核医学検査では、放射性核種を用いて画像を描出します。放射性核種は不安定な原子で、エネルギーを放射線の形で放出することで安定した原子になろうとする性質があります。放射性核種の多くは高いエネルギーをガンマ線(人の手によらない、自然環境で発生するX線)または粒子(陽電子放出断層撮影で使用される陽電子など)の形で放出します。
放射性核種は、甲状腺などの特定の臓器の病気を治療するのにも使用されます。
核医学検査の手順
放射性核種による標識
検査にあたり、放射性核種を用いて体の特定の部位に集まる物質を標識(目印を付けること)します。評価する部位によって使用する物質は異なります。
以下のように、ある部位で消費(代謝)される物質はそこに集積する傾向があります。
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ヨウ素は、甲状腺ホルモンの生産に使用されるため、甲状腺に集まります。
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ジホスホン酸は、骨が修復または再生されている部分に集まります。
これとは異なり、以下に挙げる物質は、異常が生じている特定の領域に集まります。
放射性核種の追跡
検査の流れ
胆嚢の撮影など一部の検査では、検査前数時間は飲食を控えるよう指示されます。通常、衣服を脱ぐ必要はありません。
撮影には通常15分くらいかかり、その間は動かずに横になっていなければなりません。場合によってはもう一度(たいていは数時間後に)撮影しなければならないことがあります。
検査の後は体からの放射性核種の排出を促すために、しっかり水分をとってください。すぐに普段の生活に戻ることができます。
ときに、体内に残存した放射性核種に反応して、安全対策用の放射線検知器が作動することがあります。検知器は、警官がもっていることもあれば、公共交通機関などのセキュリティの厳しい場所に設置されていることもあります。検査から何日後まで検知器が反応するのかは、放射性核種によって異なりますが、通常は数日までです。セキュリティ関連の問題を防止するため、核医学検査を受けた患者には、医師からその旨を記載した書類が渡されることがよくあります。
核医学検査の用途
核医学検査により、甲状腺、肝臓と胆嚢、肺、尿路、骨、脳、血管の一部など、体の様々な部位を評価できます。
体内では放射性核種で標識された物質(ヨウ素など)の多くが代謝されるため、場合によっては組織の形状だけでなく、組織がどの程度機能しているかについても知ることができます。
以下のように、体の部位または病気の種類に応じて、様々な放射性核種が使用されます。
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骨:テクネチウムは骨に集まることから、テクネチウムを用いて骨格を描出し、がんの骨への広がり(転移)や骨の感染症の有無を調べることができます。
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炎症:テクネチウムなどの放射性核種を用いて白血球を標識します。白血球は炎症や感染症のある部位に集まることから、炎症や感染を特定するのに役立ちます。
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出血:テクネチウムを用いて赤血球を標識することにより、腸の出血部位を特定するのに役立ちます。
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胆嚢と胆管:イミノ二酢酸を標識します。この放射性核種は、肝臓で胆汁胆嚢と胆管の病気の概要と同じように処理されます。そのため、イミノ二酢酸は胆汁が集まる場所に集まります。この検査は、胆管の閉塞、胆汁の漏れ、胆嚢の病気を調べるために用いられます。
核医学検査は、甲状腺がん、大腸がん、肝臓に転移した肺がんなど、特定のがんがないか確認する目的でも用いられます。
様々な核医学検査
核医学検査の短所
核医学検査による被曝量は、使用する放射性核種の種類や量によって変わります。例えば、肺の核医学検査(肺シンチグラフィー)で使用される線量は、胸部X線撮影の約75回分に相当します。検査の種類によって、使用される線量はもっと少ないこともあれば、もっと多いこともあります。
核医学検査では、放射性核種を注射してから、それが標的組織に到達するのを待って撮影しなければならないため、実施に時間がかかる場合もあります。
核医学検査で得られる画像は、X線検査、CT検査、MRI検査、その他の多くの画像検査ほど鮮明ではありません。
また放射線は胎児に影響を及ぼすため、妊娠しているか、妊娠している可能性のある女性は、そのことを主治医に伝えておく必要があります。