
ホモシステインを代謝する酵素の欠損により、ホモシスチン尿症が起こります。
症状には、知的障害、眼の異常、骨格の異常などがあります。
診断は血液検査の結果に基づいて下されます。
食事療法やビタミンB6とベタインのサプリメントは、一部の小児に役立つ可能性があります。
ホモシスチン尿症の小児は、アミノ酸であるホモシステインの分解(代謝)ができず、このアミノ酸と有害な代謝産物が蓄積して様々な症状を引き起こします。ホモシスチン尿症の症状は、軽度から重度まで様々です。
( 遺伝性代謝疾患の概要 遺伝性代謝疾患の概要 遺伝性代謝疾患とは、代謝の問題を引き起こす遺伝性の病気です。 遺伝とは、ある世代から次の世代へ遺伝子が受け継がれることを意味します。子どもは親の遺伝子を受け継ぎます。子どもが、代謝制御に関わる欠陥のある遺伝子を受け継ぐと、遺伝性代謝疾患を発症します。 代謝疾患には数百種類のものがあり、そのほとんどは非常にまれなものです。... さらに読む も参照のこと。)
症状
この病気の乳児は出生時には正常です。しかし多くは3歳を過ぎると、まず、眼の水晶体の位置がずれるなどの症状が現れ、視力がひどく低下します。ほとんどの小児に 骨粗しょう症 骨粗しょう症 骨粗しょう症とは、骨密度の低下によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態です。 加齢、エストロゲンの不足、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、およびある種の病気によって、骨密度や骨の強度を維持する成分の量が減少することがあります。 骨粗しょう症による症状は、骨折が起こるまで現れないことがあります。... さらに読む などの骨格異常がみられます。そのため通常は、やせて背骨が曲がって胸郭が変形し、手足が長く、クモのような長い指をもつ、独特の体形になります。早期に診断して治療を始めなければ、多くの場合、精神障害や行動障害、 知的障害 知的能力障害 知的能力障害(一般に知的障害とも呼ばれます)とは、出生時や乳児期の初期から知能の働きが明らかに標準以下であり、正常な日常生活動作を行う能力が限られている状態です。 知的能力障害は、遺伝的な場合もあれば、脳の発達に影響を与える病気の結果として起こる場合もあります。 知的能力障害がある小児のほとんどでは、就学前まで目立った症状が現れません。 診断は正式な検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む が発生します。ホモシスチン尿症では、血液が自然に凝固しやすくなるため、 脳卒中 脳卒中の概要 脳卒中は、脳に向かう動脈が詰まったり破裂したりして、血流の途絶により脳組織の一部が壊死し(脳梗塞)、突然症状が現れる病気です。 脳卒中のほとんどは虚血性(通常は動脈の閉塞によるもの)ですが、出血性(動脈の破裂によるもの)もあります。 一過性脳虚血発作は虚血性脳卒中と似ていますが、虚血性脳卒中と異なり、恒久的な脳損傷が起こらず、症状は1時間... さらに読む や 高血圧 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなった状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む など多くの重篤な問題が起こります。
診断
新生児スクリーニング検査
2008年以降、米国のほぼすべての州は、血液検査によるホモシスチン尿症の 新生児スクリーニング 新生児スクリーニング検査 出生時に分からない重篤な病気の多くは、様々なスクリーニング検査により発見できます。新生児の健全な発達を妨げるような多くの病気を早期に診断し、迅速に治療を行うことで、症状を軽くしたり、予防したりすることができます。どこでも必ず行われる検査もあれば、特定の州だけが義務づけている検査もあります。スクリーニング検査の結果が陽性の場合、他の検査もしばしば追加されます。 典型的なスクリーニング検査には以下のものがあります。... さらに読む をすべての新生児に義務づけています。肝臓の酵素濃度を測定する検査や皮膚細胞に対する検査により、ホモシスチン尿症の診断が確定します。
治療
ビタミンB6と食事療法
ホモシスチン尿症の小児の中には、ビタミンB6( ピリドキシン ビタミンB6 ビタミンB6(ピリドキシン)は、炭水化物とアミノ酸、脂肪(脂質)の処理(代謝)のほか、正常な神経機能、赤血球の形成に必要不可欠です。皮膚を健康に保つのにも役立ちます。(ビタミンの概要も参照のこと。) 乾燥酵母、レバーなどの内臓肉、全粒粉シリアル、魚、豆類などには、ビタミンB6が豊富に含まれています。 ビタミンB6は多くの食品に含まれますが、長時間の調理によって失われることがあります。... さらに読む )やビタミンB12( コバラミン ビタミンB12 ビタミンB12(コバラミン)は葉酸とともに、赤血球の形成と成熟、および細胞の遺伝物質であるDNA(デオキシリボ核酸)の合成に必要です。ビタミンB12はまた、正常な神経機能にも必要です。 (ビタミンの概要も参照のこと。) 肉(特に牛肉、豚肉、レバーなどの内臓肉)、卵、栄養強化シリアル、牛乳、アサリ、カキ、サケ科の魚、ツナ(マグロなど)などには、ビタミンB12が豊富に含まれています。... さらに読む )を投与すると改善する場合があります。一部の小児は、タンパク質に含まれる特定の物質を制限する食事療法を行う必要があります。医師は、ホモシステインの血中濃度を下げるのに役立つ可能性があるベタインのサプリメントを処方することがあります。