肺の吸虫感染症

執筆者:Chelsea Marie, PhD, University of Virginia;
William A. Petri, Jr, MD, PhD, University of Virginia School of Medicine
Reviewed ByChristina A. Muzny, MD, MSPH, Division of Infectious Diseases, University of Alabama at Birmingham
レビュー/改訂 修正済み 2023年 9月
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特定の肺吸虫属の吸虫は、肺の感染症を引き起こします。

  • 生や加熱調理が不十分な、または酢漬けした状態で、幼虫を含むシストが寄生する淡水のカニやザリガニを摂取すると、この吸虫に感染します。

  • ほとんどの感染者には症状は現れませんが、そうでない場合には、下痢、腹痛、発熱、せき、かゆみの他、後に肺やその他の臓器への損傷を原因とする症状がみられることがあります。

  • たんに含まれた虫卵や、嚥下したたんに含まれていた虫卵が便中に発見されると、この感染症の診断が下されます。

  • 体内の吸虫を駆除するために、プラジカンテルや他の薬が投与されます。

吸虫は寄生性の扁形(平たい形)動物です。吸虫には多くの種があり、それぞれの種は、異なる体の部位に感染する傾向があります。肺吸虫(Paragonimus)属には30以上の種があり、そのうちの10種が人に感染して肺吸虫症を引き起こします。しかし、肺吸虫症のほとんどの症例は以下の吸虫によって引き起こされます。

  • ウェステルマン肺吸虫

生や加熱調理が不十分な、または酢漬けした状態で、未成熟な吸虫(幼虫)が入ったシストが寄生している淡水のカニやザリガニを摂取すると、肺吸虫症に感染します。これらの感染症はアジアで最も多くみられます。(寄生虫感染症の概要も参照のこと。) その他の肺吸虫属菌は、アフリカ、中南米、まれに北米で肺吸虫症を引き起こします

シストが摂取されると、幼虫はシストから出て腸壁を貫通し、腹腔に入ります。その後、横隔膜を通過して肺に侵入します。幼虫はそこで成虫になり、産卵します。治療を受けない場合、成虫は20年間生存することができます。

吸虫は脳、肝臓、リンパ節、皮膚、脊髄に侵入することがあり、そこでシストを形成して産卵します。しかし、これらの臓器では、虫卵は体外に排出されないため、ライフサイクルを完了することはできません。

せきをする際には、虫卵が肺からたんに排出され、吐き出されたり、飲み込まれて便に排出されたりします。虫卵が淡水に入ると幼虫へとふ化し、巻貝に捕食されます。巻貝の体内で幼虫は泳ぐことができる形態(セルカリアと呼ばれます)に成長します。感染した巻貝から放出されたセルカリアは、カニやザリガニに感染してシスト(メタセルカリアと呼ばれます)を形成します。

世界保健機関(WHO)米国疾病予防管理センター(CDC)の肺吸虫症に関する情報も参照してください。

肺の吸虫感染症の症状

肺の吸虫感染症では、ほとんどの場合症状は現れません。しかし、吸虫に感染した直後に下痢、腹痛、発熱、せき、かゆみが生じることがあります。

その後、感染は肺を最も損傷しますが、皮膚を含む他の臓器に影響を及ぼすことがあります。慢性のせき、胸痛、呼吸困難などの症状が徐々に現れます。せきが出て喀血することもあります。また、皮膚にしこりができることもあります。

脳が侵されると、けいれん発作、言語の使用や理解の困難、視力の問題が起こることがあります。麻痺が現れることもあります。

肺の吸虫感染症の診断

  • たんのサンプルの検査

  • ときに寄生虫に対する抗体を検出する血液検査

  • 肺の画像検査

患者のたんや便に虫卵が発見されると、肺の吸虫感染症の診断が下されます。肺から体液のサンプルを採取し、虫卵の有無を確認することもあります。虫卵は一度にごく少数しか放出されず、定期的には放出されないため、発見が困難な場合があります。検査室は、虫卵を特定するために特別な濃縮技術を使用することがあります。

寄生虫に対する抗体を検出するための血液検査が役立つことがあります。(抗体とは、寄生虫などによる攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパク質のことです。)

肺やその他の臓器の損傷を調べるために、X線検査や胸部CT検査など、他の検査が行われることもあります。

肺の吸虫感染症の治療

  • 体内から吸虫を駆除する薬

  • ときに手術

肺の吸虫感染症は、体内の吸虫を駆除する薬であるプラジカンテルで治療します(駆虫薬と呼ばれます)。代替薬はトリクラベンダゾールです。

脳に感染している場合は、コルチコステロイド薬を投与することもあります。コルチコステロイド薬は、駆虫薬が吸虫を死滅させると起こる炎症をコントロールするのに役立ちます。発作をコントロールするために抗けいれん薬が用いられます。

皮膚にできた隆起や、まれに脳内のシストを切除するために手術が必要になることもあります。

肺の吸虫感染症の予防

肺の吸虫感染症が発生する地域への旅行者では、生や加熱調理が不十分な状態で淡水カニやザリガニを摂取しないことで感染を予防することができます。

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