
ムコ多糖症は、複雑な糖分子を分解して、貯蔵するのに必要な酵素が欠損しているために起こります。
低身長、多毛、指の関節硬直、粗い容貌などが典型的な症状です。
診断は症状と身体診察の結果に基づいて下されます。
通常の寿命まで生きられる可能性もありますが、ムコ多糖症の種類によっては若年で死亡します。
治療では、酵素補充療法を生涯続けなければならないことがあり、骨髄移植が行われることもあります。
( 遺伝性代謝疾患の概要 遺伝性代謝疾患の概要 遺伝性代謝疾患とは、代謝の問題を引き起こす遺伝性の病気です。 遺伝とは、ある世代から次の世代へ遺伝子が受け継がれることを意味します。子どもは親の遺伝子を受け継ぎます。子どもが、代謝制御に関わる欠陥のある遺伝子を受け継ぐと、遺伝性代謝疾患を発症します。 代謝疾患には数百種類のものがあり、そのほとんどは非常にまれなものです。... さらに読む も参照のこと。)
ムコ多糖(グリコサミノグリカン)と呼ばれる複雑な糖分子は、体の様々な組織を構成する、不可欠な成分です。ムコ多糖症では、ムコ多糖を分解(代謝)して、貯蔵するのに必要な酵素が欠損しています。その結果、過剰なムコ多糖が血液に入り、全身に異常な蓄積が生じます。
ムコ多糖症の種類
ムコ多糖症は、どの酵素が欠損しているかによって多くの種類に分けられます。各種類にはローマ数字が付き、特定の名前(例えば、ハーラー症候群やハンター症候群)が付けられることもあります。
症状
ムコ多糖症の症状は、その種類によってわずかに異なりますが、一般には、乳児期から小児期にかけて低身長、多毛、発達異常が目立ち始めます。頭が大きく、額が突き出て、鼻が小さく、唇と舌が大きいため、顔のつくりが濃く見えることがあります。ムコ多糖症の種類によっては、 知的障害 知的能力障害 知的能力障害(一般に知的障害とも呼ばれます)とは、出生時や乳児期の初期から知能の働きが明らかに標準以下であり、正常な日常生活動作を行う能力が限られている状態です。 知的能力障害は、遺伝的な場合もあれば、脳の発達に影響を与える病気の結果として起こる場合もあります。 知的能力障害がある小児のほとんどでは、就学前まで目立った症状が現れません。 診断は正式な検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む がみられることがあり、生涯にわたり進行し続けることがあります。視覚や聴覚が障害される種類もあります。動脈や心臓弁が影響を受け、たいてい、指の関節がこわばります。
診断
出生前スクリーニング検査
症状と診察に基づく
骨のX線検査
ときに、画像検査またはその他の検査
出生前には、ムコ多糖症は、 羊水穿刺 羊水穿刺 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。 こうした遺伝子検査は侵襲的で、胎児への一定のリスクを伴います。 (遺伝性疾患の概要も参照のこと。) さらに読む または 絨毛採取 絨毛採取 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。 こうした遺伝子検査は侵襲的で、胎児への一定のリスクを伴います。 (遺伝性疾患の概要も参照のこと。) さらに読む といった出生前スクリーニング検査により診断できます。
出生後には、医師は通常、症状と身体診察に基づいてムコ多糖症の診断を下します。家族にこの病気の人がいることも診断の助けになります。尿検査は参考になりますが、あまり正確でない場合があります。X線検査では特徴的な骨の異常を確認できます。ムコ多糖症は血球を分析することでも診断できます。遺伝性の遺伝子疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いかどうかを判断するために行う検査である、 遺伝子検査 遺伝子スクリーニング スクリーニングではカップルの家族歴を評価し、必要に応じて血液や組織のサンプルを分析します。 遺伝子スクリーニングは、遺伝性の遺伝子疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いかどうかを判断するために行う検査です。すべてのカップルが遺伝子スクリーニングを受けることができますが、特に推奨されるのは以下の場合です。 パートナーの一方または両方に遺伝子異常があることが分かっている。 家系内に遺伝子異常を有する人がいる。... さらに読む も利用できます。
その他の検査は症状に応じて行います。例えば、心臓に問題がある小児は 心エコー検査 心エコー検査とその他の超音波検査 超音波検査では、周波数の高い超音波を内部の構造に当てて跳ね返ってきた反射波を利用して動画を生成します。この検査ではX線を使いません。心臓の超音波検査(心エコー検査)は、優れた画像が得られることに加えて、以下の理由から、心疾患の診断に最もよく用いられる検査法の1つになっています。 非侵襲的である 害がない 比較的安価である 広く利用できる さらに読む という画像検査を受け、聴覚に問題がある小児は 聴力検査 検査 米国では、人口の10%以上に日常のコミュニケーションに影響を及ぼすある程度の難聴があり、最も一般的な感覚障害となっています。発生率は年齢とともに上昇します。永続的な難聴がある18歳以下の小児は2%未満ですが( 小児の聴覚障害)、乳児期と幼児期の難聴は、言語と社会性の発達に支障をきたすことがあります。65歳以上では3分の1以上、75歳以上で... さらに読む を受けます。
予後(経過の見通し)
長期的な予後は、ムコ多糖症の種類によります。通常の寿命まで生きられる可能性もあります。一部のムコ多糖症(通常は心臓に影響を及ぼすタイプ)の患者は、若年で死亡することがあります。
治療
酵素補充療法
ときに骨髄移植または幹細胞移植
一部のムコ多糖症の治療では、酵素補充療法が生涯続けられますが、これは病気の悪化を防ぎ、一部の合併症を改善する可能性があります。
骨髄移植または 幹細胞移植 幹細胞移植 幹細胞は未分化の細胞で、分裂しながら、より分化した他の細胞に変わっていきます。幹細胞は以下のものから採取することができます。 生まれてすぐの新生児の臍帯血(母親が提供) 骨髄(骨髄移植) 血液 手技による体への負担が少なく、正常な血球数への回復が早いため、骨髄よりも血液からの採取が好まれます。通常、臍帯血からの幹細胞は小児のみに使用されます。これは、臍帯血には成人に使用できるほど十分な量の幹細胞が含まれていないためです。 さらに読む で効果がみられる人もいます。しかし、これらの処置は死亡や身体障害をもたらすことがあるため、このような治療については異論もあります。