いだり、進行を遅くできることがあります。

米国および他の先進国では、主な失明原因の1つに糖尿病があります。インスリン治療を受けているかどうかにかかわらず、事実上すべての糖尿病患者で網膜に何らかの変化が現れます。糖尿病と高血圧はともに網膜に損傷を与える傾向があるため、糖尿病の人で血圧も高い人は糖尿病網膜症になるリスクがはるかに高くなります。妊娠は糖尿病網膜症を悪化させることがあります。

血液中のグルコース濃度(血糖値)が高いと、網膜も含めて全身の毛細血管の壁がもろくなり、傷つきやすくなります。網膜の血管が傷つくと網膜内に血液と液体が漏れます。

網膜症および視力障害の程度は、ほとんどの場合、以下のことに関係します。

  • 血糖値がどの程度良好にコントロールされているか

  • 血圧がどの程度良好にコントロールされているか

  • 糖尿病の罹病期間

一般的に、1型糖尿病になってから5年後に網膜症が現れます。2型糖尿病では何年間も診断されないことがあるため、2型糖尿病と診断された時点で網膜症が存在していることがあります。

網膜の病気の概要も参照のこと。)

糖尿病網膜症の症状

糖尿病では、眼に2種類の変化が起こります。

  • 非増殖性糖尿病網膜症 最初に起こる

  • 増殖性糖尿病網膜症 増殖性糖尿病網膜症:非増殖性糖尿病網膜症の後に起こり、より重症化します

非増殖性糖尿病網膜症

非増殖網膜症では、網膜の毛細血管から液体や血液が漏れ、小さい隆起ができることがあります。漏れた部分の網膜は腫れ、その部分の視野が障害されることがあります。

最初の段階では視力にほとんど影響が出ないこともありますが、徐々に視力が低下します。盲点が生じることもありますが、本人は気づかず、通常検査をして初めてわかります。黄斑(光を感知する細胞の密度が高い網膜の中央領域)の近くで漏れが生じると、中心視野がぼやけます。血管から液体が漏れたために黄斑部が腫れると(黄斑浮腫)、最終的に視力が著しく低下します。しかし、進行した網膜症でも視力障害が起こらないことがあります。

増殖性糖尿病網膜症

増殖網膜症では、網膜の損傷が刺激となって新しい血管が成長します。この新しい血管は異常に成長し、ときに出血を起こしたり瘢痕を形成します。瘢痕の範囲が広いと、網膜剥離が起こることがあります。増殖網膜症は、非増殖網膜症よりも、視力が低下する傾向があります。硝子体(眼球後部の内部にあるゼリー状の物質)への大量の出血や、牽引性網膜剥離と呼ばれる種類の網膜剥離のために、完全な失明やそれに近い状態に至ることもあります。新しい血管の成長は、痛みを伴う緑内障(新生血管緑内障)につながることもあります。新生血管緑内障では、虹彩にできた異常な血管が虹彩と角膜の間の空間を塞ぎ、眼からの体液の排出を妨げ、眼圧が高まります(緑内障)。黄斑浮腫は、視力の重大な低下を引き起こす可能性があります。

増殖性糖尿病網膜症の症状には、かすみ目、飛蚊症(ひぶんしょう、黒い斑点が飛んでいるようにみえる)、または視野がチカチカ光る現象のほか、痛みを伴わない突然の重度の視力障害などがあります。

糖尿病網膜症の診断

  • 医師による眼の診察

  • 蛍光眼底造影

  • カラー眼底写真撮影と光干渉断層法

非増殖性および増殖性の糖尿病網膜症は、検眼鏡で網膜を調べることで診断します。蛍光眼底造影は、漏れの起こっている場所、血液の流れが悪い領域、新しい異常血管が形成されている場所を特定し、網膜症の程度を判断し、治療計画を立て、治療結果を監視するのに役立ちます。フルオレセイン蛍光眼底造影検査では、網膜のカラー写真を撮影します。

光干渉断層撮影(画像検査の一種)は、黄斑浮腫の重症度と治療に対する反応を評価するのに役立ちます。

糖尿病網膜症の治療

  • 血糖値と血圧をコントロールするための対策

  • 黄斑浮腫に対し、眼内への薬剤の注射

  • レーザー光凝固術

  • ときに硝子体切除術

糖尿病網膜症の治療は、血糖値と血圧のコントロールを目標として行われます。

黄斑に体液がたまった人(黄斑浮腫)には、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬と呼ばれる特定の薬(ラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリベルセプト、ファリシマブなど)を眼に注射します。また、コルチコステロイドのインプラントを注射して、コルチコステロイドの一定濃度を眼にゆっくりと放出させることもあります。コルチコステロイド薬であるデキサメタゾンを含むインプラントは、持続性の黄斑浮腫がある人に有用です。コルチコステロイド薬のフルオシノロンを含むインプラントは、一部の国では糖尿病による黄斑浮腫の患者に利用できます。黄斑浮腫を薬剤で緩和することで視力が改善することがある。

光凝固術では、レーザー光線を眼内の網膜に照射して網膜内での異常な新生血管の増殖を遅らせ、血管からの漏出を減らします。レーザー光凝固術は必要に応じて繰り返し行います。損傷を受けた血管から大量に出血している場合は、硝子体切除術という手術が必要になることもあります。これは、硝子体で満たされている空間から血液を取り除く手術です。硝子体切除術により、硝子体出血では多くの場合に視力が改善し、牽引性網膜剥離でも視力が良くなることがあります。レーザー光凝固術で視力が改善することは滅多にありませんが、それ以上の悪化を防ぐことができます。

糖尿病網膜症の予防

糖尿病網膜症を予防する最善の方法は、糖尿病を管理し、血圧を正常範囲に保つことです。糖尿病患者は、網膜症になっても早期に発見して治療を始められるように、毎年点眼薬で瞳孔を散大して眼の検査を受けるべきです。糖尿病のある妊婦は、このような眼の検査を約3カ月ごとに受けるべきです。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

    1. 国立眼病研究所(National Eye Institute):成人と小児を対象とした眼の健康に関する学習教材(英語とスペイン語)や、普及キャンペーンへのアクセスが掲載されています。適切な検索用語を入力するだけです。

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