X線は高エネルギーの放射線で、程度の差こそあれ、ほとんどの物質を通過します。医療では、極めて低線量のX線を用いて画像を撮影し、病気の診断に役立てる一方、高線量のX線を用いてがんを治療します(放射線療法)。
X線は単純X線検査のように単独で使用することもありますが、コンピュータ断層撮影(CT)などの他の手法と組み合わせて使用することもあります。
X線検査の手順
X線検査の用途
マンモグラフィー
マンモグラフィーでも、X線を利用します。この検査により、乳がんを含む乳房の病気のスクリーニングと診断を行います。
乳房の組織は放射線に感受性があるため、被曝の問題が懸念されます。しかし特殊なマンモグラフィー装置とデジタル画像技術を利用すると、放射線被曝を最小限に抑えることができます。
様々なX線検査
造影剤を用いるX線検査
放射線不透過性造影剤を投与してから通常のX線検査を行うことも可能で、造影剤は通常、静脈内への注射、内服、または直腸内への注入により投与します。放射線不透過性造影剤を使用すると、撮影したい組織や構造物が周囲の組織より放射線を透過しなくなるため、その部分はX線写真上で白く写り、見えやすくなります。
従来の血管造影では、放射線不透過性造影剤を血管に注射してからX線撮影を行います。
消化管X線検査の前には、液体または食べものとともにバリウムまたはガストログラフィン(放射線不透過性造影剤)を飲むよう指示されることがあります。その状態でX線を照射するとバリウムまたはガストログラフィンにより食道、胃、小腸が描出されます。または、肛門に管を挿入してバリウムを注入し(バリウム注腸)、腸の下部(大腸)にポンプで慎重に空気を送り込んで腸を広げることもあります。これにより潰瘍、腫瘍、閉塞、ポリープ、憩室炎が見つけやすくなります。バリウムを腸に注入すると、検査中に軽度から中等度の腹痛と便意を生じる場合があります。
食道、胃、上部腸管の画像検査として、以前はバリウムまたはガストログラフィンを投与した後にX線撮影が行われていましたが、現在では内視鏡検査が主流になっています。
X線透視検査
この方法では、ビデオカメラの映像のような動画を撮影することにより、心臓の拍動、腸が蠕動(ぜんどう)により食べものを移動させる様子、肺が拡大収縮する様子など、臓器や組織が機能している様子を観察することができます。
一般的にX線透視検査は、以下の場合に用いられます。
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心臓電気生理検査(不整脈に対する検査)または冠動脈カテーテル検査の最中に、カテーテルがうまく心臓に届いているかを判定するため
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バリウムなどの放射線不透過性造影剤を(通常は経口で)投与し、消化管を評価するため
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筋骨格系の外傷の評価中に、骨と関節の動きを観察するため
X線検査の短所
単純なX線検査と比べて、より詳細な画像が得られる検査や、より安全または迅速に行える検査、より正確な診断を下すのに役立つ検査などがあります。
主な短所は以下の点です。
放射線
単純X線検査では、1枚の画像を撮影するのに使用する放射線量はごくわずかです。胸部X線検査で画像を1枚撮影する際の放射線被曝量は、たいていの人が2.4日間で自然環境から浴びる放射線量と同じくらいです(バックグラウンド放射線被曝)。
しかし、検査の種類によっては画像を何枚も撮影する必要があったり、高線量の放射線を使用したり、場合によっては高線量で何枚も撮影したりすることもあります。こうなると総被曝量が高くなりますが、以下はその例です。
X線透視検査は、単純X線検査と比べて高線量の放射線を使用しなければならないため、可能な場合は他の画像検査で代用します。
撮影者は患者の放射線被曝を最小限にするための対策を講じます。妊娠している、あるいは妊娠している可能性のある女性は、そのことを主治医に伝えておく必要があります。そうすれば、胎児を被曝から保護するために、撮影者が可能な限りの対策を講じることができます妊婦の腹部または骨盤を評価する際は、超音波検査などの放射線を使用しない画像検査で代用される場合もあります。とはいえ、腹部や骨盤以外の部位への単純X線検査であれば、通常、子宮にあたる放射線量は極めて微量です。
その他の短所
一部の特定の検査には被曝以外のリスクがあります。例えば、バリウムを飲んだり浣腸で腸に入れることにより、便秘を起こすことがあります。