
テイ-サックス病とサンドホフ病は、ガングリオシドを分解するのに必要な酵素が欠損しているために起こります。
症状には、知的障害や失明などがあります。
診断は出生前スクリーニング検査によって下されることがあります。
これらの病気の患児は、若年で死亡します。
治療法はなく、治癒することもありません。
遺伝性疾患 単一遺伝子疾患の遺伝 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む には様々な種類があります。テイ-サックス病とサンドホフ病では、患児の両親がともに異常な遺伝子のコピーをもっています。通常、病気の発生には異常な遺伝子のコピーが2つ必要であるため、普通はいずれの親にも疾患は現れていません。(遺伝性代謝疾患の概要 遺伝性代謝疾患の概要 遺伝性代謝疾患とは、代謝の問題を引き起こす遺伝性の病気です。 遺伝とは、ある世代から次の世代へ遺伝子が受け継がれることを意味します。子どもは親の遺伝子を受け継ぎます。子どもが、代謝制御に関わる欠陥のある 遺伝子を受け継ぐと、遺伝性代謝疾患を発症します。 遺伝性疾患には様々な種類があります。ほとんどの遺伝性代謝疾患では、患児の両親がともに異... さらに読む も参照のこと。)
スフィンゴリピドーシスは、スフィンゴ脂質を分解(代謝)するのに必要な酵素がないときに発生します。スフィンゴ脂質は、細胞表面を保護し、細胞内で特定の機能を果たす化合物です。スフィンゴリピドーシスには、他にも以下のように多くの種類があります。
テイ-サックス病とサンドホフ病では、ガングリオシドという脂肪の代謝産物が脳の組織に蓄積します。ガングリオシドが蓄積するのは、ガングリオシドを分解するのに必要なヘキソサミニダーゼAと呼ばれる酵素がうまく機能しないためです。
テイ-サックス病
この病気は東欧(アシュケナージ系)ユダヤ人の家系で最も多くみられます。
この病気の小児は、生後6カ月後には月齢相当の 発達段階 出生後から生後12カ月までの発達の目安* に到達できなくなり、徐々に知的障害が進行し(つまり、 知的障害 知的能力障害 知的能力障害(一般に知的障害とも呼ばれます)とは、出生時や乳児期の初期から知能の働きが明らかに標準を下回り、正常な日常生活動作を行う能力が限られている状態です。 知的能力障害は、遺伝的な場合もあれば、脳の発達に影響を与える病気の結果として起こる場合もあります。 知的能力障害がある小児のほとんどでは、就学前まで目立った症状が現れません。 診断は正式な検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む が生涯を通じて悪化し)、筋肉の張りがないように見えます。その後筋肉が硬く緊張し、それに続いて麻痺や認知症が起こり、失明します。患児は通常、5歳までに死亡します。
妊娠前に、親は、自分がこの病気を起こす遺伝子のキャリアかどうかを調べることができます。 キャリア キャリアスクリーニング 遺伝子スクリーニングは、遺伝する遺伝性疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いかどうかを判断するために行う検査です。遺伝する遺伝性疾患とは、次の世代へ受け継がれる 染色体または遺伝子の病気です。 スクリーニングではカップルの家族歴を評価し、必要に応じて血液や組織のサンプル(頬の内側から採取した細胞など)を分析します。 すべてのカップルが遺伝子スクリーニングを受けることができますが、特に推奨されるのは以下の場合です。... さらに読む とは、ある病気の原因となる異常遺伝子をもっているものの、その病気の症状が現れておらず、その病気を示す証拠が認められない人のことです。この遺伝子のキャリアは、この病気を子どもに遺伝させるリスクがあるため、遺伝カウンセリングを受けるべきです。両親ともにキャリアである場合に、子どもに病気が現れます。
妊娠中に 絨毛採取 絨毛採取 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む または 羊水穿刺 羊水穿刺 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む といった出生前スクリーニング検査を行うことで、胎児のうちにテイ-サックス病の有無を診断することができます。
出生後には、血液検査を行って、欠損している酵素であるヘキソサミニダーゼAの濃度を測定したり、 DNA DNA 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む を分析したりすることが可能です。
治療法はなく、治癒することもありません。
サンドホフ病
この病気はテイ-サックス病にとてもよく似ています。ただし、テイ-サックス病とは異なり、サンドホフ病は特定の民族とは関係ありません。
生後6カ月から知的障害が進行し、失明します。音が異常に大きく聞こえることもあります(聴覚過敏と呼ばれます)。肝臓の腫れや骨の異常もみられます。
サンドホフ病の診断はテイ-サックス病の診断と同じです。
治療法はなく、治癒することもありません。
さらなる情報
米国国立テイ-サックス病協会(National Tay-Sachs and Allied Diseases Association (NTSAD))
ユダヤ遺伝子疾患コンソーシアム(Jewish Genetic Disease Consortium)(JGDC)