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熱中症の概要

執筆者:

David Tanen

, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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本ページのリソース

恒温動物である人間の体温は、外気温の変動にかかわらず、口腔温では37℃前後、直腸温では38℃前後に保たれています。体が正常に機能するためには、この体温を保つ必要があります。体温が上昇しすぎたり、逆に下がりすぎると、臓器に深刻な損傷が生じたり、死に至ることがあります。

体温調整

体は熱を産生したり放散したりして、体温を調整します。

熱を産生する代表的な方法として、食物をエネルギーに変換する際に主に生じる化学反応(代謝)があります。また、体を動かしたときの筋肉の動きによっても熱が生じます。

体は主に以下の方法で自らを冷やします。

  • 放熱

  • 水分の蒸発(主に汗)

放熱とは、温度の高い所から低い所へ熱が伝わることで、体温が外気温より高い環境では、主に放熱によって体を冷やします。放熱は、例えば電球が部屋に熱を放出する場合のように、物との接触を必要としません。

水分の蒸発が起こると、濡れた表面から大量の熱が奪われます。汗腺から出た水分である汗が蒸発することで、皮膚の温度が下がります。外気温が体温に近づいたときや運動中は、主に発汗によって体を冷やします。しかしながら、湿度(大気中の水分量)が高いと水分が蒸発しにくくなり、発汗の効果が妨げられます。そのため、高温多湿の環境では熱の放散が困難になります。

このほかにも、体を冷やす以下の方法があります。

  • 対流:皮膚の上を流れる冷たい水や空気へと熱が伝達されること

  • 伝導:体と接触している低温の表面へと熱が伝達されること。例えば、冷たい地面に横たわるときなど

熱中症

熱中症には、いくつかの種類があります。

これらの種類は、症状や、体温が上昇するかどうか(上昇する場合はどの程度上昇するか)、体内の水分や塩分がどの程度奪われるかという点で違いがあります。大量発汗が起きると、体から水分と塩分が奪われ、血圧の低下や痛みを伴う筋収縮 熱けいれん 熱けいれんは、重度の筋肉のけいれんで、非常に暑い中での長時間の運動、大量発汗、過剰な水分補給が重なった場合に起こります。 (熱中症の概要も参照のこと。) 熱けいれんは軽度の熱中症で、暑い中で活動する健康な人に起こる傾向があります。 汗をかいている間は、体の塩分(電解質)と水分が失われます。しかし水分を大量に摂取すると、塩分が薄まり、けいれ... さらに読む が起こります。体温が非常に高い状態が長時間持続すると、内臓が損傷を受けることがあります。

原因

熱中症は、熱が過剰に産生された場合や、熱の放散が無効な場合、あるいは両方で起こります。

過剰な熱産生は、以下のような原因で起こります。

熱の放散効率の低下は、高温多湿な環境で特によくみられます。以下の場合にも、熱の放散が著しく妨げられます。

熱中症の危険因子

熱中症を発症する機会は、例えば夏の暑い日に閉め切った車内に子どもが残された場合など、高温の状態に急激にさらされたときに増加します。暑い日中には、閉め切った車内の温度は、わずか15分間で27℃から49℃にまで上がります。周囲の環境が長い時間をかけて徐々に高温多湿になった場合には、体が適応するため、正常な体温を保ちやすくなります。この過程を順化といいます。順化は、高齢の人や身体的に活発でない人よりも、若い人や身体的に活発な人で速く起こります。

以下のような要因があると、熱中症が生じやすくなります。

  • 高齢者や幼児

  • 心臓や肺、腎臓、肝臓の機能不全を伴う病気など特定の病気がある

  • 利尿薬を使用している

  • 血液化学成分(電解質)が不均衡である

  • 脱水状態にある

加齢に関連する注意点:熱にまつわる問題

高齢者にとって、暑さは特に厳しいものですが、これにはいくつかの理由があります。

  • 高齢者は、若い人ほど、長時間の高温多湿に徐々に適応(順化)していく能力がありません。

  • 高齢者は、血液循環が悪く皮膚表面全体への血流が増えにくい傾向があるため、速やかに体自体を冷やすことができません。

  • 年齢が上がるにつれて、汗腺の数が減少する傾向があります。

  • 暑さを知覚しにくくなるため、気温の変化への反応が遅くなります。

  • あまり動けないために、暑い場所から移動するのが難しいことがあります。

心不全や腎不全など、高齢者でより多くみられる一部の病気も、体温を下げる体の機能を妨げます。高血圧の人は減塩食をとっていることが多いため、汗で失われる塩分を十分に補給できない場合があります。

また、加齢はのど渇きにも影響し、高齢者は若い人ほど、のどの渇きを感じません。そのため高齢者は脱水状態になりやすい傾向があり、これは気温が上昇しても汗をかきにくいということでもあります。

予防

熱中症を予防するためには、常識を働かせることが最善です。例えば、以下のようなことがあります。

  • 暑い自動車内など、閉め切った換気の悪い場所に幼児やペットを残すようなことは、たとえ数分間であっても絶対に避けるべきです。

  • 特に暑い日には、冷房のない換気の悪い屋内に高齢者や幼児を残すことがないようにしましょう。

  • 高温多湿の環境では、綿など通気性の高い素材でできた、体を締めつけない軽い衣類を着用するのがベストです。

汗をかくと体の水分と塩分が失われるため、水や薄い塩味の飲食物(スポーツ飲料や塩分を含むトマトジュース、冷たいブイヨンなど)を摂取して補充します。アルコール飲料やカフェイン入りの飲料は、水分補給に適しておらず、脱水 脱水 脱水は体内の水分が不足している状態です。 嘔吐、下痢、大量発汗、熱傷(やけど)、腎不全、利尿薬の使用により、脱水になる場合があります。 脱水が進むとのどの渇きを感じ、発汗や排尿も少なくなります。 脱水がひどくなると、錯乱やめまいを感じるようになります。 水を飲むか、場合によっては水分を静脈内投与して、失われた水分と血液中に溶けているナトリ... さらに読む を悪化させる可能性があります。

暑い場所での活動

非常に暑い場所での激しい活動は避けるべきです。高温環境での活動が避けられない場合は、水分を十分に摂取して、頻繁に皮膚に霧を吹いたり冷たい水で濡らしたりして皮膚を冷やすことが、正常に近い体温を保つのに役立ちます。必要な水分を補給するためには、のどの渇きがおさまってからも、さらに水分を摂取することが必要です。

運動や作業の後に体重が減少しているかどうかは、脱水状態の目安になります。体重が2~3%減少した人には、水分を多めに摂取するよう指示するべきです。また、元の体重と、翌日の運動や作業前の体重との差は、約1キログラム以内でなければなりません。体重が4%以上減った場合は、活動を1日制限する必要があります。

屋外での活動に従事する人は、塩分をとらずに水を大量に飲んでいると、血液中のナトリウムが薄くなります(これを低ナトリウム血症 低ナトリウム血症(血液中のナトリウム濃度が低いこと) 低ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が非常に低い状態をいいます。 大量の水分摂取、腎不全、心不全、肝硬変、利尿薬の使用など、多くの原因でナトリウム濃度が低下します。 症状は、脳の機能障害によるものです。 まず動作や反応が緩慢になり、錯乱がみられます。低ナトリウム血症が悪化するにつれて、筋肉のひきつりやけいれん発作が発生して無反応状... さらに読む といいます)。けいれん発作を引き起こし、死に至ることもあります。水分と一緒に、スナック菓子でも何でもよいので、塩分の多い食品をとると、低ナトリウム血症は治まります。正常な塩分濃度を保つために、このほかにも塩の錠剤や余分な塩分入りの市販のスポーツドリンクなどがよく用いられます。

知っていますか?

  • 運動中に大量の真水を飲むと、血液中のナトリウム濃度が危険な程度にまで薄まることがあります。

暑い場所で作業を行う場合、仕事の程度や量を徐々に増やしていくと、やがて順化が起こり、その結果、順化が起こる前には危険であった温度の場所でも、安全に作業できるようになります。一般に、暑い日中は、1日15分の中等度の活動(汗をかく程度)から始め、10~14日間かけて、激しい活動を90分間行う程度にまで徐々に増やしていくとよいでしょう。

熱中症の予防方法

  • 猛暑の時期には、特に高齢者や幼児がいる場合は十分な換気と冷房を確認しましょう。

  • 暑い日には車の中に、特に窓を閉め切った車内には子どもを残さないようにしましょう。

  • 暑い場所や換気の悪い場所で激しい活動を避けましょう。

  • 熱が逃げにくい厚い衣服は避けましょう。

  • 高温環境での活動が避けられない場合は、通気性の高い素材でできた、体を締めつけない衣類を着用し、頻繁に休憩を取り、扇風機を使い、のどが渇いていなくても数時間おきに水分を補給しましょう。

  • 運動中や作業中に体重が2%以上減少した場合は、水分を余分にとりましょう。

  • 運動中や作業中に体重が4%以上減少した場合は、活動を1日制限しましょう。

  • 大量の水を摂取する場合は、塩分を含む飲みものや食べものも摂取しましょう。

  • 暑い場所での長時間の活動が避けられない場合は、1日15分程度の軽い活動から始め、10~14日間かけて、活動の程度と時間を徐々に増やしていきましょう。

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