(集団殺傷兵器による災害の概要 集団殺傷兵器による災害の概要 集団殺傷兵器とは、大量の死傷者が発生するような集団災害を引き起こすことができる兵器のことです。集団災害が起こると、非常に多数の死傷者が発生するため、利用可能な医療資源だけでは対応するのが不可能になるか困難になります。集団殺傷兵器には、例えば以下のように様々な種類があります。 化学物質... さらに読む も参照のこと)
生物兵器はテロリストにとっては理想的な兵器であるという見方もされています。こっそり散布でき、効果が現れるまでに時間がかかるため、実行犯が捕まりにくいからです。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、生物剤と毒素の優先度リストを作成しています(表「 CDCの優先度の高い生物剤および毒素 CDCの優先度の高い生物剤および毒素 」を参照)。最も優先度の高いものがカテゴリーAです。
多数の被害者を出す目的で生物兵器を意図的に使用する場合、おそらくエアロゾルの散布が必要です。そのような状況では 肺炭疽 炭疽 炭疽(たんそ)は、炭疽菌 Bacillus anthracisという棒状の グラム陽性細菌(図「 主な細菌の形」を参照)による感染症で、死に至る場合があります。炭疽は皮膚や肺のほか、まれに消化管に感染します。 人間が感染する通常の原因は皮膚接触ですが、炭疽菌の芽胞を吸い込んだり、汚染された肉を食べたりしても感染します。 炭疽菌の芽胞は生物兵器に使用される可能性があります。... さらに読む および 肺ペスト ペストとその他のエルシニア(Yersinia)感染症 ペストは、ペスト菌 Yersinia pestisという グラム陰性細菌によって引き起こされる重症感染症で、しばしばリンパ節や肺が侵されます。 この細菌は主にネズミノミを介して感染が拡大します。 ペストでは病原菌の種類により、発熱、悪寒、リンパ節の腫れ、頭痛、心拍数の増加、せき、呼吸困難、嘔吐、下痢などの症状が起こります。 血液、たん、リンパ節から出た膿のサンプルに含まれる細菌を特定し、診断を確定します。... さらに読む
が最も起こる可能性が高い2つの病気です。
認識
生物兵器の使用と病気の自然な流行との区別は困難な場合があります。病気の流行の発生源が自然なものではなく故意によるものであることを示す手がかりとしては以下のものがあります。
地域的に通常はみられない病気
患者集団の異常な分布
建物の中にいた人と外にいた人で大きく異なる発病率
地理的に異なる地域での別々の流行
同じ集団で異なる病気の複数同時または連続的な流行
まれな曝露経路(吸入など)
通常は動物に発生する病気が人間に発生している
通常は動物に発生する病気が、通常その動物種がいない地域で発生している
まれな重症度
感染因子のまれな菌株
標準治療で効果が得られない
高リスクの生物兵器による病気の患者の症状、診断、および治療については、本マニュアルの別の箇所で説明されています。
生物兵器に曝露した人を隔離し、曝露した人と接触したことが分かっている人を検疫しなければならないことがあります。
対応
生物兵器による病気の潜伏期間は比較的長いため、患者は病院で治療される可能性が高いと考えられます。患者には、関与した具体的な感染病原体に応じてワクチン、抗菌薬、または抗ウイルス薬が投与されます。ときに、患者と接触したことがある人に予防的治療が行われることがあります。多くの生物兵器には、特別な治療法やワクチンが存在しません。
本稿で述べられている見解は著者の見解であり、米国陸軍省、米国防総省、または米国の公式の方針を反映したものではありません。
さらなる情報
米国疾病予防管理センター:緊急時の準備と対応(Centers for Disease Control and Prevention: Emergency Preparedness and Response)